毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

文字の大きさ
125 / 162
第十五章 400年後の未来

第百二十五話 廃部の危機を救え。

しおりを挟む
学園生活もアルバイトも順調そのもの。
ティアは相変わらず“普通の女子高生”を完璧に演じていた。

そんな中、学園では夏を前に「魔法競技大会」が近づいていた。
一年三組の教室も、ちょっとした熱気に包まれている。

「魔法競技大会って、個人戦と団体戦があったわよね?」
ティアが昼休みのパンをかじりながら尋ねると、隣のミミィは机に突っ伏したままぼやいた。

「私はパスだなぁ~。
暑いし、走るの嫌い~。」

「私は出るよ! 
個人戦!」
アーシャが拳を握って立ち上がる。キラキラした目にやる気が満ちている。

「へぇ~、やる気あるね。」
「そりゃそうよ!
優勝したら推薦ももらえるし!」

アーシャの熱弁をよそに、ティアは涼しい顔。
「私はいいわ~。
目立つの、好きじゃないの。」

「え~!? 
ティアも出ようよ!」
アーシャが両肩を掴んでブンブン揺らしてくる。

「ちょっ、揺らさないで……目が回るってば……」
完全に迷惑そうなティア。

「じゃあ、団体戦は? 三人でチーム組もうよ!」

「絶対イヤ!」
ティアとミミィの声がぴったり揃った。

「えぇぇ!? なんで!?」

「アーシャ、やる気は買うけど……団体戦って走るんでしょ?
ムリムリ~。」

「走る以前に、日焼けするのが嫌!」
ミミィとティアの即答に、アーシャは机に崩れ落ちた。


そして放課後。
今日は部活動の日といっても、ティアが所属しているのは魔法研究部。
名前こそ立派だが、実態は「何もしないで済む」平和な部活だった。

部室では今日もまったりした空気が流れている。
部長のラグナは、いつものように出席簿をペラペラとめくりながら、やる気のない声を上げた。

「えーっと、今日も全員いるな。
……じゃ、解散でい――」

その瞬間、なぜかラグナがバンッと机を叩いて立ち上がった。
「皆、聞いてくれぇぇぇぇ!」

突然の大声に全員ビクッ!

「ど、どうしたんですか、部長!?」
「机壊れますよ!」
「心臓止まるかと思った!」

ざわつく部員たちをよそに、ラグナは妙にキラキラした目で言い放つ。

「我が魔法研究部は、魔法競技大会を盛り上げるべく――何か!催し物をやろうと思う!!」

「……は?」

「え~、やだ~!」
「何もしないから入ったんですよ~!」
「俺たちで出来ること、ないって!」
全員から一斉にブーイング。

「ちょ、ちょっと待て!
聞け!これは遊びじゃないんだ!!」

「じゃあ何なんですか?」
女子部員のひとりが呆れ顔で尋ねる。

ラグナはおもむろに紙を掲げた。
「実はな……このままだと廃部になる!!!」

「……え?」
沈黙。

「魔法研究部、何年も成果ゼロで、予算も削られまくってる!
だから今年の競技大会で“何か”結果を出さなきゃ、もう終わりなんだ!」

「えぇぇぇぇぇぇ!!!」
部室に悲鳴が響いた。

ティアはポカンと口を開けたまま、心の中で呟く。
(“普通の部活ライフ”を送りたかったのに……なんでこうなるのよ……)


「で……つまり、私たち、何か“成果”を出さないと廃部、ってことですか?」
ティアが首をかしげながら尋ねると、ラグナ部長が大げさにうなずいた。

「その通りだ! 
君の理解力に拍手を送りたい!」

「褒められてる気がしないわね……」
ティアはため息をつきながら椅子に深くもたれた。

「で、どんな“成果”を出せばいいんです?」
ミミィが机に突っ伏したまま、だるそうに言う。

「うむ、それを今から考える!」
ラグナはホワイトボードに“案”と書き、勢いよくマーカーを走らせた。


ラグナのアイデア①:「火の輪くぐり魔法ショー」

「どうだ! 迫力があって観客も喜ぶぞ!」

「……それ、ただのサーカスじゃん。」
「しかも火事になる未来しか見えません。」
「廃部どころか、学園ごと燃やす気ですか?」

ティアは頬をぷくっと膨らませながら小声でつぶやいた。
「魔法研究部関係ないし……」


ラグナのアイデア②:「魔法でパンケーキ100段重ね!」

「食べ物系ならウケがいい! 
甘い香りで観客を魅了だ!」

「それ、魔法研究関係なくない?」
「あと、崩れるでしょ。
重力とか知ってます?」
「……私、食べる専門なら協力してもいいかも。」
ミミィだけは目を輝かせていた。


その時――ティアが小さく手を上げた。

「……あの、ちょっと提案してもいいてすか?」

「おお! ティア君、言ってみたまえ!」

ティアは指先を唇に当てて、ちょっと考える仕草をした。
その仕草に、男子部員たちは一瞬「おおっ」と声を漏らす。

(……やっぱり、この子、絵になるなぁ)
(なんか発表してるだけで可愛い……)

