毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第五章 闇の王国編 闇の住人達

第三十四話 充実した学園生活

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ティアは転入生として瞬く間に学園の人気者になっていた。
その美しさ、優しさ、公平な態度、そして礼儀正しさ。
さらには陽光を思わせる金色の髪が、女子達の憧れの的となり、なによりその可憐な笑顔は男子達の心を射抜いていた。

気づけば、彼女の周りには常に人の輪ができる。
男子達の熱い視線も、女子達の憧れの眼差しも――しかし当の本人は、そんなものに一切気を留めていなかった。
むしろ彼女が楽しんでいたのは、昼休みに女子達と弾むように交わす他愛ないお喋りだった。

(……転生して、こんな時間が持てるなんて思わなかった)

ティアはふと胸の奥で呟く。
前世、アイドルとして駆け抜けた日々。
華やかに見えて、実際は忙しさに追われ、女子高生としての普通の青春などほとんど味わえなかった。
だからこそ今――親友と呼べるメリルと肩を並べ、笑い合える時間は、何にも代えがたい宝物だった。
魔王としての自分を、思わず忘れてしまうほどに。

だが――その幸福な光景を、歯ぎしりしながら見つめている者がいた。

シャーロット。
かつては自分こそが憧れの的だった。
将来を約束され、羨望の眼差しを一身に浴び、誰もが自分の名前を口にした。
それが今ではどうだろう。
学園中がティア、ティアと騒ぎ立て、誰も自分を見ようとしない。

(……許せない……!)

心の奥を焦がす嫉妬が、日に日に膨れ上がっていく。

そんなある日の放課後。
シャーロットはメゼル、マーガレットと共に、行きつけのカフェにいた。
磨かれたグラスに紅茶が注がれ、甘い菓子が並ぶテーブルの上で、シャーロットは唇を噛みしめた。

「皆さん、私を蔑ろにして……誰も彼もティア!ティア!ティア!……本当に、不愉快ですわ。」

声を震わせるシャーロットに、メゼルは静かにカップを傾け、やがて意味深な笑みを浮かべる。

「――良い考えがございますわ。」

その一言に、シャーロットとマーガレットが同時に顔を上げる。

「なんですの?」
「ねえ、聞かせてよ!」

マーガレットが身を乗り出すと、メゼルはくすりと笑った。

「要は……ティアの人気を落とせば良いのでしょう?」

メゼルはティアが最も皆の信頼を失う方法として、誰かの大切な物を盗んだことにしょうと考える。
シャーロットもマーガレットもそれは面白そうねと賛同した。

その日の放課後、シャーロット達は学園に戻って、シャーロットが第二王子フィレンツから貰った髪飾りをティアの机の奥の方に忍ばせた。
「これで明日、ティアが登校して来たら、私が髪飾りが無いと騒ぎ盗まれたと騒ぎ立てる。」

「そうしましたら、私が皆さんの手荷物を調べる。」とメゼルが得意げに微笑む。

「そして、ティアの机からフィレンツ殿下から貰った大切な髪飾りが出てくる。
となれば、ティアの人気も、もしかしたらこのクラス、学園にも居られなくなる。」とマーガレットが続ける。

「ふふふ、楽しみですわ。」
と3人は勝ち誇ったかのように教室を後にした。

だが、ティアからシャーロットの監視を命じられていたリシェルとルシェルがその様子を見ていた。
「リシェルどうするのが良いかしら?」

「ルシェル。
主様を嵌めようなんてとんでもない間抜けですねあの女。」

「殺してしまいますか?」

「それは主様に聞いてからにしないと怒られそうよ。」

「でも、腹立たしいわ。」

と話し合い机の中の髪飾りを手にすると転移した。

「主様。」
リシェルとルシェルは部屋で休んでいたティアの元に現れた。

「ん?リシェルにルシェルどうしたの?」

「はい。
シャーロットを監視しておりましたら、あの女、分を弁えず主様を陥れようと自らフィレンツ殿下から頂いた大切らしい髪飾りを主様の机に忍ばせておりました。
話を聞いたのですが、明日自分の髪飾りが無くなったと騒ぎてて主様の机を調べて盗んだと騒ぐつもりの様です。」
と髪飾りをティアに渡した。

