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第十一章 覚醒編
第九十二話 ティアの忙しい日常
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ティアの一日は、まさに嵐のように慌ただしかった。
朝は学園に通い、真面目に授業を受ける。
放課後には生徒会の仕事に追われ、書類整理や生徒たちの相談に対応。
夕方にはロイスの訓練に付き添い、闘技場で死闘を繰り返す彼を指導。
そして夜――リリアを連れてダンジョンへ潜り、戦闘の経験を積ませる。
休む間もなく動き続ける日々。
肉体的な疲労をものともしないティアであっても、流石に精神的な疲労は少しずつ蓄積していた。
その夜も、ティアはリリアと共にダンジョンの奥へ足を踏み入れていた。
「リリアちゃん。
手当たり次第倒して、スキルを沢山奪い取るのよ!」
「うん!」
リリアは前に立ち、次々と現れる魔物へ挑んでいく。
火球を放ち、爪を避け、剣を振るう。
倒した魔物から新たなスキルを吸収していくたびに、彼女の戦い方は少しずつ洗練されていった。
ティアは後方から娘の姿を見守り、時折助言を投げかけるだけ。
「そう、そのタイミングで攻撃を重ねるのよ!」
戦闘経験――それこそが何よりも大切な糧。
リリアの動きは確実に成長を遂げていた。
そして翌日。
いつものようにティアは学園へ登校する。
外見上は変わらぬ完璧な笑顔を見せていたが、内心では僅かな疲労が心に影を落としていた。
その変化を敏感に察したのは――ティアの熱心なファンクラブの面々だった。
「ティア様が……お疲れのご様子だ!」
「よし、我らが癒して差し上げねば!」
ファンクラブ会員たちは一致団結し、ティアを元気づけるために密かに計画を練り始めるのだった。
ある日の放課後。
いつもなら生徒会室へ向かうティアを、数人の女生徒が呼び止めた。
「ティアさん。
本日は是非こちらへ!」
「え?」
引き留められたティアが連れて行かれた先は――校庭の一角。
そこには小さな舞台と色とりどりの装飾が施され、まるで即席のフェスティバル会場のようになっていた。
「これは……?」
驚くティアの目の前で、ファンクラブ会員たちが一斉に声を合わせる。
「ティアさん。
お疲れ癒し大作戦です!」
ティアファンクラブのメンバー総出で準備したイベントだった。
華やかな花のアーチ、香りの良いハーブティーの用意、手作りのお菓子の屋台。
さらには演劇部が即席で用意した「ティア様の武勇伝ショート劇」まで披露され、会場は大盛り上がり。
「ふふ……これはまた、随分と大掛かりね。」
ティアは思わず頬を緩める。
「最近、ティアさんがお疲れのように見えたんです!」
「ですから、癒しと笑顔をお届けしようと!」
「どうか、少しでもお楽しみください!」
次々と差し出されるお菓子やお茶。
生徒たちの温かい気持ちが会場全体を包み込んでいた。
「……ありがとう。
皆んな、本当に良い子たちね。」
ティアは微笑みながら、丁寧に一つ一つ受け取り、感謝を伝えた。
普段は圧倒的な力を誇る存在。
けれど、今この瞬間だけは「みんなに愛される憧れの推し。」として囲まれていた。
ティアの心に積もっていた疲労は、いつの間にか少しずつ溶けていったのだった。
ある日の放課後、ティアは久々に生徒会の仕事もなく、メリルと二人で「ミュウオケ」に行くことにしていた。
「ねえねえ、ほんと久しぶりじゃない?
二人きりで放課後遊ぶなんて。」
「うん。
ティアも生徒会で忙しいからね。
今日は楽しみ。」
校門を出たところで、不意にアーサーが姿を現す。
「二人でどこかに行くのか?」
「そうよ。
久しぶりにメリルと二人きりでミュウオケ行くの。」
ティアは嬉しそうに笑う。
「そうか……。
なら、俺も行きたい!」
アーサーは少し照れくさそうに言った。
「はぁ?
ダメに決まってるでしょ。
二人きりって言ったばかりでしょ!」
「いいじゃないか。
二人も三人も大して変わらないだろ。」
「嫌よ!
また今度ね。」
「また今度って……ティアは忙しいだろ。
次がいつになるかわからないじゃないか。」
「じゃあ他の男子と行けば?
それとも……私と行きたいの?」
「な、なに言い出すんだ!
