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第五章 闇の王国編 闇の住人達
第三十九話 決着
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怒涛の刃が迫る。
五体のオメガに囲まれたロイスは、剣を握り直し必死に応じる。
斬撃を受け流し、かわし、あるいは受け止める。しかし――。
(……重い……! 速さも……力も……!)
鍛え抜いた剣技さえ弾かれ、息をつく暇すらない。
そして――ついに。
足に力が入らず、わずかによろめいた刹那。
ドガァッ!
一体のオメガの斬撃が直撃し、ロイスの身体は宙を舞って瓦礫の山へ叩きつけられた。
続けざまに五体が殺到し、瓦礫ごと叩き潰そうと剣を振り下ろす。
だが――。
「ん……? いない?」
メザウスが目を細めた。
ロイスの姿は、そこにはなかった。
少し離れた場所。
そこにティアが、静かにロイスを横たえていた。
「‼︎」
メザウスとゼフェルントの目が驚愕に見開かれる。
「ロイス。
……よく頑張ったわ」
ティアはしゃがみ込み、微笑んだ。
「テ、ティア……さん。
お、俺は……まだ……」
立ち上がろうとするロイス。
だが胸には深い斬撃が走り、血が止めどなく溢れ出す。
「……ふふ。まだまだね」
ティアは彼の肩に手を置き、柔らかく言った。
「少し休んでなさい。
――ここからはお姉さんの番」
その瞬間、背後から一体のオメガが迫り、巨大な剣を振り下ろした。
――バシィッ!
ティアは振り向きもせず、軽々と片手でその剣を摘み取る。
次の瞬間。
――バフゥゥッ!
彼女の掌から赤黒い業火が噴き上がり、オメガの巨体を瞬時に飲み込んで蒸発させた。
「なっ……!
ば、馬鹿な……!」
メザウスが後ずさる。
さらに残りの四体が一斉に襲いかかる。
だがティアの身体から迸った赤黒い業火が波のように広がり、接触した瞬間――四体まとめて蒸発し、灰すら残さなかった。
「な、な……なんだお前はぁ!」
メザウスの叫びは恐怖に震えている。
「……メザウス。
どういうことだ!」
ゼフェルント王は怒声を放ったが、その目もまた狼狽に揺れていた。
ティアは冷ややかに微笑み、声を張った。
「セリア、カイン、リシェル、ルシェル!」
「主様。
お呼びですか」
四人の影が現れ、彼女の前で跪いた。
「私はロイスを連れて帰ります。
――残りの後始末は、あなた達に任せますね」
そう言うとティアは再びしゃがみ、ロイスの身体にそっと手を添える。
次の瞬間――二人の姿は掻き消えるように霧散した。
ティアから授かった言葉が、胸の奥に強く刻まれていた。
『後始末は、あなた達に任せますね』
――主様が。
――俺たちに。
――後始末を。
――任せると。
「だって~!」
リシェルが弾けるように跳ね上がり、笑顔で声を張り上げる。
「いいですか」
セリアは仲間たちを見回し、凛とした声で告げた。
「これは主様の信頼の証です。
その期待を裏切ることは万死と心得なさい」
「いや、万が一にも俺たちが失敗なんてあるかよ!」
カインが拳を鳴らす。
「そうですわ」
「そうですとも」
リシェルとルシェルも即座に頷いた。
四人の瞳は、烈火のように輝いていた。
「な、何だお前達は!」
メザウスが怒りに震える。
だが次の瞬間、セリアは音もなく彼の背後へ移動していた。
「……雑魚が」
光速の剣撃。
無数の斬閃がメザウスを刻み、次の瞬間にはバラバラに吹き飛んでいた。
「おのれ!