「ふーん、なるほどね。
ちょっと面白いわね。
ルシェル、リシェル良くやってくれました。
ありがとう。」

「は!その様な勿体無いお言葉感無量です。」

ティアは髪飾りを持ってある所に向かった。
男子寮だった。
男子寮には女子生徒は入れない。
入り口にいる管理人に声をかけた。

「あの、ティア・リブンと申します。」

「はい。
どうされましたか?」

「実は学校の中庭でこの髪飾りが落ちているのを拾ったのですが、誰のものかわからないのです。
ですが、髪飾りの裏側に王室の紋章があり、エルリン殿下かフィレンツ殿下にお伺いすれば持ち主がわかるかと思いましたので、来た次第です。」

「そうですか。
ちょっとお待ちください。
殿下方に聞いて参ります。」

しばらくするとエルリン殿下とフィレンツ殿下2人が現れた。
「おや、ティア嬢では無いですか。」

「ああ、シャーロットと同じクラスの。」

「殿下。
お時間を取らせまして申し訳ありません。
この髪飾りなのですが、中庭に落ちていまして、とても立派で素敵な物ですから、裏を見ると王家の紋章があったので無くされたからは大変お困りだと思います。
どなたのものかわかりますか?」

「髪飾り。」
エルリンに手渡した。

「フィレンツわかるか?」

エルリンはフィレンツに渡すと
「これはシャーロットにプレゼントした髪飾りだ。」

「そうでしたか。
よかったです。
シャーロット様も、今頃無くして慌ててらっしゃるかも知れません。
是非殿下から渡してあげてください。」

「ああ、すまない。
見つけてくれてありがとう。
シャーロットも慌てているだろう。
明日私から渡しておくよ。」

「良かった。
大切なものですもの。
シャーロット様もご安堵されるでしょう。
それではおやすみなさい。」
そう言うとティアは寮の自室に戻った。

翌日――。
いつも通り教室に入ったティアは、何事もないように席に着いた。
そして間もなく、シャーロットがわざとらしく声を上げる。

「大変! 
私の大切な髪飾りが無いわ!」

教室中がざわついた。
シャーロットは今にも泣き出しそうな顔で周囲を見渡し、机を叩く。

「フィレンツ殿下から頂いた大事な物なのに……誰かが盗んだのではなくて?」

「な、何ですって!?」
「そんな……誰が……」

クラスメイト達の間に緊張が走る。
その時、メゼルがすっと立ち上がった。

「念のため、皆さんの持ち物を確認させていただきますわ。
大切な王家の品ですから、見過ごすわけにはいきませんもの。」

ティアは静かにその様子を眺めていた。
心の中で(――来たわね)と呟きながら。

「まずは机の中から調べましょうか。」
メゼルがにやりと笑ってティアの席に近づいた瞬間。

「――その必要はない。」

教室の扉が開き、現れたのはフィレンツ王子だった。
その隣にはエルリン王子もいる。
二人の登場に、クラスは一気に静まり返った。

「皆、落ち着け。」
フィレンツは手に一つの小箱を掲げて見せた。

「昨日、この髪飾りを拾ってくれた者がいてな。
私に届けてくれたのだ。
間違いなく、シャーロットに贈った品だ。」

「えっ……!」
シャーロットの顔から血の気が引いた。

フィレンツは穏やかな笑みを浮かべる。
「シャーロット、落とし物には気を付けるといい。ティア嬢が拾ってくれなければ、二度と見つからなかったかもしれないぞ。」

「――ティア嬢が?」
ざわめく生徒たち。
一斉にティアへと視線が集まった。

ティアはにっこりと微笑み、首を傾げる。
「中庭に落ちていましたの。
とても素敵なお品でしたから、王家の紋章を見て殿下にお届けするのが一番だと思いましたの。」

「さすがティアさん……」
「なんて気が利くんだ……!」
「シャーロット様とは大違い……」

さっきまでシャーロットを心配していた声が、一斉にティアを讃える方向に変わっていった。

シャーロットの唇が震える。
「そ、そんな……」

その横でメゼルとマーガレットは顔を青くし、沈黙を貫くしかなかった。

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