お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀

文字の大きさ
20 / 74

18話 報復 2/2

「まずはお前からだ、チオ」

 脱兎の如く駆ける。
 そして、チオの懐に潜り込み──

「──死ね」

 アリ怪力とハチ毒針を重ねた拳を、腹に叩きつける。
 彼はイリカのように頑丈ではない為、俺の腕は彼の腹を突き破ってしまった。

「ぐ、あぁああああ!!!! い、痛ェ!?」

 貫通した腕を戻し、空いた手で彼の顔面を鷲掴む。
 そして、そのまま徐々に掴んだ手に力を加えていく。

「確かこの技は……アイアンクローと呼ぶんだったか?」

「や、やめろ!! い、痛ェ!?」

「お前は根性焼きの時に、俺がやめろと言って素直にやめたか?」

「そ、それは……や、やめろ!! これ以上は……顔が潰れてしまう!!」

 ミシミシと頭蓋が崩壊してゆく音が心地よい。
 だが……このまま頭を粉砕するのでは、芸がないな。

「……そうだ、チオ。お前、タバコの火が何度か知っているか?」

「し、知らねぇよ!! い、痛ェからやめろ!?」

「その温度は約700~800度。一生の傷をつけるには、十分な火力だ」

「だ、だからなんだ!! 根性焼きをしたことは謝る!! だから……離してくれ!! 腹も治療してくれ!!」

「謝って済むのなら、衛兵はいらないぞ」

 俺は魔術を唱える。
 俺と同じ苦しみを味合わせるために。

「《下級の火炎腕フレイム・アーム》」

 顔面を掴む右腕全体が、真っ赤に燃える。
 メラメラと轟々と、コイツを殺せと炎が轟き叫ぶように燃え盛る。

「ギャァアアア!! 熱ィイイイ!!」

 やがて炎はチオの服にも燃え移り、チオの身体を徐々に焼いていく。
 皮膚を溶かし、筋肉を焦がし。
 その炎は着実に、チオを死に追いやる。

「そうだ、忘れる前に奪盗うばっておこう。奪盗術クリアネス

【汎用スキル:人情喪失を習得しました】
【汎用スキル:便乗暴力を習得しました】
【魔術スキル:中級の氷槍アイス・ランスを習得しました】
【魔術スキル:下級の水矢アクア・アローを習得しました】