「例えば……“魔法の美しさ”をテーマにした展示とかどうでしょうか?
派手じゃないけど、光とか風とか、水の流れを使って……
みんなで“ひとつの作品”を作るの。」

そう言って微笑んだティアの頬が、ほんのり光に照らされる。
その優しい表情に、部員たちは一瞬見とれて――

「……いい! すごくいい!」
「美しいし安全そう!」
「ティアさんが言うと全部キラキラして聞こえる……!」

 ラグナは涙ぐみながら立ち上がった。
「そうだ! 
我々は“美を研究する魔法使い集団”だったんだ!」

「そんな設定、初耳ですけど。」
ミミィの冷静なツッコミが入る。


会議が進むにつれ、どんどん“ティア中心企画”に話が傾いていく。

「じゃあ、光を操るティアがメインで!」
「いいね! タイトルは“光の女神の舞”!」
「衣装どうします!? やっぱり白ドレス!?」

「ちょ、ちょっと待って! 
私、そんな目立つのイヤです!」
ティアが慌てて両手を振る。

「主役が言うセリフじゃないですよ、それ!」
「むしろティアが出なかったら成立しない!」

わーわー騒ぐ部員たちを前に、ティアは顔を真っ赤にして項垂れた。
(……だから目立ちたくなかったのよ……!)

ついにやってきた――魔法競技大会当日。
青空の下、グラウンドには全校生徒が集まり、実況用の魔法マイクが浮かんでいる。

「さぁ~! 
いよいよ始まりました、
セイントスター学園・魔法競技大会ぁぁ!」
実況の声が響き渡る中――

「え? 
最初のプログラム。
“開会デモンストレーション”?」

「そんなのあったっけ?」
「いや、今年は特別らしいぞ。
魔法研究部がやるんだって。」

「魔法研究部? 
あの“何も研究してない部”の?」
ざわざわとしたざわめきが広がる。


ステージ裏では――

「はぁぁぁ……やっぱり断ればよかった……」
ティアは舞台袖でため息をつく。
白いステージ衣装の裾をいじりながら、落ち着かない様子。

「大丈夫だって! 
本番で光が少しチカチカするだけだろ?」
ラグナ部長が呑気に肩を叩く。

「“少し”って何ですか?
先輩達が作った魔法制御陣、3回に1回は爆発してたじゃないですか?」

「だ、大丈夫!
今日は“成功する日”って気がする!」

「その根拠のない自信が一番怖いんです!」
ティアの額に青筋が浮かぶ。


そして、運命の開幕。

「それでは~、トップバッターは魔法研究部によるデモンストレーション、“光の女神の舞”です~!」

拍手と共に、ティアがステージに歩み出る。
風がふわりと彼女の金髪を撫で、会場のざわめきが静まる。

「うわ……めっちゃ綺麗……」
「本当に人間?」
観客席からため息が漏れる。

(……やっぱり目立ちたくないのに……)
そう心の中でぼやきながら、ティアは指先を上げた。


光のショー、開始!

光がふわりと彼女の周囲に集まり、花びらのように舞い上がる。
ティアの魔力に反応して、風と音が調和し――
幻想的なオーロラが会場上空に広がった。

「おおぉぉぉ!」
「やっばい、綺麗すぎる!」
「これ、魔法研究部のレベルじゃないって!」

ティアは内心焦っていた。
(……やばい、制御がうまくいきすぎてる……?)

ラグナたちは舞台裏で大喜びしている。
「見ろよ! 完璧じゃないか!」
「うんうん、まるで神の奇跡だ!」

(いや、本当に神の奇跡なんだけど!?)
ティアは心の中で全力ツッコミを入れた。


そして――事件は起きた。

制御陣の中心が、ピキッ……と音を立てる。
「……ん? なんか光が増してない?」
「ちょ、ちょっと待って、あれオーバーフローしてない!?」

次の瞬間――

ドォォォォン!!

