毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第一章 転生

第一話 毒の魔物ポイズンキラー

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毒舌キャラで芸能界の階段を駆け上がった。
アイドル時代の私からは想像もつかないポジション。
ふわふわの衣装も、ぶりっこポーズも、嫌ではなかったが私のスタイルではなかった。

だが、バラエティ番組でちょっとキツめのツッコミを入れた瞬間、全てが変わった。
「毒舌アイドル誕生!」なんて煽られて、気づけばテレビに引っ張りだこ。
“可愛いだけ”が売りじゃない。私の武器は”言葉”だった。

でも、それが命取りになるなんて、誰が想像した?

疲れて家に帰ると玄関の前に立っていた男。
全く見覚えなんてない。
なのに彼は、私の名前を呼んだ。

「かすみちゃん……どうして……」

その声には歪んだ執着が滲んでいた。
やばい!、と直感が叫んだ時にはもう遅かった。
男が懐から取り出したのは、鈍く光るナイフ。
何が起きたのか理解するより早く、鋭い痛みが私の体を貫いた。

「──ッ!」

血が溢れ、視界が滲み、世界がスローモーションになる。
何度も、何度も刺され、膝が崩れた。
冷たい床に倒れ込む瞬間、唯一浮かんだのは──

(……まさか、こんな形で終わるなんて)

時田香澄、ここにて死す。
呆気なく私の人生は終わった。

次に意識を取り戻した時、私は…
手には鋭い爪。口元には牙。肌の色は毒のように濃い紫。
触って確認してみる。
紫色の化物になっていた。

「えっ、なにこれ、ちょ、どこ?どこここ!?」

パニックで動揺しながらも辺りを見回すと、そこはまるで洞窟の奥。
岩肌の壁、薄暗い空気、漂う腐臭──異世界…?
そして背後から、どこか威厳のある声が響いた。

「何が生まれてくるかと思えば…知性あるポイズンキラーとは面白い」

振り返ると、玉座に鎮座する漆黒の魔物。
長い黒髪に、漆黒のローブ。杖を構えた姿は、まるで王のような貫禄だった。

「だ、誰よあなた……!?」

圧倒的なオーラに背筋が凍る。身体に触れる闇の霧が、ビリビリと痛みを与える。

「ホッホッホ。我が名は不死の賢者リトラ。
言葉を話すポイズンキラーは初めてじゃ。
…なるほど、転生者か。元は人間だな?」

なんなのこのRPG的な会話!?
けど──死んだ私が、生きてる?
しかも魔物の姿で?

もう訳がわからない。
頭の中は真っ白でぐるぐる思考が回っている。
でも…こうなってしまったのなら、やるしかない
グダグダ考えても仕方ない、腹は座った。
「……ここは、どこ?」

混乱で頭が回らない。
いや、物理的にも回ってない。
それに、目線がやけに低い。子供サイズ?
幼児くらい?
まさか…私、縮んでる!?

そして、再び見た自分の手──鋭く尖った紫色の爪。
…やばい、めっちゃモンスターじゃん!?
改めて確認すると牙はあるし、肌も紫だし、もう完全に人外。
鏡なんか見たら、きっと絶叫する。

そんなパニックの最中、背後からまた声が響く。

「ふむ、やはり知性があるようだな」

振り返ると、あの黒い魔物──リトラと名乗った存在が、にやりと笑っていた。
その姿は威厳そのもの。

「……な、何者なのあなた!?
ていうか、ここどこ!?
私、刺されて……死んで……」

「うむ、それはつまり転生したということだ。ここはゼルネサクのダンジョン、最下層──このリトラ様の間よ」

最下層!?
やばい、異世界もののボスがいる場所じゃんそれ!
なんでそんなとこにいきなり転生されてんの私!?難易度設定間違ってない!?