他の奴と行ってもつまらないだろ。」
アーサーは顔を赤らめ、言葉を詰まらせる。
「ティア。
アーサーも一緒でいいよ?」
メリルが口を挟むと、ティアは肩を落とした。
「ほら、結局メリルが気を遣っちゃったじゃない……。」
結局三人でミュウオケに向かい、交代で歌を歌いながら盛り上がった。
途中、メリルが席を立つ。
「ティア、ちょっとお手洗い行ってくるね。」
「うん、わかった。」
部屋に二人きりになった瞬間、アーサーが真剣な表情を向けてくる。
「ティア……話がある。」
「ん? 何?」
「突然だけど……ティア。
俺はお前のことが好きだ。
付き合ってほしい。」
照れながらも、真っ直ぐな目で告げるアーサー。
「ちょっと……やめてよ。
私は今はそんな気持ちになれないわ。
……でも、好きって言ってくれるのは嬉しいけどね。」
ティアも思わず赤面する。
「俺とティアなら分かり合えると思う。
周りはいつも離れていくけど……俺たちは同じ時間を生きられる。
ずっと側にいられるんだ。」
「……わかってるわ。
………でも少し考えさせて。
それでいい?」
「……ああ、待ってる。」
その時、タイミング良くメリルが戻ってきた。
「もしかして……告白してた?」
「ちょっ、メリル!
やっぱり可笑しいと思ったのよ!
2人きりで遊ぼうって言ったのに、すんなりアーサーもって。
裏切り者!」
ティアが声を荒げると、メリルはケロリと笑う。
「だって、アーサーから頼まれたんだもん。
ティアと二人きりの時間を作りたいって。」
「ぐっ……!」アーサーは気まずそうに顔を伏せる。
「でも、アーサーはいい人だと思うよ。
ティア、付き合ってみたら?」
「なにそれ……そんなに推すなんて、まさか賄賂でももらったんじゃないでしょうね!」
「違うって!
……実はね、私、彼氏できたの。」
「えぇぇっ!?」
ティアもアーサーも同時に叫ぶ。
「それ、本当!?」
「うん。」
「だ、誰よ! 同じクラスの男子?」
「そう。」
「メリル……いつの間に……。」
「ふふ、詳しくはまた話すね。
それより今はティアでしょ。
ちゃんとアーサーに返事してあげなよ。」
「わかってるわよ。
……ちゃんと考えるから。」
その後も三人は歌い続け、気まずさと笑いが入り混じったまま、楽しい二時間を過ごしたのだった。
ミュウオケの後、ティアはメリルと並んで帰っていた。
アーサーはティアに促され、先に学園へ戻っている。
ティアは歩きながら、どうしても気になることを口にした。
「ちょっとメリル。
彼氏ができたなら、私に一番に報告してよ。」
「ごめん、ごめん。
……まあ、昨日返事したばかりでさ。
本当は今日、二人きりになった時に話そうと思ってたんだけど……アーサーが『ティアに告白したい』って言い出すから、こんなタイミングになっちゃったの。」
「まあ、アーサーの事は良いから……メリルの彼氏の話を聞かせなさいよ。」
「ひどいなぁ~。それ聞いたらアーサー、泣いちゃうよ?」
「大丈夫。
アーサーは強い子だから、そんなことでへこたれないわよ。」
「……じゃあ話すね。
でもちょっと言いづらいんだけど。」
メリルは少しだけ声を落とす。
「相手は……ブライトンよ。」
「え?……ちょっと待って。
私に告白してきた、あのブライトン?」
「そう、そのブライトン。
……実はね、夏休み明けくらいからブライトンがティアのことで相談してきて。
放課後に何度かカフェで話したり、ミュウオケで会ったりしてるうちに……私の方が好きになっちゃったの。
一度は振られたんだけど、昨日改めて『付き合おう』って言ってくれて。
……私が勇気を出して告白してくれたのが嬉しかったって。
そこから意識するようになったんだって。」
「そうなんだ。
……良かったじゃない。
応援するわ!
