妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊

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第16章 愛の告白再び

16-5

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扉の外、静寂の廊下。
雨音だけが遠くで響いていた。

リリィは壁にもたれ、そっと扇子を握る。
薄い扉の向こうから、兄の声と殿下の声がかすかに聞こえていた。
内容までは聞き取れない。
けれど、言葉にできない“何か”が伝わってくる。

沈黙のあと、衣擦れの音。
そして――抱きしめる気配。

リリィの息が止まった。
胸の奥が熱くなる。
それは羞恥でも驚きでもない。
どうしようもなく、美しいものを目撃してしまったような感覚。

扇子を開き、目元を隠す。
頬が紅潮しているのを、誰にも見られたくなかった。

「……最高ですわ。」

小さく呟いた声は、夜の雨に溶けた。
兄を見守るその瞳は、優しさと静かな決意に満ちていた。

(お兄様。あなたの恋が、どんな形であっても――私は味方ですわ。)

雨がやみ、廊下の灯が揺れる。
リリィは一度だけ深呼吸し、静かに背を伸ばした。

嵐の夜は、まだ終わらない。
けれどその影の中で、確かに“愛”が芽吹いていた。
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