「そなたはポイズンキラー。毒の力を宿した魔物じゃ。
なかなか面白い転生をしたのう」

「ちょっと待って、それって私の名前じゃないわよ!
ちゃんと名前は――と、とき、か、って……」

……言えなかった。喉まで出かかった名前が、するりと消えていく。
まるで、記憶から誰かに抜き取られたみたいに。

「ふふふ、既に名前は上書きされておる。
今のお前の名は……スルカ・サマリス!
ワシが命名してやったのじゃ!」

「ちょっ……勝手に名前つけないでよ!!
忘れたけど、あれは私の大事な名前だったんだから!」

「ふむ、魔物であるお前に人間の名など無意味よ。
今やそなたは魔物、我が庇護のもとで生きる者。
ならば名もワシが与えるが自然であろう」

いや納得できないけど!?
でも……本当に思い出せない……か、す、今やぼんやりと霞がかかってる。

「……もういいわ。過去は過去。今は、この状況をどう生き延びるかが先よね」

「そうじゃ、物分かりが良くて助かる。
では、まずステータスを確認してみよ。
掌を重ねて広げてみるのじゃ」

「え?こう?……わぁっ!?」

目の前の空間に、突如として浮かび上がったのは透明なスクリーン。
まるでゲームのステータス画面みたい!
しかもちゃんと日本語っぽい!



◆ ステータス表示

種族:ポイズンキラー
名持ち:スルカ・サマリス
性別:メス
年齢:0歳
レベル:1
体力:2000 魔力:1000
物理攻撃:20 魔法攻撃:12
物理防御:30 魔法防御:12
速度:50 運:40

スキル:毒牙/毒霧/毒舌/毒魔法 Lv.1/再生強化/斬撃耐性 Lv.1
称号:魔王の種子/毒舌の転生者/知性の欠片



「……毒舌の転生者!? ちょっとどういうこと!」

「ふむふむ、やはり“魔王の種子”を持っておるか! これは実に興味深い」

リトラが私のステータスを覗き込みながら、ニヤリと口角を上げる。

「魔王の種子……って、やばい響きなんですけど!?
悪役フラグ!?最終ボス化!?
やめてよね!?」

「ホッホッホ、心配するな。これは進化の可能性じゃよ。そなたは進化によって“魔王種”になれる素質があるということだ」

「進化……って、モンスターゲームか何か!?」

「聞け、スルカ・サマリス。
進化の系統はこうだ──まずはレベル50でポイズンデビル、その後分岐が生まれる」

そう言って、リトラは私の頭上に魔法の図を浮かべた。
そこには進化ルートらしきラインがズラリ。

「100で分岐じゃ。
一つは“ポイズンバースト”、もう一つが“イスラハル”。
イスラハルの系統を選べば、レベル300で“アルハラ”に、そして500で“アルハラクイーン”になる。そこが最終形態じゃ」

「は、はあ……」

「ポイズンバースト方面に進んだ場合は“ポイズンフレア”、そして“ポイズンフレアクイーン”になるが、そちらは魔王種にはなれん。
魔王になるにはアルハラクイーンが唯一の道じゃ」

進化図はまさにRPGのスキルツリーのよう。
だけど、レベル500って……それ、人生の後半戦じゃないの!?

「で?今の私はレベル1よね?
これ、外に出たら一瞬で死ぬやつじゃない?」

「その通り。だからこそ、ワシが少し手助けしてやろう。
今からお前が戦える相手を召喚する。
これで経験を積むが良い」

そう言うやいなや、リトラが地面に手を翳した。
魔法陣がギュインと広がり、闇の中から何かが浮かび上がってくる──!

現れたのは──トカゲのような、けれど明らかに化け物サイズの魔物!

「え、えええ!? 最初の相手がそれ!?」

「ふふふ、心配無用。お前は“魔王の種子”じゃ。
乗り越えられると、ワシは信じておるぞ」

いやいやいや、始まって早々バトル展開!?
ちょっと待って準備運動もしてない!
でも──やるしかない。死にたくないから!

──異世界転生1日目、モンスター化した元毒舌アイドルのサバイバルが、今ここに始まる!
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