貴様ら……許さんぞ!」
ゼフェルントが咆哮する。
その肉体が歪み、膨れ上がり、禍々しい角と鱗に覆われていく。
「ふはは……魔王ブリュンの姿になるのは久しぶりだな」
変貌を終えたゼフェルントは、魔獣のような威容を誇示した。
しかし、セリア達の表情は揺るがない。
「ああ……魔王ブリュン、という名には覚えがあります」
ルシェルが冷ややかに言葉を紡ぐ。
「資料室で読みました。七魔王との戦いに敗れ、逃げ延びた魔王がいると……。
人間界に潜んでいたとは」
「ふふふ……まあいい。
ティアとかいう女は、貴様らの後にじっくり痛ぶって殺してやろう。
……逃げなくていいのか? 相手は魔王ぞ」
「逃げる?」
カインが鼻で笑う。
「俺たちが逃げる必要なんざあるのか?」
「バカですね」
リシェルが指を差して笑った。
「……後悔しても知らんぞ!
わしは人間界で力を得て――」
言い終えるよりも早く。
カインの姿が掻き消えた。
「――無碍の仙撃ッ!」
光速の連撃がブリュンの腹部に叩き込まれる。
灼熱の業火を纏った無数の拳。
魔王の巨体は吹き飛ばされ、瓦礫をいくつも砕きながら転がり、やがて止まる。
紫色の血が噴き出し、腹には大穴が穿たれていた。
「あ……な、なに……」
「意外と丈夫だな」
カインが肩を回しながら言う。
「こ、こんな傷すぐ再生……」
「……できねえよ」
カインは得意げに笑う。
「俺の仙撃は、主様の加護を受けた炎だ。喰らった場所は再生できねえ」
「ちょっと!
なんでカインが最初に手を出すのよ!」
リシェルが詰め寄る。
「私が倒して、主様に褒めてもらうはずだったのに!」
「まあいいじゃねえか」
カインは拳を掲げてニヤリと笑った。
「では、トドメは私が」
セリアが一歩前に出る。
次の瞬間、光のような剣閃が魔王ブリュンを細切れにし、断末魔すら許さず消し去った。
瓦礫に静寂が落ちる。
――その時。
「おい! 何だ! 大丈夫か!」
セスが駆け込んでくる。
「遅い!」
四人は声を揃えて叫んだ。
ティアはロイスを転送して学園寮の部屋に降ろした。
胸の大きな斬撃痕からは、いまだ血が溢れていた。
ティアがそっと手を添えようとした瞬間――。
「ティアさん、大丈夫です。
傷は……自分で治します」
ロイスは苦しげに息を吐きながらも、ゆっくりと上体を起こし、胸に力を込めて流血を抑え込んだ。
「……大丈夫?
そのやり方」
ティアの視線が細められる。
「ロディアスでしょ?」
「そ、そうです」
ロイスは苦笑を浮かべる。
「師匠は、傷を回復魔法で消すなと教えてくれました」
「知ってる。
あの人、身体に二百二十五箇所も傷があるのよ」
「……ええ。
師匠は“傷は宝だ”と言っていました」
ティアは小さく首をかしげる。
「よく分からないわ。傷があったって、無くたって同じじゃない?」
「ま、まあ、そうなんでしょうけど……師匠曰く、傷は己の怠慢の証だそうです。
見るたびに鍛錬不足を思い知る――って」
「……あの人らしいわね」
ティアは小さく笑みを洩らした。
「で、もう大丈夫?」
「はい。
丈夫さなら、師匠にも負けませんよ」
「そう。
……これで、この国での任務は一段落ってところかしら?」
「殿下たちに報告して、国の再建にどう関わるかくらいですね」
「そこまで首を突っ込むの?」
「まあ、この際ですから」
ティアは小さく肩をすくめる。
「物好きね。
私はどうしようかな……もう少し、学園生活楽しんじゃおうかな」
「いいと思いますよ。
僕も、しばらくは滞在するつもりですし」
「メリルと出かける約束、沢山したから」
「……いいですね」
ロイスが素直に笑った。
――そして翌日。
ロイスはティアと共に、生徒会室を訪れるのだった。
五体のオメガに囲まれたロイスは、剣を握り直し必死に応じる。
斬撃を受け流し、かわし、あるいは受け止める。しかし――。
(……重い……! 速さも……力も……!)
