毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第五章 闇の王国編 闇の住人達

第三十五話 魔王は生徒会に入る

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昼休み――。
シャーロットは怒りを抑えきれず、仲間のメゼルとマーガレットを詰め寄った。

「メゼルさん!どうしてくれますの!
大恥を、それも殿下の前で! 
お叱りまで受けてしまったのですわ!」

「シャ、シャーロット様……申し訳ありません。
まさかティアが、机に隠してある事を知っていたなんて……」

「そうですわ! 
おかしいですわ!」
シャーロットは両手を握り締め、瞳を血走らせる。

「まさか……メゼル! 
いえ、マーガレット! 
あなた達、私を裏切ったのではなくて? 
だからあの女に筒抜けだったのではなくて!?」

「そんな、私が裏切るわけありません!」
「わ、私だって……!」

だが、混乱したシャーロットは聞く耳を持たない。

「信用できませんわ! 
だってそうでしょう!? 
あの女がどうして机の中の事を知れますの!? ――あなた達が通じていたとしか考えられませんわ!」

メゼルとマーガレットは顔を青ざめさせ、言葉を失う。
シャーロットは怒りに任せて踵を返し、教室へと向かった。

そして、真っ直ぐティアの机に歩み寄り、烈火の如き眼差しを向ける。

「ティアさん! 
よくも私に恥をかかせてくれましたわね! 
殿下からお叱りまで受けてしまって……どう責任を取ってくださるのかしら!?」

ティアは静かな表情で振り返った。
その笑みには、敵意どころか余裕すら漂っている。

「責任……と言われましても。
私は拾った髪飾りをお渡ししただけですわ。」

「それが問題なのです! 
あなたが殿下に渡さず、私に返してくだされば……こんな恥をかかずに済みましたのに!」

「王家の紋章が入った品ですもの。
殿下にお伺いするのが当然かと思いましたわ。
殿下から『シャーロット様に返しておく』と仰せでしたので、お任せしたまでです。
……そこまで気が回りませんでしたわ。
すみませんね。」

その落ち着き払った口調に、教室の生徒たちは思わず息を呑んだ。
だがシャーロットは、激情に駆られて叫ぶ。

「抜け抜けと! 中庭なんかに落ちてなかったでしょう!机の中に…。」

は!
シャーロットは勢いに任せて行ってはならない事を口にしてしまった。

「え……?」
ティアが小首をかしげた瞬間、教室の空気が凍り付いた。

――自ら仕掛けを暴露した。

「い、今のは……」
「どう言う事、自分で認めた……?」
「なんてことを……」

クラス中から非難と軽蔑の視線がシャーロットに注がれた。
彼女の唇が震え、顔から血の気が引いていく。

やがてこの一件は殿下の耳にも入り、詰問の前にシャーロットは観念した。
全てを白状し、ティアを陥れようとしたと認めざるを得なかったのである。

――結果、シャーロットは退学処分となった。

シャーロットは、顔を真っ赤にしながらも何も言わず、静かに寮を去った。
その背中を見送る者は誰一人いない。
残されたメゼルとマーガレットには、後日、エルリン殿下より「謹慎処分」が言い渡されることとなった。

――そして放課後。

ティアは、生徒会室へ呼び出されていた。
扉を叩いて入ると、そこにはエルリン殿下とフィレンツ殿下が揃って待っていた。

「ティア嬢。」
先に口を開いたのはフィレンツ殿下だった。

「今回は……私のフィアンセが迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ない。
よく言い聞かせておくから、どうか許してやってほしい。」

そう言って、フィレンツ殿下は深々と頭を下げる。
その姿にティアは慌てて首を振った。

「そ、そんな……殿下、頭をお上げください! 
私は何も怒っていません。
それより――中庭に落ちていたなどと嘘をついてしまったこと……本当に申し訳ありません。」

ティアもまた頭を下げた。

「ふむ……」
静かに聞いていたエルリン殿下が、ふっと笑みを浮かべる。

「その件については、不問にしてもよい。
ただし、一つ条件がある。」

「……条件?」

「そうだ。
許す代わりに、ティア嬢には――生徒会に入ってもらう。
役職は会長秘書だ。
断れば……相応の処罰を下さざるを得ないが、どうだ?」

「……っ!」
ティアは言葉に詰まった。

「うぅ……殿下は意地悪ですね。
断れないことを分かっていて、そのようなことを仰るなんて。
貴族であり、時期国王と名高い殿下がこの様な取引きをされて良いものなのですか?」

「ははは、意地悪かもしれんな。」
エルリンは楽しげに笑い、じっとティアの瞳を見つめた。
だから、他の生徒会委員の者は居ないだろう。
ここだけの話で決めようと言うわけだよ。」

「……分かりました。
殿下のご提案をお受けいたします。」

やむなくそう答えたティアだったが、胸の奥では不満が渦巻いていた。
――しかし同時に考える。

(生徒会……潜り込むには、これ以上ない口実かもしれないわね。)

悔しさを飲み込みつつも、ティアは静かに笑みを浮かべた。

翌朝。

会長から「朝一番に生徒会室へ来るように」と言われた私は、教室に荷物を置くとすぐにその部屋へ向かった。
扉を軽く叩くと、中から声が響く。

「入ってくれ。」

私は静かに扉を開いた。
そこには――生徒会役員全員の姿があった。

「おはようございます。」
一礼して中へ入ると、視線が一斉にこちらへ向けられる。

窓際中央に腰掛けるのは、ザザルン王国第一王子エルリン殿下。
三年生にして、この学園の生徒会会長。

その左手前に座るのは、アーセナス公爵家の長男レゼント。
三年、副会長。

さらに隣に控えるのは、レントマール伯爵家の令嬢アーシェリー。
三年、書記。

副会長の向かいには、フィレン帝国より留学中のランスロット。
三年、会計。

その隣には、ホーデンス伯爵家の長男ワーグナス。
三年、規律委員長。

――いずれも名門揃い。学園の中枢と呼ぶに相応しい面々である。
彼らの中央で、会長エルリンが微笑んだ。

「よく来たね、ティア嬢。
皆に紹介しよう。
今日から会長秘書として生徒会に加わってもらうティア・リブン嬢だ。
一年生ながら、彼女は実に魅力的な才能を持っている。
仲良くしてやってくれ。」

だが、その紹介に拍手や歓声があがることはなかった。
冷ややかな沈黙の後、副会長レゼントが口を開く。

「会長。
秘書、ですか。
過去の記録を遡っても、そんな役職はなかったと記憶しておりますが――どういうことです?」

「ふむ、前から欲しいと思っていたんだよ。
秘書。」
エルリンは肩をすくめ、冗談めかして笑う。
「ティア嬢は可愛いし、秘書がよく似合うだろう?」

「……基準が意味不明ですが。
まあ、会長の決定なら従います。」
レゼントは小さくため息をついた。

「興味ないわねぇ。」
アーシェリーはちらりと私を見ただけで、再び視線を書類へ落とす。

私は困ったように手を挙げた。
「あの……殿下。
秘書とは具体的に何をすれば良いのでしょうか?」

「ん? 
ああ、それは私が必要に応じて指示を出すよ。
机も放課後までには用意させるから。」

エルリンは軽くそう言うと、私を下がらせた。

こうして――よく分からないまま、私は生徒会の「会長秘書」として迎え入れられることになったのだった。

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