毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝

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第十五章 400年後の未来

第百二十八話 メイド喫茶は大騒ぎ

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学園祭の朝。
一年三組の教室では、メイド喫茶の準備で大わらわだった。
机が並べ替えられ、紅茶とスイーツの香りがふわりと漂う。
そんな中、女子更衣室では――。

「私はやりたくなかったのにぃ……!
ミミィが余計なこと言うからぁぁ!」
ティアは黒いメイド服のフリルを引っ張りながら、鏡の前で小声の抗議を続けていた。

「まあまあ、いいじゃん~!」
ミミィはノリノリでカチューシャを付け、スカートをふわっと回す。
「お客様が喜ぶ=幸せが増える=世界平和だよっ!」

「その公式、どこで習ったのよ!?」
ティアのツッコミも空しく、ミミィは満面の笑顔。

そして、横では――。
アーシャが黙々と着替えていた。

「ねぇ、アーシャ。
メイド喫茶、嫌だよね?」
ティアは心の支えを求めて声をかけた。

「……うん。
まあ、ね。」

静かに頷くアーシャ。
だが――その口元が、ほんのりと笑っている。

『ま、まさか……!? 
アーシャが……楽しんでる……?』
ティアの瞳がカッと見開かれる。

(う、裏切り者ぉぉぉぉっ!!!)
心の中でティアが絶叫している頃、アーシャは鏡の前で髪を整えながら、
「この服……悪くないかも。」と小さく呟いていた。

「ほらぁ~♡アーシャも楽しんでるじゃん!」
ミミィがすかさず肩を組む。

「ふ、ふん……別に仕事だからやってるだけよ。」
アーシャの顔がほんのり赤い。

ティアは膝から崩れ落ちた。
「ふ、2人とも……ノリノリじゃないの……!?」


やがて、メイド喫茶がオープンすると。
教室の外にはすでに長蛇の列。

「おい見ろよ! 
三組に“天使”がいるって噂だ!」
「いや、“三人の天使”だ! 
一人はおっとり金髪、
一人は元気満点の笑顔、
もう一人はクール系黒髪ツンデレらしい!」
「全属性そろってるじゃねぇかぁぁぁ!」


そして入店した客たちは、瞬時にノックアウトされた。

「い、いらっしゃいませ……♡」
ティアは緊張で声が裏返りながらも、
“照れ笑い+上目遣い”という奇跡のコンボを発動。

その瞬間――
「尊っっっっっっ!!!!」
「世界が浄化された!!」
「もはや神域!!」
客が次々に机に突っ伏して撃沈。

ミミィは隣で元気いっぱいに皿を配り、
「こちら、スイートハートパンケーキです♡」とウィンク。

「天使がウィンクしたああああ!!」
「命が……命が持たない……!!」

そして、最初はクールを気取っていたアーシャも――
「……ご注文は?」
と低めの声で聞いた瞬間、
「す、すいません……ドリンクより、推しになってもいいですか!?」
と土下座する男子が続出。

アーシャは頬を赤らめながら、
「勝手にすれば?」と一言。
そのツンデレ返しに、男子たちは阿鼻叫喚だった。


ティアはそんなカオスを見て、思わず天を仰いだ。
「も、もうやだ……! 
これ、カフェじゃなくて信仰の儀式よぉぉぉ!」

ミミィは笑いながらティアの肩をポンッ。
「何言ってるの、ティア。
一年三組はもう“癒やしの聖域”なんだからっ♡」

「やめてぇぇぇぇっ!!」


その日の学園祭――
一年三組「メイド喫茶《カフェ・ド・サンクミ》」は、
“来場者満足度100%・心停止者3名(感動による)”という
伝説の結果を叩き出したのであった。

学園祭も終わりに近づいた午後。
一年三組のメイド喫茶の前は、なぜか人だかりで埋め尽くされていた。

「す、すみません!一枚だけ!」
「ティアちゃん、こっち向いてぇぇぇ!」
「アーシャさん、ポーズくださいっ!」

いつの間にか――
三人の周囲にはカメラを構えた生徒達が列をなしていた。

「な、なにこの状況……!?」
ティアは引きつった笑顔でピースをする。
後ろでアーシャは完璧な角度で微笑み、ミミィは全力でハートを作っている。

「はい、チーズ!」
シャッター音が鳴るたび、ティアの心のHPがどんどん削られていった。

『……これ、凄く目立ってるじゃないのぉぉぉ!』
(※本人は極力目立ちたくない主義)


撮影会が終わり、更衣室に戻る三人。

「ふぅ~、お疲れぇ~!」
ミミィはハイテンションのまま鏡の前でクルクル回る。
「ねぇねぇ!さっき思いついたんだけど──」

「……嫌な予感しかしない。」
ティアは着替えながら即座に防御体制。

「3人で学園アイドルユニット結成しないっ!?」

「はぁ!? いや!」
ティア、即答。まさに電光石火。

「いいじゃんいいじゃん!
盛り上がるって!」
ミミィはティアに抱きつき、キラキラした目で迫る。

「絶対いやぁぁぁ!」
ティアは必死に引き剥がそうとするが、ミミィのしがみつきスキルはSSランク。

「ねぇ、アーシャも言ってよ!」
ミミィが助けを求めるように振り向くと。

アーシャは鏡の前で自分のメイド姿をじぃっと見つめていた。

「……私、二人がやるなら。」

ぼそっ。

ティア、硬直。

「ま、まさか……アーシャまで!?」
(裏切りはいつも静かにやってくる)

