毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第十三章 青春の1ページ

第百十話 学園祭最終日

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朝から校内はまるでお祭り騒ぎ。
メイド喫茶の前には、すでに長蛇の列ができていた。

「いらっしゃいませ、ご主人様♡」
「お嬢様もどうぞこちらへ♡」

――そして、ティアはというと。

「ごめん! 
ミスコンの準備しないと! 
あとは任せた!」
エプロンを外しながら、教室の裏口へと駆け出していた。

「ティア行ってらっしゃい! 
優勝してこいよー!」
「優勝したら追加ケーキ奢りねー!」
仲間の声援を背に、ティアは笑顔で手を振った。


ミスコン控え室

制服に着替えたティアは鏡の前で深呼吸。
「よし……落ち着け、落ち着け。笑顔、笑顔……」

今回のミスコンは制服姿のままの参加。
ドレスも装飾もなし――だからこそ、素の魅力が問われる。

会場の外は、ざわざわとした人の気配。
観客席には、なんと外部の見物客や、噂では芸能関係者まで来ているという。

(ま、まさかスカウトとか……ないよね!?)
ティアは心臓を押さえながら苦笑した。


自己PRタイム

各クラスの美少女たちが次々にステージに登場する。
「○○組の△△です!よろしくお願いします!」
歓声と拍手が飛び交う。

そして、ティアの番。

ライトが彼女を照らすと、会場の空気が一瞬ふわりと変わった。
彼女はマイクを握り、穏やかな笑顔でスピーチを始めた。

「2年一組のティアです。
えっと……皆さん、今日はありがとうございます。
 私は“誰かを笑顔にできる人”になりたくて、
 こうして舞台に立っています。」

その言葉に、観客席から温かな拍手が沸き起こった。


歌の審査

「ティア! 緊張してる?」
舞台裏からアーサーがひょっこり顔を出した。

「う、うん。
来てくれてありがとう。
ちょっと落ち着いたかも。」

「楽しんできて。
君の歌なら、絶対に大丈夫。」

「……うん。」

ティアは微笑み返し、ステージへと歩き出した。


マイクを握った瞬間、空気が静まり返る。
ピアノの前奏が流れ、ティアが唇を開いた。

澄みきった歌声が会場を包み、
まるで光そのものが音になったかのように響き渡った。

それは――ミュウオケ通いの賜物。
そして、彼女がひっそり習得していたスキル
『歌姫(ディーヴァ)』。

その歌には、人の心を穏やかにし、幸せにする力があった。

「なに……この感じ……」
「すごい……涙が出そう……」
「プロ……?いや、プロより上手い……」

歌い終わると同時に、
会場は爆発するような大歓声に包まれた。


結果発表

「――優勝は……2年一組のティアさんです!」

「えっ……えっ!? 
私!?」
名前を呼ばれた瞬間、ティアは目を丸くした。

「やったーっ!!!」
思わず跳ね上がり、マイクを落としそうになる。

観客席からは割れんばかりの拍手と歓声。
アーサーもステージ袖で満面の笑みを浮かべていた。

ティアはトロフィーを胸に抱きながら、
少し照れたように笑った。

(みんな……ありがとう。
 私、本当に楽しかった……!)

その笑顔は、歌声と同じくらい眩しく、
会場に集まった誰もが――心から幸せな気持ちになっていた。


講堂は満員の生徒たちで埋め尽くされていた。
色とりどりのクラス旗が揺れ、ステージ上には豪華なトロフィーと賞状。
――ついに、文化祭の総合結果発表の時がやってきた。

司会の生徒がマイクを握ると、会場のざわめきが一気に静まる。

「さて、皆様お待ちかねっ!
 クラス対抗・出店売り上げ部門の第一位は――!」

一瞬の間。
全校の視線がステージに集中する。

「――二年一組!!」

「うぉおおおおおおおっ!!!」

歓声が爆発した。
クラッカーが弾け、紙吹雪が舞う。
ティアたち2年一組のメンバーは思わず抱き合い、涙を流す者までいた。

「やったぁ! メイド喫茶最強!」
「ティアのおかげだーっ!!」
「やっぱり看板娘パワーは伊達じゃない!」

ティアは顔を真っ赤にして手を振った。
「ちょ、ちょっと!
みんなやめてよぉ~!」


司会が続けて声を張る。
「それでは総合結果を発表します!
 今年の文化祭、総合優勝は――二年一組!」

「きたぁあああああ!!!」
「連覇だ連覇ぁぁ!」
「俺たち、青春してるー!!!」

教室での徹夜準備、笑いと涙とカオスな日々――
その全部が報われる瞬間だった。



「そして今年の優勝クラスへの副賞は……
 リゾート地・グランジールへの――バカンス旅行!」

「いぇぇぇぇぇい!!!」
「バカンスきたぁあ!」
「ナディア!
班分けは俺と一緒で頼む!」
「男子は全員荷物持ちだからね!」

はしゃぐ生徒たちの中で、ティアはふと笑った。
(ほんと、いいクラスだなぁ……)



