お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

文字の大きさ
5 / 74

5話 最期【3人称視点】

それは遥かいにしえの時代。
 天界をたった1人で蹂躙じゅうりんした男がいた。
 エルフの森を障気しょうきで満たした男がいた。
 強力な魔術で魔族を滅ぼした男がいた。

 彼こそは最強の支援職である【奪盗術師だっとうじゅつし】。
 名をルアカ・ベンゼンという。

「────ルアカ・ベンゼンよ、貴殿の負けだ」

 そんな史上最強の【奪盗術師】である彼は、人生初の敗北を喫していた。
 
「……どうやら、そのようだ」

 彼は今、満身創痍まんしんそういの状況にある。
 下半身を焼き払われ、左目を穿うがたれ、右腕は千切ちぎれ。
 これまで彼が味わったことのない、深刻な負傷ダメージに苛まれていた。
 
 そんな彼を見下ろす巨大な存在、それは────
 
「……幽星竜ゆうせいりゅうゼロラスター……。伝説に恥じない実力だったな……」

「それは我のセリフだ」

 幽星竜ゆうせいりゅうゼロラスター。
 それはこの世界において”失われた歴史”にのみ名を表す伝説の竜族ドラゴンのことである。

 神話の時代に、世界を創造した神々を滅ぼし、かつて栄えていた文明を焼き尽くした真の邪竜。
 しかし、ある時に急に猛りを失い、この世界のどこかに身を隠してしまった。
 この世界において、神話の時代は”失われた歴史”と呼ばれているが、その主な理由は幽星竜ゆうせいりゅうラスターが文明を滅ぼしたからである。

 結果、かの邪竜の存在を知るモノは、極めて少ない。
 焼け残ったごく一部の伝承、そして生き残った神々の末裔しか、かの邪竜の恐ろしさを知るモノはいないのだ。

「まさか、悪名高い邪竜が……こんなに美しいとは……思いもしなかったけどな」

「ふっ、変わった人間だ。我のような歪な存在を、美しいと形容するとは」

 幽星竜ゆうせいりゅうゼロラスターは、その忌々しい伝承とは異なり、非常に妖艶スケベな容姿をしていた。
 全長100キロメートルにも及ぶ、雄々しい巨躯。
 背中から流れる、オーロラのように綺麗な翼。
 ワシのように鋭く、虎のように猛々しい四肢。

 幽星竜ゆうせいりゅうゼロラスターの性別はわからない。
 だが、ルアカ・ベンゼンの瞳には、この上なく美しい……女性のように見えていた。

「貴殿の戦いも素晴らしかったぞ。その【奪盗術クリアネス】というスキルによって得た数々のスキル、驚嘆に値する」

「だが……傷1つつけることができなかった」

 ルアカの職業、奪盗術師は極めて特殊な職業だ。
 基本的には支援系の職業で、他人や自身を強化・弱体化できる。
 だが、奪盗術師には他の者にはない、最強のスキルを有していた。

 その最強のスキルの名は、【奪盗術クリアネス】。
 効果は単純明快、「相手のスキルを奪う」というもの。
 身体を変質化するスキルであっても、魔術や技術に関するスキルであっても、どんなスキルであっても奪える。
 
 支援系の職業は、基本的には攻撃スキルが貧弱であるため、1人での活動は難しい。
 しかし、奪盗術師には関係ない話だ。
攻撃系のスキルをも奪える奪盗術師にとって、支援術師の特徴である『攻撃スキルが貧弱』という特徴は当てはまらない。

 どんなスキルでも奪え、支援術も扱える奪盗術師は、まさしく『最強』なのである。

 だが、奪盗術師になることは常人には困難だ。
 奪盗術師になるためには、『支援系の職業に1000年以上従事して、盗賊系の職業に100年以上就くこと』が条件であるからである。 

 一般的な人間の寿命は80年程度で有り、もっとも長命な種族であるエルフの寿命でさえ500年程度のため、奪盗術師に就くことは不可能に近い。
 ルアカがたまたま不老の霊薬を飲んでいなければ、奪盗術師など未来永劫現れなかっただろう。