「ほらぁ~!
アーシャも乗り気だよ!
ティアもやろうよ!」

「目立ちたくないのぉぉぉっ!!」
ティアは床に突っ伏すように叫ぶ。

「衣装は私が作るから!」

「そういう問題じゃないわよっ!」

「だってティア、可愛いんだもん。
学園中、君の笑顔で救われてるんだよ?」

「……知らないわよ、そんな宗教みたいな話!」

ミミィはそれでも満面の笑顔でティアに抱きついたまま離れない。
「大丈夫!
“可愛いは正義”だよ!」

「じゃあアーシャと2人でやってよっ!」

「ティアがいないとバランス崩れるの!」

「どんなバランスよ!?」
ティアの悲鳴が更衣室に響く中、ミミィは満足げに微笑んだ。


そして翌日──。

一年三組のホームルームで、ミミィが立ち上がった。
「発表しまーす!
私たち三人で学園アイドルユニットを結成しまーす!」

「えええええええ!?」
ティアの叫び声が教室中に響いた。
「も、もう……ミミィぃぃぃっ!」

「いいじゃんいいじゃん♡」
ミミィはティアに手を合わせてお願いポーズ。

「……もう!
人気が出なかったら、すぐ辞めるからね!」
ティアはぷくっと頬を膨らませ、観念したように言う。

「やったぁぁぁ!」
ミミィがぴょんぴょん跳ねて大喜び。
「ユニット名、どうしよう!? “ティアミアシャ”とか可愛くない!?」

(※略称が既に可愛い)

だが、ティアの予想に反して──

新ユニット【ティア・ミミィ・アーシャ】、通称「TMA」は、
学園全体で大ブームを巻き起こすことになる。

そしてミミィは、夜なべして衣装デザインに没頭し始めたのだった。

放課後の三組教室。
学園アイドルユニット「TMA(ティア・ミミィ・アーシャ)」結成から数日──
教室の片隅では、ミミィが真剣な眼差しでミシンに向かっていた。

「よ~し!今日こそ完成させるんだからぁぁぁっ!」
ミミィの声が響き渡る。
机の上には生地、レース、リボン、謎のスパンコール……そして山のような糸くず。

「……ミミィ、本当に自分で作るの?」
ティアは呆れたように尋ねる。

「当然よ!
これは愛と努力と情熱の結晶なんだから!」
ミミィはキラキラした目で糸を通す。

「……糸、通ってないけど?」

「えっ!? うそ!?」

「……完全に空振りね。」
アーシャが静かにツッコむ。

「くっ……ミシンに拒絶されてる!?」

「ミシンじゃなくて現実に拒絶されてるんだと思うわ。」
ティアの冷静な一言に、ミミィは机に突っ伏した。

「だってぇぇぇ~、3人お揃いの衣装着たいんだもんっ!」
涙目のミミィ。

ティアとアーシャは顔を見合わせる。
その表情には――
「(……ここまで本気なら、ちょっと手伝ってあげてもいいかも)」
という優しい空気が流れていた。


「はい、このスカートの裾、もう少し内側ね。」
ティアが器用に針を動かす。

「リボンは私が仕上げる。」
アーシャが丁寧に縫い目を整える。

「わぁぁぁ、2人とも裁縫上手すぎ~っ!」
ミミィは感動で鼻をすすりながら、端でボタンを縫い付けようとして指を刺した。

「いったぁぁぁ!血がぁっ!」

「ほら言わんこっちゃない。」
ティアが呆れ顔で絆創膏を差し出す。

「ミミィ、ボタンは任せて。」
アーシャが静かに受け取り、几帳面に仕上げていく。
その手際にミミィはぽかんと口を開けた。

「アーシャ……まさかお裁縫得意だったの!?」

「……魔法の杖の飾りを直すのに慣れてるから。」

「なるほど、戦闘系女子の家庭力……!」
ミミィが感動で震える。

ティアはそんな二人を見て、クスリと微笑んだ。
「ほんと、何だかんだでいいチームね。」


深夜――
気づけば3人で笑いながら、糸くずだらけの机を囲んでいた。

「よし、最後の仕上げよ!」
ミミィが針を持ち上げ、キリッと宣言する。

「……ミミィ、その針、逆さまよ。」

「うそっ!?」

「もう、危ないから貸して。」
ティアが優しく手を伸ばし、針を受け取る。

そして、3人の息がピッタリ合った瞬間。
完成した衣装が、机の上でキラキラと輝きを放った。

「……できた。」
アーシャが呟く。

「や、やったぁぁぁぁぁ!」
ミミィが両手を広げてティアとアーシャに飛びつく。

「ちょっ……ミミィ、糸くず! 
糸くずが顔につくっ!」

「ひゃっ……! ミミィ、鼻息が近い!」

ドタバタと笑い合う3人の声が、夜の教室に響いた。


翌朝。
疲れ切った顔をしたティアは呟いた。
「……もう二度と夜通し裁縫なんてしない。」

ミミィは目の下にクマを作りながらも、誇らしげに笑った。
「でも、最高の衣装ができたでしょ?」

アーシャも珍しく微笑んだ。
「……悪くない。」

ティアは肩をすくめつつも、優しく微笑む。
「ま、いいわ。
せっかくだし、着てみましょうか。」

ミミィが叫ぶ。
「うんっ!
世界一かわいいユニット衣装、完成~っ!」

3人の声が重なり、朝の光の中で衣装がきらめいた。
それは、努力と友情が縫い上げた――奇跡のステージ衣装だった。
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