眩い閃光が会場全体を包み、巨大な光の花が空に咲いた。
風が巻き起こり、観客の帽子や紙が舞い散る。

「きゃあぁぁ!」
「わぁぁぁ!?」

実況が叫ぶ。
「な、なんという光! 
これはもはや“魔法ショー”を超えています!!」


数十秒後、静まり返った会場。
ステージの中央で、ティアは焦げたステージの上にちょこんと立っていた。
髪がふわっと乱れ、ほのかにススがついている。

「……うん、派手すぎたわね。」
ティアは頬をかきながら、苦笑した。

ラグナ部長は泣きながら駆け寄る。
「すばらしい! 
完璧だ! 
これで廃部回避だぁぁぁ!」

観客席からは大歓声。
「ティアさーーーん!」
「光の女神だー!!」

ミミィとアーシャは遠くから頭を抱えていた。
「……ティア、目立たないようにって言ってたのに。」
「結局、全校の目を釘付けにしてるし。」

そして、魔法研究部は――
大会よりも話題をさらい、翌日には新聞の見出しを飾った。

『伝説の光、魔法研究部が開幕を照らす!』

魔法研究部の存続は守られた。
と同時に、入部者も殺到する始末。
目的はティアと言うものも。
それはまた別の話である。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

異世界でカイゼン

soue kitakaze
ファンタジー
作者:北風 荘右衛(きたかぜ そうえ)  この物語は、よくある「異世界転生」ものです。  ただ ・転生時にチート能力はもらえません ・魔物退治用アイテムももらえません ・そもそも魔物退治はしません ・農業もしません ・でも魔法が当たり前にある世界で、魔物も魔王もいます  そこで主人公はなにをするのか。  改善手法を使った問題解決です。  主人公は現世にて「問題解決のエキスパート」であり、QC手法、IE手法、品質工学、ワークデザイン法、発想法など、問題解決技術に習熟しており、また優れた発想力を持つ人間です。ただそれを正統に評価されていないという鬱屈が溜まっていました。  そんな彼が飛ばされた異世界で、己の才覚ひとつで異世界を渡って行く。そういうお話をギャグを中心に描きます。簡単に言えば。 「人の死なない邪道ファンタジーな、異世界でカイゼンをするギャグ物語」 ということになります。

建国のアルトラ ~魔界の天使 (?)の国造り奮闘譚~

ヒロノF
ファンタジー
死後に転生した魔界にて突然無敵の身体を与えられた地野改(ちの かい)。 その身体は物理的な攻撃に対して金属音がするほど硬く、マグマや高電圧、零度以下の寒さ、猛毒や強酸、腐食ガスにも耐え得る超高スペックの肉体。   その上で与えられたのはイメージ次第で命以外は何でも作り出せるという『創成魔法』という特異な能力。しかし、『イメージ次第で作り出せる』というのが落とし穴! それはイメージ出来なければ作れないのと同義! 生前職人や技師というわけでもなかった彼女には機械など生活を豊かにするものは作ることができない! 中々に持て余す能力だったが、周囲の協力を得つつその力を上手く使って魔界を住み心地良くしようと画策する。    近隣の村を拠点と定め、光の無かった世界に疑似太陽を作り、川を作り、生活基盤を整え、家を建て、魔道具による害獣対策や収穫方法を考案。 更には他国の手を借りて、水道を整備し、銀行・通貨制度を作り、発電施設を作り、村は町へと徐々に発展、ついには大国に国として認められることに!?   何でもできるけど何度も失敗する。 成り行きで居ついてしまったケルベロス、レッドドラゴン、クラーケン、歩く大根もどき、元・書物の自動人形らと共に送る失敗と試行錯誤だらけの魔界ライフ。 様々な物を創り出しては実験実験また実験。果たして住み心地は改善できるのか?   誤字脱字衍字の指摘、矛盾の指摘大歓迎です! 見つけたらご報告ください!   2024/05/02改題しました。旧タイトル 『魔界の天使 (?)アルトラの国造り奮闘譚』 2023/07/22改題しました。旧々タイトル 『天使転生?~でも転生場所は魔界だったから、授けられた強靭な肉体と便利スキル『創成魔法』でシメて住み心地よくしてやります!~』 この作品は以下の投稿サイトにも掲載しています。  『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n4480hc/)』  『ノベルバ(https://novelba.com/indies/works/929419)』  『アルファポリス(https://www.alphapolis.co.jp/novel/64078938/329538044)』  『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093076594693131)』

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

処理中です...