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第2章 勘違いのはじまり
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講堂にざわめきが広がる中、俺は壇上に立っていた。
リリィが「兄様も何か一言を」と言い出したせいでだ。
妹よ、お前は敵か味方か。
視線を巡らせれば、最前列にフローラ。
蜂蜜色の髪が陽光を受けてきらきらしている。
(よし、ここで彼女の評価を上げれば、殿下ルートは封鎖できる!)
俺は軽く咳払いをして、堂々と口を開いた。
「諸君。努力とは、身分に関わらず称えられるべきものだ!」
(悪くない、いいテンションだ。社会人プレゼン魂、見せてやれ!)
「フローラ・エヴァンジェリン嬢のように、貴族でも庶民でも関係なく努力を積み重ねた者こそ、真に尊い!」
フローラが驚いたように目を瞬かせた。
頬が赤い。
うむ、これだ。応援+称賛=好感度アップ。
ゲームの基本。
「彼女は勇気ある女性だ。
身分の壁に怯まず、信念を曲げない。
そんな人を私は、心から――尊敬している!」
完璧な締め。拍手が起こる。
よし、これでフローラは俺に感謝、殿下は遠巻き観察。完璧な布陣。
――の、はずだった。
「……リステア。」
穏やかな声。
壇下から、王太子シリウスが立ち上がる。
ちょ、ちょっと待て、立つの!?
なぜ今!? なにかマズいこと言った!?
金の瞳がまっすぐ俺に向く。
逃げ場ゼロ。息が止まる。
「君は、優しい。」
え、ちょ、なにその言い方。
いやいやいや、俺、フローラの話してましたよ!?
俺に言ってます!? 違いますよね!?
「えっと……殿下? 私はただ、彼女の努力を――」
「君の言葉には誠実さがある。誰かを真っすぐ称えることができる人間は、そう多くない。」
(……完全に俺個人への評価じゃん!)
会場の空気が変わる。
なんだこのざわめき。恋愛イベントBGM流れてない!?
違う、違うってば!
フローラが戸惑いながら笑った。
「アラン様……とても素敵でした……!」
「ありがとう。でも、違う! 君に言ってたんだよ! 俺の話は君の話で、殿下の話じゃなくて!!」
頭の中が渋滞している俺を尻目に、
シリウスは穏やかに微笑んだ。
「……そうか。やはり君は面白いな。」
(でた、その笑顔! それもう、ゲームで見た“恋愛CG解放”の顔なんだって!!)
講堂の後方では、リリィが紅茶を片手に静かに微笑んでいた。
表情は完璧な貴族令嬢。だが、心の中では――
(兄様、殿下に見つめられている……。
角度も距離感も完璧……絵画みたいですわ。
尊い……構図が美しすぎますの……)
無意識の映像監督は、夢心地でカップを傾けた。
――こうして俺の“ヒロイン応援スピーチ”は、
なぜか“王太子攻略ルート開幕”の合図のようになってしまった。
リリィが「兄様も何か一言を」と言い出したせいでだ。
妹よ、お前は敵か味方か。
視線を巡らせれば、最前列にフローラ。
蜂蜜色の髪が陽光を受けてきらきらしている。
(よし、ここで彼女の評価を上げれば、殿下ルートは封鎖できる!)
俺は軽く咳払いをして、堂々と口を開いた。
「諸君。努力とは、身分に関わらず称えられるべきものだ!」
(悪くない、いいテンションだ。社会人プレゼン魂、見せてやれ!)
「フローラ・エヴァンジェリン嬢のように、貴族でも庶民でも関係なく努力を積み重ねた者こそ、真に尊い!」
フローラが驚いたように目を瞬かせた。
頬が赤い。
うむ、これだ。応援+称賛=好感度アップ。
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「彼女は勇気ある女性だ。
身分の壁に怯まず、信念を曲げない。
そんな人を私は、心から――尊敬している!」
完璧な締め。拍手が起こる。
よし、これでフローラは俺に感謝、殿下は遠巻き観察。完璧な布陣。
――の、はずだった。
「……リステア。」
穏やかな声。
壇下から、王太子シリウスが立ち上がる。
ちょ、ちょっと待て、立つの!?
なぜ今!? なにかマズいこと言った!?
金の瞳がまっすぐ俺に向く。
逃げ場ゼロ。息が止まる。
「君は、優しい。」
え、ちょ、なにその言い方。
いやいやいや、俺、フローラの話してましたよ!?
俺に言ってます!? 違いますよね!?
「えっと……殿下? 私はただ、彼女の努力を――」
「君の言葉には誠実さがある。誰かを真っすぐ称えることができる人間は、そう多くない。」
(……完全に俺個人への評価じゃん!)
会場の空気が変わる。
なんだこのざわめき。恋愛イベントBGM流れてない!?
違う、違うってば!
フローラが戸惑いながら笑った。
「アラン様……とても素敵でした……!」
「ありがとう。でも、違う! 君に言ってたんだよ! 俺の話は君の話で、殿下の話じゃなくて!!」
頭の中が渋滞している俺を尻目に、
シリウスは穏やかに微笑んだ。
「……そうか。やはり君は面白いな。」
(でた、その笑顔! それもう、ゲームで見た“恋愛CG解放”の顔なんだって!!)
講堂の後方では、リリィが紅茶を片手に静かに微笑んでいた。
表情は完璧な貴族令嬢。だが、心の中では――
(兄様、殿下に見つめられている……。
角度も距離感も完璧……絵画みたいですわ。
尊い……構図が美しすぎますの……)
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――こうして俺の“ヒロイン応援スピーチ”は、
なぜか“王太子攻略ルート開幕”の合図のようになってしまった。
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