鍛え抜いた剣技さえ弾かれ、息をつく暇すらない。
そして――ついに。
足に力が入らず、わずかによろめいた刹那。
ドガァッ!
一体のオメガの斬撃が直撃し、ロイスの身体は宙を舞って瓦礫の山へ叩きつけられた。
続けざまに五体が殺到し、瓦礫ごと叩き潰そうと剣を振り下ろす。
だが――。
「ん……? いない?」
メザウスが目を細めた。
ロイスの姿は、そこにはなかった。
少し離れた場所。
そこにティアが、静かにロイスを横たえていた。
「‼︎」
メザウスとゼフェルントの目が驚愕に見開かれる。
「ロイス。
……よく頑張ったわ」
ティアはしゃがみ込み、微笑んだ。
「テ、ティア……さん。
お、俺は……まだ……」
立ち上がろうとするロイス。
だが胸には深い斬撃が走り、血が止めどなく溢れ出す。
「……ふふ。まだまだね」
ティアは彼の肩に手を置き、柔らかく言った。
「少し休んでなさい。
――ここからはお姉さんの番」
その瞬間、背後から一体のオメガが迫り、巨大な剣を振り下ろした。
――バシィッ!
ティアは振り向きもせず、軽々と片手でその剣を摘み取る。
次の瞬間。
――バフゥゥッ!
彼女の掌から赤黒い業火が噴き上がり、オメガの巨体を瞬時に飲み込んで蒸発させた。
「なっ……!
ば、馬鹿な……!」
メザウスが後ずさる。
さらに残りの四体が一斉に襲いかかる。
だがティアの身体から迸った赤黒い業火が波のように広がり、接触した瞬間――四体まとめて蒸発し、灰すら残さなかった。
「な、な……なんだお前はぁ!」
メザウスの叫びは恐怖に震えている。
「……メザウス。
どういうことだ!」
ゼフェルント王は怒声を放ったが、その目もまた狼狽に揺れていた。
ティアは冷ややかに微笑み、声を張った。
「セリア、カイン、リシェル、ルシェル!」
「主様。
お呼びですか」
四人の影が現れ、彼女の前で跪いた。
「私はロイスを連れて帰ります。
――残りの後始末は、あなた達に任せますね」
そう言うとティアは再びしゃがみ、ロイスの身体にそっと手を添える。
次の瞬間――二人の姿は掻き消えるように霧散した。
ティアから授かった言葉が、胸の奥に強く刻まれていた。
『後始末は、あなた達に任せますね』
――主様が。
――俺たちに。
――後始末を。
――任せると。
「だって~!」
リシェルが弾けるように跳ね上がり、笑顔で声を張り上げる。
「いいですか」
セリアは仲間たちを見回し、凛とした声で告げた。
「これは主様の信頼の証です。
その期待を裏切ることは万死と心得なさい」
「いや、万が一にも俺たちが失敗なんてあるかよ!」
カインが拳を鳴らす。
「そうですわ」
「そうですとも」
リシェルとルシェルも即座に頷いた。
四人の瞳は、烈火のように輝いていた。
「な、何だお前達は!」
メザウスが怒りに震える。
だが次の瞬間、セリアは音もなく彼の背後へ移動していた。
「……雑魚が」
光速の剣撃。
無数の斬閃がメザウスを刻み、次の瞬間にはバラバラに吹き飛んでいた。
「おのれ!
