毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

文字の大きさ
42 / 162
第六章 学園生活

第四十二話 祭りの後

しおりを挟む
ミスコン本選――会場中央には煌びやかな舞踏の舞台が設えられていた。
学園一の華やかな催しに、観客席は立ち見が出るほどの賑わいを見せている。

「カップル競技は社交ダンス!
審査は演技の美しさと完成度、それに観客の印象も含めて行われます!」
司会の声に、場内はどよめきと歓声に包まれた。

まず登場したのは、圧倒的存在感を誇る三年生ペア――セシリアとジークフリード。
彼らは一年生の頃から連続優勝を誇る絶対王者。
セシリアは華やかな赤のドレスを翻し、ジークフリードは鍛え抜かれた体を優雅に操り、二人の舞はまるで炎と剣が織りなす舞踏のようだった。

「さすがだな……」
観客の誰もが息を呑む。
完璧なリードとフォロー、隙のない演技――まさに王者の風格。

次々と各クラスのミスコンカップルの演技が行われていく。
誰も彼も良く練習して来たのだろうと思える演技だ。

続いて登場したのは、一年生ペア、ティアとブライトン。
緊張が漂う舞台の上、二人は互いに目を見つめ、そっと手を重ねる。

「大丈夫。
私を信じて。」
ティアの囁きに、ブライトンは深く頷いた。

音楽が流れ出す。
軽やかな旋律に合わせ、二人は滑るように舞台を踏み出した。
ティアの金髪が光を受けて流星のように揺れ、ブライトンの確かなリードがその全てを支える。

「すごい……」
観客から驚きの声が漏れる。

ティアの表情は優雅で、どこか楽しげで――その舞は観客の心を一瞬で掴んで離さなかった。
ブライトンの硬さも徐々に解け、最後のターンでは二人が一体となったかのような美しいラインを描き出した。

音楽が終わると同時に、場内は大きな拍手と歓声に包まれる。
「きゃああ!ティア様ーー!」
「ブライトンー!かっこいい!」
クラスメイト達の声援にも熱が入る。

そして全ての演技が終わると審査発表の時――。

「第一位は……一年一組、ティア・エルフェリア嬢と、ブライトン・クレスト君!!!」

会場が爆発するような歓声に包まれた。
「やったああああ!」
クラスメイトたちが立ち上がり、涙を流しながら喜び合う。

僅差での勝利だった。
セシリアとジークフリードの圧巻の舞を凌ぎ、観客を魅了した二人の輝きが勝利を手繰り寄せたのだ。

ステージ上でティアとブライトンは顔を見合わせ、思わず笑い合った。
「優勝だ……!」
「うん、一緒に勝ち取ったわね!」

さらに結果は続く。
クラス対抗の出し物勝負でもティアたちのメイド喫茶が一位を獲得。
そして――総合優勝。

「「「うおおおおおおおお!!!」」」
クラス全員が抱き合い、飛び跳ね、歓喜を爆発させる。

学園祭は、彼ら一年生にとって忘れられない栄光の一日となった。

学園祭の熱気がまだ残る夕刻。
クラスの生徒たちは学園内のフリースペースを借り切り、打ち上げを開いていた。
テーブルの上には、出し物で使った食材の余りを工夫した料理がずらりと並び、笑い声と歓声が途切れることなく響く。

「一年で総合優勝だなんて前代未聞だぞ!」
「ティアとブライトンのダンス、マジで鳥肌だった!」
「メイド姿のメリルも可愛かったぞ~!」

誰もが興奮冷めやらぬ様子で、盛り上がりは最高潮に達していた。

そんな中、ティアは少し人混みを抜け出し、廊下の窓辺で涼しい夜風に当たっていた。
月明かりが金髪を照らし、まるで光のベールを纏っているように見える。

「……ここにいたんだ。」
背後から声をかけてきたのは、ブライトンだった。
彼もまた少し顔を紅潮させ、きっと宴の勢いで飲んだ果実酒のせいだろう。

「お酒呑んだの?」

「ああ、学園で仕入れている果樹酒は品質も良くてとても飲みやすいんだ。
15歳になった時に、親から勧められて飲み出して好きになった。」

「そうなんだ。
私が知ってる国ではお酒は20歳になってからだよ。」

「へぇ~、遅いんだね。
この国では15歳になると解禁されるから国が違うと文化も違うんだな。」

「ブライトンって今何歳なの?」

「俺は20歳だよ。
ティアは?」

「私も20歳よ。
学園っていろいろな世代の人が学生してるじゃない。
まあ、普通に話してる分には違和感ないんだけど。
楽しいよね。
違った世代の価値観も垣間見れて。」