「……まさか、幽星竜ゆうせいりゅうゼロラスターに【奪盗術クリアネス】が通じないとは……誤算だった」

「我は【スキル奪盗無効】のスキルを有しているからの」
 
「……なんて、惨めな人生だ」

 ルアカは血ヘドを吐きながら、自虐気味に笑う。
 その命も、直に果てるだろう。

「……1721歳の時、聖竜を倒した。2891歳の時、大魔王をたおした。5000歳の時、神々をたおした」

 涙を流し、続ける。

「そんな俺でも……傷1つつけることができず、スキルも奪盗ぬすめない奴がいるなんてな……」

「我が相手してきた中で、貴殿は1番の強者だったぞ」

「強さを讃えられても、何も嬉しくない。俺は……貴様のスキルが欲しかったんだ」

「……なに? 貴殿は我を倒し、『世界最強』の称号を得たかったのではないのか?」

「『世界最強』なんて、どうでもいい。俺はただ……俺の知らないスキルをコレクトしたかっただけだ……」

 そう。このルアカという男、異常なほどのコレクター気質を持つ。
 幼少期には欲しいものがあると必ず癇癪かんしゃくを起こし、親を幾度も泣かせた。
 青年期には世界中の専門店やオークションで大金を溶かし、多くのヤミ金に手をかけた。
 その後も数々のモノをコレクトしていき、7800歳になった今では、未知のスキルを集めることが趣味である。

「……貴殿、まさかとは思うが……不老の霊薬を飲んだ理由は寿命を無くし、全ての”欲しいもの”を集めるため……ではないだろうな?」

「よくわかってるな。有限の寿命のままだったら、欲しいものを集める前に寿命が尽きてしまうところだったからな」

 瞳を輝かせながら、ルアカは語る。
 7800歳児とは思えないほどに、キラキラと。

「純粋に狂っているな」

「そうか? 男の子は皆、コレクター気質だぞ」

「だが、さすがにそこまでコレクター気質なのは……竜の我でも引くぞ」

「それは寂しいな」

「そんなことよりも、傷は大丈夫なのか? 随分と饒舌じょうぜつに話しておるが」

「え、あ。ご、ゴホゴホ……し、死ぬ……」

「そんな思い出したかのように……。だが、やはり貴殿はおもしろいな。これまであってきた中で、初めての逸材だ」

 幽星竜ゆうせいりゅうゼロラスターは、ふいに1つの魔術陣を発動させる。

 魔術陣はルアカの足下に展開される。
 それはまるできらめく夜空のようで、優しく儚い輝きを持っていた。

「……これはなんだ?」

「《輪廻転生の術リィンカーネーション》だ」

「……なんだそれ?」
 
「簡単に説明すると、貴殿の記憶と技、そして魔力といくつかのスキルを遙か遠い未来に送る魔術である」

「なるほど、わからん」

「遥か未来の誰かの前世が貴殿になり、その前世が鮮明に思い出せるということだ。おまけに、貴殿が扱えるスキルの内、いくつかを扱えてな」

「なるほど、それは素晴らしい。俺がコレクトしたスキルが僅かとはいえ、無駄にならないとは」

「感謝するが良い」

 次の瞬間────ルアカの身体は、光に変わった。

「貴殿の命は、経験値は無駄にしない。史上最強の【奪盗術師】よ、また会おう」
感想 2

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした

希羽
ファンタジー
人気ダンジョン配信チャンネル『勇者ライヴ』の裏方として、荷物持ち兼カメラマンをしていた俺。ある日、リーダーの勇者(IQ低め)からクビを宣告される。「お前の使う『重力魔法』は地味で絵面が悪い。これからは派手な爆裂魔法を使う美少女を入れるから出て行け」と。俺は素直に従い、代わりに田舎の不人気ダンジョンへ引っ込んだ。しかし彼らは知らなかった。彼らが「俺TUEEE」できていたのは、俺が重力魔法でモンスターの動きを止め、カメラのアングルでそれを隠していたからだということを。俺がいなくなった『勇者ライヴ』は、モンスターにボコボコにされる無様な姿を全世界に配信し、大炎上&ランキング転落。  一方、俺が田舎で「畑仕事(に見せかけたダンジョン開拓)」を定点カメラで垂れ流し始めたところ――  「え、この人、素手でドラゴン撫でてない?」「重力操作で災害級モンスターを手玉に取ってるw」「このおっさん、実は世界最強じゃね?」とバズりまくり、俺は無自覚なまま世界一の配信者へと成り上がっていく。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。