貴様ら……許さんぞ!」
ゼフェルントが咆哮する。
その肉体が歪み、膨れ上がり、禍々しい角と鱗に覆われていく。
「ふはは……魔王ブリュンの姿になるのは久しぶりだな」
変貌を終えたゼフェルントは、魔獣のような威容を誇示した。
しかし、セリア達の表情は揺るがない。
「ああ……魔王ブリュン、という名には覚えがあります」
ルシェルが冷ややかに言葉を紡ぐ。
「資料室で読みました。七魔王との戦いに敗れ、逃げ延びた魔王がいると……。
人間界に潜んでいたとは」
「ふふふ……まあいい。
ティアとかいう女は、貴様らの後にじっくり痛ぶって殺してやろう。
……逃げなくていいのか? 相手は魔王ぞ」
「逃げる?」
カインが鼻で笑う。
「俺たちが逃げる必要なんざあるのか?」
「バカですね」
リシェルが指を差して笑った。
「……後悔しても知らんぞ!
わしは人間界で力を得て――」
言い終えるよりも早く。
カインの姿が掻き消えた。
「――無碍の仙撃ッ!」
光速の連撃がブリュンの腹部に叩き込まれる。
灼熱の業火を纏った無数の拳。
魔王の巨体は吹き飛ばされ、瓦礫をいくつも砕きながら転がり、やがて止まる。
紫色の血が噴き出し、腹には大穴が穿たれていた。
「あ……な、なに……」
「意外と丈夫だな」
カインが肩を回しながら言う。
「こ、こんな傷すぐ再生……」
「……できねえよ」
カインは得意げに笑う。
「俺の仙撃は、主様の加護を受けた炎だ。喰らった場所は再生できねえ」
「ちょっと!
なんでカインが最初に手を出すのよ!」
リシェルが詰め寄る。
「私が倒して、主様に褒めてもらうはずだったのに!」
「まあいいじゃねえか」
カインは拳を掲げてニヤリと笑った。
「では、トドメは私が」
セリアが一歩前に出る。
次の瞬間、光のような剣閃が魔王ブリュンを細切れにし、断末魔すら許さず消し去った。
瓦礫に静寂が落ちる。
――その時。
「おい! 何だ! 大丈夫か!」
セスが駆け込んでくる。
「遅い!」
四人は声を揃えて叫んだ。
ティアはロイスを転送して学園寮の部屋に降ろした。
胸の大きな斬撃痕からは、いまだ血が溢れていた。
ティアがそっと手を添えようとした瞬間――。
「ティアさん、大丈夫です。
傷は……自分で治します」
ロイスは苦しげに息を吐きながらも、ゆっくりと上体を起こし、胸に力を込めて流血を抑え込んだ。
「……大丈夫?
そのやり方」
ティアの視線が細められる。
「ロディアスでしょ?」
「そ、そうです」
ロイスは苦笑を浮かべる。
「師匠は、傷を回復魔法で消すなと教えてくれました」
「知ってる。
あの人、身体に二百二十五箇所も傷があるのよ」
「……ええ。
師匠は“傷は宝だ”と言っていました」
ティアは小さく首をかしげる。
「よく分からないわ。傷があったって、無くたって同じじゃない?」
「ま、まあ、そうなんでしょうけど……師匠曰く、傷は己の怠慢の証だそうです。
見るたびに鍛錬不足を思い知る――って」
「……あの人らしいわね」
ティアは小さく笑みを洩らした。
「で、もう大丈夫?」
「はい。
丈夫さなら、師匠にも負けませんよ」
「そう。
……これで、この国での任務は一段落ってところかしら?」
「殿下たちに報告して、国の再建にどう関わるかくらいですね」
「そこまで首を突っ込むの?」
「まあ、この際ですから」
ティアは小さく肩をすくめる。
「物好きね。
私はどうしようかな……もう少し、学園生活楽しんじゃおうかな」
「いいと思いますよ。
僕も、しばらくは滞在するつもりですし」
「メリルと出かける約束、沢山したから」
「……いいですね」
ロイスが素直に笑った。
――そして翌日。
ロイスはティアと共に、生徒会室を訪れるのだった。
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