毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第十一章 覚醒編

第九十話 模擬戦闘でレベルアップ

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ロイスと話を交わしたその夜、ティアは静かに魔界へと戻っていた。
彼女が足を運んだのは、老魔導技師アダミルのもとだった。

「アダミル。
お願いしていたもの、進み具合はどうかしら?」

「おお、主よ! 
まあまあ形にはなったぞい。
ただしのう……こんな代物、いったい何に使うつもりじゃ?」

「決まっているわ。リリアのためよ。」

「ほう……お嬢のためとな?」

「ええ。
あの子はまだ未熟。
いずれ自分を守る術を必要とする。
そのために――このコロシアムを用意したの。」

そこは城の地下に広がる広大な闘技場。
改良を施された機械兵オメガが、模擬戦専用のマシンとして再設計されていた。

「悪魔王のデータは渡してあるわ。
オメガに組み込めた?」

「ふん、わしを誰だと思うとる? 
その程度、朝飯前じゃ!」

「そう。
それなら……まずは私で試すわ。
準備をして。」

「テストというわけか。
よかろう!」

ティアは闘技場へと降り立ち、軽く肩を回す。

スピーカーから研究員の声が響いた。
「ユスティティア様! 
オメガ悪魔王バージョンを展開します。
緊急停止機能も備えておりますので、ご安心ください!」

「わかったわ。
始めなさい。」

轟音と共に壁面が開き、悪魔王を模したオメガが姿を現した。

「さて……どれほど再現できているか、楽しみね。」

「ユスティティア様、行きます!」

瞬間、オメガが疾風のごとき速さで迫り、鋭い拳を振り下ろす。ティアは髪一筋乱さず、するりとかわした。
そこから矢継ぎ早に繰り出される猛攻。
しかし彼女はただ静かに観察しながら身を翻すのみだった。