「苦しいだろう、熱いだろう。俺もその苦しみを味わったんだ」

「し、死ぬゥウウウ!! た、助けてくれ!!」

「俺が助けを求めた時、お前は助けてくれたか?」

 燃え盛るチオを、その辺に放り投げる。
 トイレの床を転げまわりながら、チオは必死に叫んでいる。

 だが、それも長くは続かない。
 腹に空いた穴から血を流しすぎたことも合わさり、10秒もしないうちにチオは静かになった。

「お、おい……チオ……?」

「次はお前だ、モトキ」

 またしても脱兎の如く接近。
 そして──

「──死ね」

 スキルは発動しない。
 ただただ俺は、思い切り蹴り上げるだけ。
 その標的は──モトキの股間だ。

 グチャッ。

「あ、あぁあ……」

 2メートルを超える巨体を誇るモトキが、股間を抑えながら倒れた。
 股間からは、真っ赤な血がドクドクと流れている。

「苦しいか? 惨めか? 無様だな」

「あ、アルカ……どうして……こんなことを……」

「俺もその気持ち、よくわかるさ。お前にいじられているときは、酷くツラかったからな」

 好きでもない相手にいじられることはツラかった。
 だがそれ以上に……周りの奴らがニタニタと嗤いながら、俺をバカにすることがツラかった。

奪盗術クリアネス

【汎用スキル:人情喪失を習得しました】
【汎用スキル:絶倫を習得しました】
【汎用スキル:剣術を取得しました】
【汎用スキル:身体能力強化を取得しました】

「……お前ら2人とも、つまらない才能スキルだな」

「う、うぅ……」

「……」

「って言っても、1人は死んでいるし1人は苦痛のあまり悶えているし、俺の話なんて聞いちゃいないか」

 トイレの床に転がり、虫のように痙攣するモトキの首元に手を添える。
 そして──万力のような力で絞め上げる。

「がァッ……ぐゥッ……」

「息ができなくて苦しいだろう。みだらなイジメをするときに、お前はよく俺の首を絞めたよな!!」

「ぎィッ……!!」

「自分の性欲を満たすために、俺を苦しめて……お前みたいな股間で生きるサルは死んでしまえ!!」

「あァッ……」

 やがて、モトキは静かになった。

「失神か死亡か、どっちかわからないから潰しておこう」

 モトキの顔面を殴りつぶす。
 脳漿のうしょうが飛び散り、トイレの床を穢す。

「……清掃員さんに申し訳ないな」

「あ、あの……」

「ん? ……ああ、なんだ」

 トイレの隅でビクビク怯えながら、俺の一方的な暴力を見つめていた彼。
 最初こそ恐怖に溢れた眼差しをしていたが、今は……希望に塗れた瞳をしている。

「あ、ありがとうございます……!!」

「いや、お前の為に行ったことじゃないからな。感謝されるいわれはない」

「で、ですけど……結果的に僕は救われました……!! あ、ありがとうございます!!」

「……まぁ、悪い気はしないな」

 こういうのも、たまにはいいかもしれない。

「……あ、あの」

「まだ何か用か? 俺はこいつらの死体を処理しないといけないんだが」

「……どうすればアルカさんみたいに、つ、強くなれますか?」

「……難しい質問だな」

 俺の場合は、あまりにも例外すぎる。
 前世の記憶なんて、そう簡単に思い出せるものではないからな。

「……そうだなぁ」

 彼の身体を確認する。
 なんというか……不摂生極まりない身体だな。
 
 身長はおそらく、170センチほど。
 対して体重は……おそらく170キロ。
 とにかく分厚く、とにかく太い。
 それも筋肉によるものなどではなく、脂肪でブヨブヨなのだから最悪だ。

「……とりあえず、痩せることから始めたらどうだ?」

「は、はい!! 痩せるんですね!!」

「……うん、まずはそこからだな」

「わ、わかりました!!」

 脂肪でパンパンの顔は、笑みを浮かべる。
 それは先ほどとは違って、実に自然なモノだ。

「それじゃあ……またな」

「はい!! ありがとうございました!!」

 そう言って、彼はトイレから去った。

「……たまには正義の実行も、悪くないな」

 そんなことを呟きながら、俺は2人の死体の処分を進めるのだった。
感想 2

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした

希羽
ファンタジー
人気ダンジョン配信チャンネル『勇者ライヴ』の裏方として、荷物持ち兼カメラマンをしていた俺。ある日、リーダーの勇者(IQ低め)からクビを宣告される。「お前の使う『重力魔法』は地味で絵面が悪い。これからは派手な爆裂魔法を使う美少女を入れるから出て行け」と。俺は素直に従い、代わりに田舎の不人気ダンジョンへ引っ込んだ。しかし彼らは知らなかった。彼らが「俺TUEEE」できていたのは、俺が重力魔法でモンスターの動きを止め、カメラのアングルでそれを隠していたからだということを。俺がいなくなった『勇者ライヴ』は、モンスターにボコボコにされる無様な姿を全世界に配信し、大炎上&ランキング転落。  一方、俺が田舎で「畑仕事(に見せかけたダンジョン開拓)」を定点カメラで垂れ流し始めたところ――  「え、この人、素手でドラゴン撫でてない?」「重力操作で災害級モンスターを手玉に取ってるw」「このおっさん、実は世界最強じゃね?」とバズりまくり、俺は無自覚なまま世界一の配信者へと成り上がっていく。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。