ふふ、これでブライトンをからかうネタが手に入ったわね。」
ティアは不敵な笑みを浮かべる。
「もうっ、ティア!ダメだからね!」
「冗談よ。
でも……ほんとお似合いだと思う。
親友として嬉しいわ。」
「ありがとう。
……それでね、アーサーが私に相談した時に思ったの。
ティアにも、寄り添ってくれる人がいたらいいなって。
アーサーは真剣だったし、いい人だと思うんだ。」
「……そうね。
ありがと、メリル。
私のことまで心配してくれてたのね。
嬉しい。」
「当たり前じゃない。
だって親友でしょ?」
「うん、そうだね。」
二人の間に、あたたかい空気が流れる。
そしてティアが、ふと口を開いた。
「それで……キスはしたの?」
「ちょっ!ティアったら、急に何よ!」
「ふふ、したんだ?」
「……したけどっ!それが何か!?」
顔を真っ赤にしたメリルは早歩きで先へ進む。
ティアは思わず笑いながら、その背中を追いかけた。
二人は笑い合いながら、仲良く寮へと戻っていった。
朝は学園に通い、真面目に授業を受ける。
放課後には生徒会の仕事に追われ、書類整理や生徒たちの相談に対応。
夕方にはロイスの訓練に付き添い、闘技場で死闘を繰り返す彼を指導。
そして夜――リリアを連れてダンジョンへ潜り、戦闘の経験を積ませる。
休む間もなく動き続ける日々。
肉体的な疲労をものともしないティアであっても、流石に精神的な疲労は少しずつ蓄積していた。
その夜も、ティアはリリアと共にダンジョンの奥へ足を踏み入れていた。
「リリアちゃん。
手当たり次第倒して、スキルを沢山奪い取るのよ!」
「うん!」
リリアは前に立ち、次々と現れる魔物へ挑んでいく。
火球を放ち、爪を避け、剣を振るう。
倒した魔物から新たなスキルを吸収していくたびに、彼女の戦い方は少しずつ洗練されていった。
ティアは後方から娘の姿を見守り、時折助言を投げかけるだけ。
「そう、そのタイミングで攻撃を重ねるのよ!」
戦闘経験――それこそが何よりも大切な糧。
リリアの動きは確実に成長を遂げていた。
そして翌日。
いつものようにティアは学園へ登校する。
外見上は変わらぬ完璧な笑顔を見せていたが、内心では僅かな疲労が心に影を落としていた。
その変化を敏感に察したのは――ティアの熱心なファンクラブの面々だった。
「ティア様が……お疲れのご様子だ!」
「よし、我らが癒して差し上げねば!」
ファンクラブ会員たちは一致団結し、ティアを元気づけるために密かに計画を練り始めるのだった。
ある日の放課後。
いつもなら生徒会室へ向かうティアを、数人の女生徒が呼び止めた。
「ティアさん。
本日は是非こちらへ!」
「え?」
引き留められたティアが連れて行かれた先は――校庭の一角。
そこには小さな舞台と色とりどりの装飾が施され、まるで即席のフェスティバル会場のようになっていた。
「これは……?」
驚くティアの目の前で、ファンクラブ会員たちが一斉に声を合わせる。
「ティアさん。
お疲れ癒し大作戦です!」
ティアファンクラブのメンバー総出で準備したイベントだった。
華やかな花のアーチ、香りの良いハーブティーの用意、手作りのお菓子の屋台。
さらには演劇部が即席で用意した「ティア様の武勇伝ショート劇」まで披露され、会場は大盛り上がり。
「ふふ……これはまた、随分と大掛かりね。」
ティアは思わず頬を緩める。
「最近、ティアさんがお疲れのように見えたんです!」
「ですから、癒しと笑顔をお届けしようと!」
「どうか、少しでもお楽しみください!」
次々と差し出されるお菓子やお茶。
生徒たちの温かい気持ちが会場全体を包み込んでいた。
「……ありがとう。
皆んな、本当に良い子たちね。」
ティアは微笑みながら、丁寧に一つ一つ受け取り、感謝を伝えた。
普段は圧倒的な力を誇る存在。
けれど、今この瞬間だけは「みんなに愛される憧れの推し。」として囲まれていた。
ティアの心に積もっていた疲労は、いつの間にか少しずつ溶けていったのだった。
ある日の放課後、ティアは久々に生徒会の仕事もなく、メリルと二人で「ミュウオケ」に行くことにしていた。
「ねえねえ、ほんと久しぶりじゃない?
二人きりで放課後遊ぶなんて。」
「うん。
ティアも生徒会で忙しいからね。
今日は楽しみ。」
校門を出たところで、不意にアーサーが姿を現す。
「二人でどこかに行くのか?」
「そうよ。
久しぶりにメリルと二人きりでミュウオケ行くの。」
ティアは嬉しそうに笑う。
「そうか……。
なら、俺も行きたい!」
アーサーは少し照れくさそうに言った。
「はぁ?
ダメに決まってるでしょ。
二人きりって言ったばかりでしょ!」
「いいじゃないか。
二人も三人も大して変わらないだろ。」
「嫌よ!
また今度ね。」
「また今度って……ティアは忙しいだろ。
次がいつになるかわからないじゃないか。」
「じゃあ他の男子と行けば?
それとも……私と行きたいの?」
「な、なに言い出すんだ!