「おおっ……!」
研究員たちは驚嘆の声を漏らす。

「悪くないわ。
スピードは十分ね。
次は――パワーを見せてもらおうかしら。」

ティアは足を止め、あえて拳を受けた。
だが片手であっさりと止める。

「ふむ、力は少し足りないわ。
もっと出力を上げられる?」

「は、はい! 
ただいま!」
研究員たちは慌ただしく調整を始める。

「ユスティティア様、出力を限界まで上げました!」

「ええ。」

ティアは距離を取り、再び拳を受け止めた。今度は彼女の手に確かな衝撃が伝わる。

「いいわね。
実際の悪魔王とほぼ同等の力……」

そう言うや、ティアは回し蹴りを一閃。
オメガは壁に叩きつけられ、沈黙した。

「仕上がりは悪くない。
でもまだ足りない。
スピードは今の1.5倍、パワーは2倍に再調整しなさい。」

「な、なんと……!」
研究員たちは蒼白になりながらも必死に頷く。
その様子を横で眺めていたアダミルが、苦笑混じりに言った。

「主よ、無茶をおっしゃる。
あのオメガですら無謀な注文だったのに、さらに倍とは……。
奴ら、すっかり慌てふためいとるぞい。」

ティアは淡々とした表情のまま、彼を見やる。
「無理なの?」

「……ふん、わしらにその言葉は禁句じゃ。
よかろう、主よ。
必ずや凄いものを見せてやるわ!」

ティアは小さく頷き、研究員たちに最終調整を任せて人間界へと帰還した。

数日後。
アダミルから「完成した」との連絡を受け、ティアはリリアを連れて魔界へ戻った。

彼女が案内したのは、城の地下に広がる闘技場――コロシアムだった。

「リリアちゃん。
いい物を作ったのよ。
きっとあなたの力になるはず。」

そう言って指を鳴らすと、壁面が開き、黒鉄の巨体――オメガ悪魔王バージョンが姿を現した。

「ま、ママ……もしかして、あれと戦うの?」
リリアは目を丸くする。

「そうよ。
あなたのレベルを引き上げるために、わざわざ作らせたの。」

「え~……あんなの、こわいよ……」

「大丈夫。
今日は私がすぐそばにいるわ。」
ティアはリリアの身体に多重の魔力障壁と物理障壁を張り巡らせた。
「これで万全よ。
どんな攻撃も弾き返せる。」

「……ありがとう、ママ。」
リリアは不安げに小さく頷いた。

「さあ、始めましょう。」
ティアは壁際へと下がり、視線で娘を励ます。

「準備はいい? 
始めて。」

「は、はい! 
ユスティティア様!」
研究員の声がスピーカーから響いた。
「オメガは標準の出力で起動します!」

オメガの赤い眼光が輝き、巨体が咆哮とともにリリアへと突進。
振り下ろされた拳を受け、リリアの身体は宙を舞った。

「きゃっ……! 
あ、あれ? 痛くない……」
障壁が攻撃を弾き、リリアは無傷で立ち上がる。

「リリアちゃん! 
オメガの動きをよく見るのよ!」
ティアが声を張った。

「は、はい!」
再びオメガが疾駆し、今度は鋭い蹴りを放つ。
「は、早いっ!」
リリアは反応できず、再び吹き飛ばされた。

「動きよ! 
見えなくても、見ようとするの! 
『必ず捉える』って強く思いなさい!」

「う、うぅ……む、難しい……!」

その後も数時間にわたり、リリアはオメガの猛攻を受け続け、一撃も返すことはできなかった。
ティアは手を上げて訓練を中断させる。

「リリアちゃん。
……ステータスを確認するわ。」
彼女の瞳が淡く光り、リリアの情報が展開される。

◆ ステータス表示 ◆

種族:神魔族
名持ち:リリア・イル
性別:女
年齢:……
レベル:1150
体力:1,579,856
魔力:1,785,692
物理攻撃:598,465
魔法攻撃:682,146
物理防御:352,698
魔法防御:438,092
速度:284,395
運:128,653

スキル:魔法 Lv.10/再生強化/斬撃耐性 Lv.5/魔法耐性 Lv.5
特性:飛行/早熟/熱無効/頑丈/魔力探知/魔眼
称号:創生の神魔/魔法少女

ティアは腕を組んで小さくため息をついた。
「……数値は申し分ないけれど、スキルが質素ね。
圧倒的に経験不足。
リリア、あなたにはもっと実戦――魔物との戦闘が必要だわ。」

リリアは唇を噛みしめ、こくりと頷いた。

ティアはリリアを伴って人間界に戻ると、固い決意を口にした。

「リリアちゃん。
――これから毎晩、ダンジョンに潜るわよ。
とにかく戦闘経験を積んで、スキルを磨く必要があるの。」

「……うん。ママがそう言うなら、リリアは頑張る。」
リリアの瞳にはまだ怯えの色が残っていたが、同時に強くなりたいという意志も宿っていた。

こうしてその夜から、ティアとリリアは各地のダンジョンに潜り、手当たり次第に戦闘を繰り返すことになる。

――翌日。

ティアは宿を訪ね、ロイスに声を掛けた。

「ロイス。修行の準備が整ったわ。
これから私と来てもらうけど、大丈夫かしら?」

「はい。
よろしくお願いします。」

返事を聞くと、ティアは迷わずロイスの肩に手を置き、転移魔法を発動させた。
瞬間、視界が揺らぎ――二人は魔界の地下、広大なコロシアムの闘技場に降り立った。

ロイスは周囲を見渡し、驚きに声を漏らす。
「ここは……一体どこなんですか?」

「そんなことはどうでもいいわ。」
ティアは微笑を浮かべながら壁際へと下がる。
「重要なのは、ここで修行するってこと。」

ロイスは頷いた。
「わかりました。
細かい詮索をするつもりはありません。」

ティアは軽く手を挙げて合図を送る。
「オメガをお願い。」

『はい。
それでは、オメガを起動します。』
研究員の声がスピーカーから響き渡った。

やがて闘技場の壁が開き、漆黒の巨体――オメガ悪魔王バージョンが姿を現した。

「……あれは、一体?」

「オメガ悪魔王バージョン。
この前の悪魔王と同等、もしくはそれ以上の戦闘力を持つように設計した機動兵器よ。」

赤い光がオメガの双眸に宿ると、轟音とともに巨体が突進。
一瞬でロイスに肉薄し、重い打撃を浴びせた。

「ぐっ――!」
ロイスは剣を抜き、反射的に受け止める。
しかし衝撃は凄まじく、弾き飛ばされて地面に叩きつけられた。

「こ、これは……凄い力ですね……」
呻きながらもロイスは立ち上がり、剣を構え直す。

ティアは静かに問いかけた。
「ロイス。
補助魔法が必要ならかけるけど、どうする?」

「……はい。お願いします。
流石にキツいです。」

「わかったわ。」
ティアは指を弾き、淡い光でロイスを包み込む。
衝撃耐性、物理耐性、魔法耐性――防御系の補助魔法を次々と付与していく。

「これで少しは丈夫になったはずよ。」

「ありがとうございます。
十分です。」

再びロイスは剣を握り締め、オメガに向かって歩み出した。
訓練という名の死闘が、今まさに始まろうとしていた。
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