キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

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第82話 大切な家族の皆へ

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 大切な家族の皆へ。



 身勝手な理由で皆の前から姿を消す事をどうか許して欲しい。



 本当は俺が何処の誰で、何故記憶を失っていて、何があってあの日マルクと出会い、どうして皆の前から居なくなるのかを洗いざらい話したい。

 でも、其れは出来ない。

 話せば必ず皆を危険に晒すから。



 其れでもきっと優しいお前らの事だから、危険な目に遭っても俺と一緒に居たい等と嬉しい事を言ってくれるのだろう。

 でもその気持ちを理解した上で、俺はお前達の前から居なくなる。



 恨んでくれても構わない。其れほどの事をしたと自覚しているし、当然だと思う。

 お前達をどれだけ悲しませ、裏切ったとしても。俺は皆が全員一緒に時を刻み、誰一人欠ける事無く大人になる事の方が大切だと思った。

 今この瞬間笑えなくても、1年後、10年後に皆が笑えている事の方が大切だと思った。



 悲しみは時間が解決する何て野暮な事を言うつもりは無いが、其れは一種の真実だと思う。

 どんなに悲しくても人は成長し、過去を乗り越えていく生き物だ。俺という過去を乗り越えられる位に、お前達が強いと信じている。



 そして俺が与えられる最後のプレゼントを送った、どうか受け取ってくれ。

 どうやって手配したかは言えないが、お前達全員を表社会の寄宿学校に入学出来る様に手配しておいた。

 其処は暖房も使い放題で、美味しいご飯が盗みを働かなくても手に入る。

 誰も冬を越えられず死ななくて済む、全員が教育を受けてこんな貧しい暮らしを脱出できるんだ。

 どうか幸せに成ってくれ……



 もう紙の残りが少ない、書きたい事は幾らでも湧いてくるのに此れで最後だ。

 皆と一緒に居られて幸せだった。皆を残して一人俺は別の場所へ行くけど、其れは決して皆と一緒に居たく無いって訳じゃない。

 大好きだ、この8年間は苦しい事も一杯あったけど最高に楽しくて幸福だった。

 そして最後に、本当に最後にお願いさせてくれ。

 烏滸がましいかもしれないが、俺の事をずっと愛していて欲しい。

 10年後も、20年後も、ずっとずっと……

 俺もお前達を愛し続ける、もう顔を見て直接は言えないけど本当にお前達は俺の全てだった。

 大好きだ。



◇ ◇ ◇



「なんだよ、これッ……俺達の為にアイツは自分の身を売ったって事かよ!!」



 手渡された手紙を読み、数秒の沈黙の後マルクが叫んだ。

 結局この手紙を読んでも彼が知りたかった事は何一つ分からなかった、何故自分達の前から消えるのか、自分達と出会う前に何があったのか、その過去とこのマフィア達に何の関係があるのか、全く納得出来ない。



 そして彼には、どうしても自分達全員が冬を越えられる様にマフィアと取引をしたとしか思えなかった。



「何か勘違いしている用ですが、我々とディーノ様が共に行動しているのはあくまで彼自身の意志です。我々から何か強要した事実はありません」



「其れも含めてディーノの口から聞く。あいつに会わせてくれ、もう暴れる気も奪い返そうって気も無い、ただディーノ自身の口から真実が聞きたいんだ」



 マルクは依然としてディーノとの面会を求めた。

 手紙だけでは分からない事が多過ぎる、其れに加えてこの手紙の内容を見るにディーノが自分達の元から離れたがっているとは思えない。

 こんな手紙だけ貰って、そうですかと受け入れられる訳が無いのだ。



 しかし、男はゆっくりと力強く首を横に振った。



「いいえ、駄目です。貴方達にはその手紙に書いてある通り、明日には表社会の寄宿学校に向けて出発して貰います。拒否権はありません」



「は? ふざけるな、こんな状況で行ける訳ねえだろ!! 最低でも俺だけは残るぞッ」



 余りにも唐突な言い草にマルクは怒りを露わにする。

 自分達だってこの場所に愛着があり、突然移住しろと言われても素直に従う奴なんて一人もいない。確実に一週間は説得に掛るだろう。

 そしてマルク自身や年長者達であれば個人でも何とか生きていける、

 最低でもマルクは全員揃わない限りこの場所を後にする気は無い。



「はぁ……できれば弱い者虐めの様で言いたくは無いのですが。皆さんはディーノ様が我々の手中にあるという事をお忘れですか? そして、皆さんの一挙手一投足に彼の命運が掛っているという事に未だ気付いていない」



 その場の全員が口を開いたまま固まった。

 この男達は恐らく自分達を利用してディーノを脅し、そして今度はディーノを利用して自分達を脅し始めたのだ。

 人間性を疑う、薄汚い大人達の所業に怒りが込み上げてくる。



「てめえ……ディーノに何かしたら殺すぞッ」



「其れは貴方達次第です。ディーノ様と共に痛い目を見た貴方なら分かると思いますが、今この瞬間この場の全員が私に襲い掛かったとしても10秒で制圧できます。そして当然、私の正当防衛で死人が出ます。そしてその責任を取って、リーダーであるディーノ様が死にます」



 男は腰に下げた剣に手を掛け、其れから切れ長の目で奥の空間から不安そうな目で覗いている幼い子供達を見た。

 マルクはその視線の意味に気付いて頭の中が真っ赤に染まったが、身体をピクリとも動かす事が出来ない。

 彼自身が身をもって体験したから分かる、脅しでも何でも無く事実を述べているだけだという事を。抵抗すれば確実に皆殺しに遭う。

 加えてディーノが人質に取られてしまっては、本当に何も出来ない。



「クソ……ッ! 地獄に墜ちろ、屑野党ッ!!」



「言われずともそのつもりですよ。では、明日の正午に業者を迎えに寄こしますので、其れまでに準備を終えて幸せな表社会の生活を楽しんで下さい。一人でもその時に欠けていれば、ディーノ様に責任を取って頂きます。では、私はこれで失礼します」



 マルクが発した怨嗟と殺意に満ちた言葉を軽くあしらい、男は地下空間を後にした。

 その瞬間悲しみに咽ぶ声と壁や物に辺り散らかす音が響き、薄暗い地下空間は小さな地獄絵図に変貌する。

 しかし幾ら泣いてもどうしようも無い、、敵に回した相手が余りにも強大すぎた。

 結局その夜は仲間達全員で寄り集まって涙を流し、翌日は抵抗する事もできず全員で少ない荷物を背負い住み慣れた街を後にしたのだった。

 
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