お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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6話 前世

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全て思い出した。
 俺は前世が世界最強の【奪盗術師】だった。
 だけど────
 
「ッッッ! 落ちる!!」

 前世を思い出しても、状況は何も変わらない。

 地面直撃まで、残り0.1秒。
 死を覚悟する刹那、脳内に1つの魔術が思い浮かぶ。
 それは前世の俺が最初に覚えた、最高の防御魔術。

【魔術スキル:死神の柔風デス・マーチを再習得しました】

 脳内に流れる女性の声。
 それに促されるかのように、俺は────

「《死神の柔風デス・マーチ》!!」

 ────とっさに魔術を発動した。

 すると俺の身体を黒風が覆い、まるでクッションのように柔らかく包み込む。

 そして、地面衝突の瞬間。
 俺の魔術が緩和剤となり、衝撃を吸収した。

「……生きているのか?」

 自分でも驚いたが、衝撃の無傷。
 何故か首の骨の骨折まで、完全に癒えている。

「え、アイツ……公爵家の次男よね?」

「いま……屋上から落ちてきたよな?」

「でも……無傷だぜ?」

「き、きっと……アレだ! 無能特有の豪運フィーブル・ラックだろ!」

「な、なんだよ、それ?」

「わかんねぇよ! 頭が良いって思われたくて、適当にそれっぽいこと言っただけだ!!」

「ダッサ」

 周りが騒がしい。
 だが、俺の心境も落ち着いていない。

「……急に……記憶が……訳わからん」

 混乱は止まらない。
 だが、治まるを待ってはくれない男がいた。

「アルカァアアアアアアア!!!!」

 屋上から響き渡る怒号。
 聞き慣れた男の、憎悪に塗れた叫び声。

「……イリカ」

「何故ェ! 生きてやがるゥウウウ!!!」

「わかんねェよ」

「聞こえねェぞォオオオオ!!!!」

「そりゃそうだ」

 屋上までおよそ30メートル。
 俺がボソボソ何か言っても、聞こえるわけが無い。

「……アルカァアアアアア!!!!」

「……うるさいな」

「明日、ワタシと決闘しろォ!!」

「……決闘?」

「聞こえねェ!!」

「……バカだな」

 イリカは頭に血が上ると、知能指数が下がる。
 
「明日、ワタシと決闘だァ!! そこで今度こそ、殺してやるゥ!!」

「……わかった」

「聞こえんゥ!!」

「わかったって言ったんだ!!」

「わかれば良い!! 貴様の血で、真っ赤なケチャップを作ってやる」

「物理的に不可能だろ」

 以前までなら、決闘など聞いただけで震え上がっただろう。
 だが……今は違う。

「なんだよ……スキルって……。それに『奪盗だっとう』なんて言葉は無いだろう。それを言うなら、『盗奪とうだつ』だろ……」

 前世の記憶のせいで混乱している俺は、イリカからの挑戦に震え上がることさえできなかった。
 スキルという謎のワードや前世の記憶、わからないことが山積みで、イリカからの挑戦に震える余裕もなかったのだ。
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