キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

文字の大きさ
61 / 120

第61話 優しいタントンおじさん

しおりを挟む
「君、お腹が空いてるんだってね? おじさんが一杯思う存分食べさせて上げるよ」



 ディーノは肩を叩かれた衝撃と掛けられた声に驚き、素早く声の方へ首を向けた。

 其処には張り付いた様な満面の笑みを浮かべてディーノを見下ろしている、大柄で熊の様な体型をした男が立っていた。



「おじさん、誰?」



 ディーノは突如現われたニヤニヤとした目で自分を見下ろしてくる大男に不信感を覚え、一歩後ろに後退る。

 すると大男はその後退った一歩の二倍はある大きな一歩で距離を詰めてきた。



「おっと、まだ名乗ってなかったね。私はタントン、この街で小さな会社を経営しているしがない商人だよ。君の名前は??」



「僕は、ディーノ」



 タントンと名乗る男はニヤニヤと過剰なまでの笑顔を作り、やたらと大きな動作と声で演劇でも行っているかの様に自己紹介をした。

 明らかに怪しい不審者であるが、ディーノは素直に名前を教えてしまう。



「ディーノか、まるで春先の日差しのような爽やかで良い名前だ。所でディーノ、君はお腹が空いてるんだってね。どうか私にご飯をご馳走させてくれないか?」



「ご馳走してくれるの?」



 ディーノは心の何処かで怪しいと思いながらも抗いがたい空腹を感じて聞き返す。

 口の中はついさっきまで砂漠のようにカラカラであったにも関わらず、堰を切ったように唾液が溢れ出て食べ物を入れろと泣きせがんでいる。



「ああ幾らでもご馳走してやるぞ? 肉でも魚でも野菜でもパンでもライスでもスープもデザートもつけてやろう。一流のシェフを雇っているから料理の種類だって多種多様、肉をハンバーグにだってステーキにだってローストビーフにも出来るぞ? どちらでも好きな方を選べば良い。おっと! 食べたければハンバーグとステーキを同時に食べたって構わんぞ??」



「本当!?」



 ディーノは目をキラキラしながらタントンの話に食い付いた。

 その途端周囲からクスクスという小さな笑い声が零れ始めるが、食欲に身体の全てを支配されているディーノの耳には届かない。

 まるで餌を目の前に置かれた飼い犬の様にディーノは息を荒くして男に縋り付いた。



「ああ本当だ、私に付いて来て好きなだけ食べれば良い。お友達も一杯いるからきっと楽しいぞ~」



 タントンは目が線になる程の笑顔になって、その僅かな隙間からギラギラした光を発しながらディーノを見る。

 その時、ディーノがふと疑問に思った事を口走った。



「でも、なんで他人で面識もない僕にご馳走してくれるの?」



「あ?」



 その言葉がディーノから発された瞬間、露骨にタントンの口端が下がって低くドスが効いた声が漏れ出る。

 そして数秒間考える様にタントンは黙り、その後再び陽気で高い声になって返答を返した。

 しかしその声は少し演技に疲れたのかトーンが小さくなっている。



「其れは困っている人間が居たら、特にその人間が幼い子供だったら助けて上げるのが人の道って奴だろ? 君は子供でお腹が空いている、其れだけでご飯をご馳走するには充分過ぎる理由さ。気にする事は無い」



「そう、なの?」



 ディーノの奥底で息を顰めている理性が全力で警報を発するが、一刻も早くカロリーを摂取しろと叫ぶ本能の声に埋もれてしまう。



「ああ、そうさ。所でディーノ、君はジュースは好きかい?」



「うん、大好きだよ」



「そうかそうか…其れは良かった。大変素晴らしい事だ、君は良い子だね」



 唯ジュースが好きだと答えただけで褒められた事に違和感を覚え、小首を傾げたディーノを尻目にタントンは懐を探り一本の銀色の水筒を取り出しす。

 その瞬間周囲の零れ笑いが勢いを増し、所々から「愉快ですな」「ええ、愉快ですわね」という呟きが聞こえた。

 タントンは張り付いた笑顔のままその水筒を数度振った。

 しかしその瞬間彼の顔色が一変し、顔の笑顔を消える。



「チッ、切れてやがったのかよ……」



 ディーノに背中を向けてフタを開け中を覗き込んだタントンは、中に殆ど液体が入っていない事を確認して毒づく。

 周囲からは「え~ッ」という落胆した様な声が零れた。

 タントンはその声がした方向に鬼のような努顔を向けた後、一瞬で笑顔を作り直してディーノに向き直った。



「どうしても君に飲ませて上げたい美味しいジュースがあるんだが、どうやら切らしてたみたいだ。あそこの店で買ってくるから少しの間此処で待っていてくれないかい?」



 タントンはディーノの手を握りながら落ち着いた丁寧な口調で言った。

 真っ直ぐに目尻が垂れ下がった目で見詰められたディーノは、凄まじい強さで両手を握られ、断りがたい圧迫感を感じ首を縦に振る。

 その反応を見たタントンは嬉しそうにディーノの動きを真似て首を振り、ガッシリと掴んでいた両手を解放した。



「よし、じゃあ直ぐ戻って来るから此処で待っていてくれ。直ぐに戻って来るから動くなよ。良いな、絶対に動くなよッ!!」



 少し口調を荒げながらタントンは言った。

 そして再びディーノが首を縦に振ったのを確認すると満足そうに笑顔を深め、先程指差した緑色の外壁をしたカフェに小走りで向かったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...