司会は再びマイクを手に取る。
「そして、ミスコン優勝者――ティアさん!」

照明が当たると、ティアは少し恥ずかしそうに壇上へ。
「おめでとうございます。
ティアさんには特別個人賞として――
今年開校する《セイントスター世界魔法高等学園》の見学ツアー参加券が贈られます!」

「せ、セイントスター!?」
会場がざわつく。

「え、それって……アインレット王国と、ザザルン王国と、フィレン帝国が合同で作った、あの超エリート校!?」
「選ばれた人しか入学できないって噂の……!?」

ティアはきょとんとした顔でマイクを受け取った。
「えっ……あの……わ、私でいいんですか?」

司会は笑顔でうなずく。
「もちろんです!
ティアさんこそ、この学園の代表にふさわしい!」

会場中から拍手が巻き起こり、ティアは顔を赤くして一礼した。

(う、嬉しいけど……なんかすごいことになっちゃった気がする……)

アーサーが客席で笑いながら手を叩く。
その目には、誇らしげな光が宿っていた。


こうして、笑いと涙と拍手の中で――
今年の学園祭は、華やかに幕を閉じた。

ティアたち2年一組の青春は、まだ終わらない。
次に待つのは、グランジールでのバカンス、そして……新たな出会いの予感。

学園祭の喧騒が静まり返り、校舎の明かりが消えた夜。
だが、2年一組の熱はまだ冷めていなかった。

その夜、クラス全員で打ち上げ会が街の人気レストランで開かれた。
予約はすべて、委員長ナディアの完璧な采配によるものだ。

「いや~、ナディア、段取り神すぎ!」
「マジで委員長がいなかったら、集合場所で迷子出てたよ!」
「飲み放題プランにデザート付きって……センスまで完璧!」

「ふふん、当然でしょ?」
ナディアはドヤ顔でグラスを掲げ、皆から拍手と歓声が湧き起こった。


ティアはメリル、アーサー、そしてブライトン達と同じテーブルについた。
テーブルの上には色とりどりの料理が並び、まるでちょっとした宴会のようだ。

「ティア、セイントスター学園の見学、ほんっと楽しみね!」
メリルがウキウキした声で言う。

「うん。
どんな場所なんだろう……どんな人たちが集まるのか、ちょっとドキドキする。」

「ほら見て!」
メリルは自分の端末を取り出し、画面をティアに向けた。

そこには真紅の生地に金のラインが入った、まるで王国の儀礼服のような制服が映し出されていた。

「きゃーっ!
可愛い!」
ティアの瞳がキラキラと輝く。

「だよねっ!? 
しかもこのスカートのライン、絶対ティアに似合うと思う!」

「ねぇ、制服って……そんなに重要なのか?」
アーサーが腕を組み、何気なく画面を覗き込む。

「当たり前でしょ!」
ティアはムッと頬を膨らませ、アーサーの額を指で軽く押した。
「可愛い制服は正義なの!」

「はは、そういうもんなのか。」
アーサーは苦笑しつつ、彼女の横顔を見つめていた。



「よ~し、それじゃあ――!ミュウオケタイムいっくよぉ!!!」
突如、ナディアがマイクを掲げて叫んだ。

「で、出た!委員長の十八番コール!」
「また始まったぞ、カラオケ合戦!」

店内の照明が落ち、ミラーボールが回転。
気づけば、ステージスペースに男子達が我先にと並んでいた。

「俺に歌わせろー!」
「おいマイク離せー!」
「ブライトン、お前の音痴は禁止だって!」

騒然とする中、ナディアがステージで満面の笑み。
「さぁ、皆さんご一緒に~っ!」

一方その頃、女子組はテーブル席でドリンク片手におしゃべり中。
「男子達、元気ね~。」
「ティアも歌えば?」
「今日は聴き役でいいの。
喉がね、ミスコンで頑張りすぎたのよ。」

そう言いながらティアは、舞台で盛り上がるクラスメイト達を優しく見守っていた。


笑い声と歌声が夜の街に響く。
誰もが笑顔で、誰もがこの瞬間を忘れたくなかった。

こうして、二年一組の学園祭は――
最後の一曲と共に、賑やかに幕を閉じた。

その夜の思い出は、きっと一生の宝物になる。
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