「ああ、ティアと同い年なのはちょっとうれしいけど。」

「そうなの?
メリルも20歳だよ。
彼女とは馬が合うって言うか、気を遣わなくて良いって言うか。
良い友達に巡り会えたわ。」

「そうだね。
それにしてもミスコンで三年生の先輩達のダンスも凄かったな。」

「そうね。
迫力あって負けちゃうかと思ったわ。」

ブライトンは窓辺に寄り、ティアの横に立つ。
夜空に浮かぶ月を見上げながら、静かに続けた。

「俺は踊りなんて全然自信なかった。
でも……ティアが僕を見て“信じて”って言ってくれた時、不思議と怖さが消えたんだ。」

「ふふ、私もよ。
ブライトンがリードしてくれたから、安心して楽しめた。」

二人は顔を見合わせ、照れくさそうに笑った。
その笑顔はどこかぎこちないけれど、心から嬉しそうで――。

「……ありがとう、ティア。」

「こちらこそ。
楽しかったわ。」

沈黙が落ちる。
宴のざわめきは遠く、月光の下では二人だけの世界。

ブライトンは言葉を探すように少し視線を泳がせた後、勇気を振り絞って口を開いた。
「これからも……一緒に、色んなことをやっていけたらいいな。」

ティアの胸が少し熱くなる。
それは淡い約束であり、未来への願い。
ティアは静かに頷き、微笑んだ。

「ええ、もちろんよ。」

その瞬間、遠くで誰かがティアを探す声がした。
二人は慌てて顔をそらし、照れ笑いを浮かべながら宴の喧騒へと戻っていった。

けれど、二人の間に生まれた小さな絆は――
これからの学園生活を、きっと今まで以上に鮮やかなものへと変えていくだろう。

優勝で勝ち取った「避暑地への切符」は、クラス全員の大切な宝物になった。
 夏休みの予定を立てるたびに、話題は自然とその避暑地のことで持ちきりになる。

 そんなある日、ティアは寮の廊下でメリルに声をかけた。

「ねぇ、メリル。
避暑地の準備、一緒にしない?」

「準備?」

「そうよ!
避暑地といえば……プールに海! 
つまり――水着よ!」

 瞳をきらきらと輝かせるティアに、メリルは苦笑しながらも頷いた。
「……うん。行こうか。」

 二人は街へ繰り出し、王都でも一際賑わうショッピングモールへ足を踏み入れる。
 専門店が軒を連ねる大きな建物は、人の活気で溢れ、まるで祭りのようだった。

「わぁ、見てメリル! 
あっちの店、水着がずらっと並んでる!」

「ちょ、ちょっとティア、そんなに引っ張らないで……!」

 ティアは嬉しそうに店を飛び回り、次々と商品を手に取っては試着室へ消えていく。
 やがて、派手な赤と黒のビキニ姿で現れると、恥じらいもなくポーズを決めた。

「どう? 似合ってるでしょ?」

「……うん、すごく似合ってる。
スタイルもいいし……私なんて全然……。」

 メリルは小さな声でつぶやき、目を伏せる。
 だがティアは笑顔で、水色のシンプルなビキニを手渡した。

「そんなこと言わないの。
ほら、これ着てみて?」

 メリルは少し渋りながらも、着替えて姿を見せる。
 透き通るような水色が彼女の白い肌に映え、恥ずかしそうに両手で胸元を押さえる姿は、誰が見ても可憐だった。

「……どうかな?」

「すっごく似合ってる! 
ほら、ほら、可愛いって!」

 ティアの言葉に、メリルの頬はぱっと赤く染まった。
 褒められた嬉しさと、ちょっとした照れくささが混じり合っている。

「じゃあ……これにしようかな。」

「決まりね!」

 二人は買い物を終えると、街角のカフェで甘いデザートを頬張りながら、必要な持ち物や遊びの計画を話し合った。
 笑い声が絶えないその光景は、まるで避暑地での楽しい夏の始まりを先取りしているようだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF
ファンタジー
死後に転生した魔界にて突然無敵の身体を与えられた地野改(ちの かい)。 その身体は物理的な攻撃に対して金属音がするほど硬く、マグマや高電圧、零度以下の寒さ、猛毒や強酸、腐食ガスにも耐え得る超高スペックの肉体。   その上で与えられたのはイメージ次第で命以外は何でも作り出せるという『創成魔法』という特異な能力。しかし、『イメージ次第で作り出せる』というのが落とし穴! それはイメージ出来なければ作れないのと同義! 生前職人や技師というわけでもなかった彼女には機械など生活を豊かにするものは作ることができない! 中々に持て余す能力だったが、周囲の協力を得つつその力を上手く使って魔界を住み心地良くしようと画策する。    近隣の村を拠点と定め、光の無かった世界に疑似太陽を作り、川を作り、生活基盤を整え、家を建て、魔道具による害獣対策や収穫方法を考案。 更には他国の手を借りて、水道を整備し、銀行・通貨制度を作り、発電施設を作り、村は町へと徐々に発展、ついには大国に国として認められることに!?   何でもできるけど何度も失敗する。 成り行きで居ついてしまったケルベロス、レッドドラゴン、クラーケン、歩く大根もどき、元・書物の自動人形らと共に送る失敗と試行錯誤だらけの魔界ライフ。 様々な物を創り出しては実験実験また実験。果たして住み心地は改善できるのか?   誤字脱字衍字の指摘、矛盾の指摘大歓迎です! 見つけたらご報告ください!   2024/05/02改題しました。旧タイトル 『魔界の天使 (?)アルトラの国造り奮闘譚』 2023/07/22改題しました。旧々タイトル 『天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭な肉体と便利スキル『創成魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~』 この作品は以下の投稿サイトにも掲載しています。  『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n4480hc/)』  『ノベルバ(https://novelba.com/indies/works/929419)』  『アルファポリス(https://www.alphapolis.co.jp/novel/64078938/329538044)』  『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093076594693131)』

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...