お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

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17話 報復 1/2

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 イリカを倒してから、1週間が経った。
 俺は毎日昼休みにイリカが入院している病院に赴き、イリカの才能スキルを奪っている。
 そのおかげで才能スキルも充実してきて、無才だったあの頃と比べると格段に強くなれた。

 さらにイリカを病院送りにしたおかげで、俺に対するイジメはなくなった。
 これまでイジメてきた連中も、遠くから畏怖の眼差しを送るだけだ。
 俺が彼らに視線を送ると、彼らは揃って視線を下げる。
 ビクビクとしているその姿は滑稽で、特に意味もなく彼らを睨むことも多くなった。

「俺は格段に強くなった。だが……今のままでは父さんに圧勝することは難しいだろう」

 学校の屋上でため息を吐きながら、俺は1人で呟く。
 俺を追放した諸悪の根源の攻略方法を練りながら、深いため息を吐く。

 おそらく約1週間前までの父さんであれば、圧倒できただろう。
 だが、今の父さんは……以前までとは格が違う。
 たまに廊下などですれ違うこともあるが、以前と比べると……格段に強くなっている。
 
 容姿も年相応の枯れ木を連想させる瘦せさばらえたモノではなく、若々しく健康的なパワーを感じさせる筋肉質なモノへと変化している。
 シワもめっきり減り、とても60代には見えない。

 いや、一番の変化は魔力だろう。
 父さんの魔力は以前よりも格段に増し、そして邪悪へと変容してしまった。
 人によっては側にいるだけで吐き気を催すような、そんな禍々しい魔力を有している。
 さらにどうやら魔道具や呪物によるドーピングを使用しているようで、その力は日に日に強まっている。

「今の俺の実力は、おそらく父さんと互角だ。つまり今戦っても、圧勝はできない」

 深くため息。
 父さんは俺を追放した張本人だ。
 そんな相手に互角の勝負はしたくない。
 できることなら惨たらしく、残虐に圧勝したい。

「……仕方ない。強くなるか」

 幸いにも、俺は奪盗術師だっとうじゅつしだ。
 強くなる方法は容易い。
 相手の才能スキルを奪うだけで、簡単に強くなれる。

 この能力を使い、もっと強くなって見せる。
 俺のことをバカにした全ての人間を、目にモノ見せてやる。


 ◆


「ぎゃはは!! マジでおもしれェな!!」

「ホントだよな!! ほらテメェも少しは笑えよ!!」

「ぐッ……あはは……」

「何笑ってンだよ!! 気色ワリィ!!」

「テメェみてぇなデブ!! アルカみたいにかわいくねェから、かわいがってやんねェぜ!!」

「……まだ引きずってんのかよ。図体はデケェのに女々しいな……」

 男子トイレの中から聞こえてくる、不愉快な声。
 1つは甲高く、耳が痛くなる声。
 1つは野太く、聞き取りにくい声。
 1つは……苦痛に悶える声。

「……まだしているのか。クズ共め」

 苛立ちを抑えきれない俺は、ズカズカとトイレの中へと入った。

「ホント……アルカがイジメられなくなって、新たな玩具おもちゃを探したけどよ……」

「テメェはアルカみたイリカわいげが全然ねぇな」

「ご、ごめん……」

「……俺はかわいげなんて、どうでもいいんだけどな。だけど、テメェはおもしろくねぇんだよ!!」

「うッ……お、お腹は殴らないで……」

「テメェみたいなデブ、腹以外にどこを殴れっていうんだ!!」

「うッ、うぐッ……い、痛い……」

 

「……呆れるな」

 

 ため息を吐きながら、彼らの元へと近づく。
 本当に不愉快で……彼らの邪悪さは吐き気を催すな。

「あ゛? ……て、テメェ!!」

「あ、アルカきゅんじゃねぇか!!」

「……気色悪いから、そんな風に呼ぶな」

 そこにいたのは、3人の男。
 1人は中肉中背の男。
 1人は身長2メートルを超える筋骨隆々な巨漢。
 1人は……太った男。

 太った男はアザだらけだ。
 目には涙を含ませており、必死に……笑顔を取り繕っている。
 
「……胸糞悪いな」

 嫌なことを思い出す。
 俺も昔、彼と同じ立場だった。

 苦痛に満ちた表情を浮かべれば、彼らに屈してしまう。
 身体は屈しても、心までは屈したくない。
 だからこそ……苦痛の中で笑みを浮かべたものだ。

「1人では何もできないイリカの腰巾着の分際で、いったい何をしているんだ?」

「な、なんだよ……や、やんのか!?」

「ヤるのは歓迎だけど……。殺るのは勘弁してほしいな……」

 彼らを見ていると、心の中の闇が広がっていく。
 心身の傷がうずいてしまう。

 中肉中背のヤツには、タバコを押し付けられた。
 根性焼きと称されたそれは、今でも俺の左肩に醜く跡を残す。
 彼にとってはタダの遊びだったのかもしれないが、俺にとっては拷問でしかなかったのだ。

 巨漢には……性的な暴力をされた。
 服を脱がされ、大事なところをいじられ。
 その後は……思い出すのも嫌になる。

「……そうだ、お前らの名前を思い出したぞ。中肉中背がチオ、巨漢がモトキだったな」

「だ、だったらなんだよ……」

「こ、告白でもするのか……? それなら、大歓迎だ」

「……ふざけるのも大概にしろ」

 腕を大きく開く。
 彼らはイリカと同じくらい……腹が立つ。
 そんな彼らには……仕置きが必要だな。

「お前ら2人は、ここで殺す」

 2人を指さし、そして最初のターゲットを決める。

「まずはお前からだ、チオ」

 脱兎の如く駆ける。
 そして、チオの懐に潜り込み──
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