他の奴と行ってもつまらないだろ。」
アーサーは顔を赤らめ、言葉を詰まらせる。
「ティア。
アーサーも一緒でいいよ?」
メリルが口を挟むと、ティアは肩を落とした。
「ほら、結局メリルが気を遣っちゃったじゃない……。」
結局三人でミュウオケに向かい、交代で歌を歌いながら盛り上がった。
途中、メリルが席を立つ。
「ティア、ちょっとお手洗い行ってくるね。」
「うん、わかった。」
部屋に二人きりになった瞬間、アーサーが真剣な表情を向けてくる。
「ティア……話がある。」
「ん? 何?」
「突然だけど……ティア。
俺はお前のことが好きだ。
付き合ってほしい。」
照れながらも、真っ直ぐな目で告げるアーサー。
「ちょっと……やめてよ。
私は今はそんな気持ちになれないわ。
……でも、好きって言ってくれるのは嬉しいけどね。」
ティアも思わず赤面する。
「俺とティアなら分かり合えると思う。
周りはいつも離れていくけど……俺たちは同じ時間を生きられる。
ずっと側にいられるんだ。」
「……わかってるわ。
………でも少し考えさせて。
それでいい?」
「……ああ、待ってる。」
その時、タイミング良くメリルが戻ってきた。
「もしかして……告白してた?」
「ちょっ、メリル!
やっぱり可笑しいと思ったのよ!
2人きりで遊ぼうって言ったのに、すんなりアーサーもって。
裏切り者!」
ティアが声を荒げると、メリルはケロリと笑う。
「だって、アーサーから頼まれたんだもん。
ティアと二人きりの時間を作りたいって。」
「ぐっ……!」アーサーは気まずそうに顔を伏せる。
「でも、アーサーはいい人だと思うよ。
ティア、付き合ってみたら?」
「なにそれ……そんなに推すなんて、まさか賄賂でももらったんじゃないでしょうね!」
「違うって!
……実はね、私、彼氏できたの。」
「えぇぇっ!?」
ティアもアーサーも同時に叫ぶ。
「それ、本当!?」
「うん。」
「だ、誰よ! 同じクラスの男子?」
「そう。」
「メリル……いつの間に……。」
「ふふ、詳しくはまた話すね。
それより今はティアでしょ。
ちゃんとアーサーに返事してあげなよ。」
「わかってるわよ。
……ちゃんと考えるから。」
その後も三人は歌い続け、気まずさと笑いが入り混じったまま、楽しい二時間を過ごしたのだった。
ミュウオケの後、ティアはメリルと並んで帰っていた。
アーサーはティアに促され、先に学園へ戻っている。
ティアは歩きながら、どうしても気になることを口にした。
「ちょっとメリル。
彼氏ができたなら、私に一番に報告してよ。」
「ごめん、ごめん。
……まあ、昨日返事したばかりでさ。
本当は今日、二人きりになった時に話そうと思ってたんだけど……アーサーが『ティアに告白したい』って言い出すから、こんなタイミングになっちゃったの。」
「まあ、アーサーの事は良いから……メリルの彼氏の話を聞かせなさいよ。」
「ひどいなぁ~。それ聞いたらアーサー、泣いちゃうよ?」
「大丈夫。
アーサーは強い子だから、そんなことでへこたれないわよ。」
「……じゃあ話すね。
でもちょっと言いづらいんだけど。」
メリルは少しだけ声を落とす。
「相手は……ブライトンよ。」
「え?……ちょっと待って。
私に告白してきた、あのブライトン?」
「そう、そのブライトン。
……実はね、夏休み明けくらいからブライトンがティアのことで相談してきて。
放課後に何度かカフェで話したり、ミュウオケで会ったりしてるうちに……私の方が好きになっちゃったの。
一度は振られたんだけど、昨日改めて『付き合おう』って言ってくれて。
……私が勇気を出して告白してくれたのが嬉しかったって。
そこから意識するようになったんだって。」
「そうなんだ。
……良かったじゃない。
応援するわ!
ふふ、これでブライトンをからかうネタが手に入ったわね。」
ティアは不敵な笑みを浮かべる。
「もうっ、ティア!ダメだからね!」
「冗談よ。
でも……ほんとお似合いだと思う。
親友として嬉しいわ。」
「ありがとう。
……それでね、アーサーが私に相談した時に思ったの。
ティアにも、寄り添ってくれる人がいたらいいなって。
アーサーは真剣だったし、いい人だと思うんだ。」
「……そうね。
ありがと、メリル。
私のことまで心配してくれてたのね。
嬉しい。」
「当たり前じゃない。
だって親友でしょ?」
「うん、そうだね。」
二人の間に、あたたかい空気が流れる。
そしてティアが、ふと口を開いた。
「それで……キスはしたの?」
「ちょっ!ティアったら、急に何よ!」
「ふふ、したんだ?」
「……したけどっ!それが何か!?」
顔を真っ赤にしたメリルは早歩きで先へ進む。
ティアは思わず笑いながら、その背中を追いかけた。
二人は笑い合いながら、仲良く寮へと戻っていった。
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