キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

文字の大きさ
82 / 120

第83話 力を手に入れる

しおりを挟む
「気持ちの分別は付いたか?」



「付かねえよ、胸の奥がムカムカしてる。でももうこの話題は出さねえから安心しろよッ」



 マルク達が住み慣れた地下空間を後にしたのと同じ時刻、ディーノとアンベルトは薄暗く足音が反響する階段を歩いていた。どうやら地下に向かっているようだ。



 驚く程静かな建物。

 仲間達に送る手紙を手渡した時に聞いたのだが、此処は国中にあるレヴィアスファミリーが保有している隠れ家の一つらしい。

 アンベルト達も首に賞金を掛けられ命を狙われており、廃墟の様なこの建物で息を潜めながら潜伏しているそうだ。



「そうか、では此れからの話をしよう。今日から修業開始だ、先ずは戦闘訓練を行ってもらう」



「戦闘訓練? アンタが銃の撃ち方でも教えてくれるってのか??」



「いや、教わるのは銃の撃ち方でもなければ、私が教える訳でも無い。もっと強力な戦闘技術をある男に教えて貰う。一先ず自分の目で見てみろッ」



 数分間歩いた二人は階段を下り終えて、重い防火扉のような扉の前につきアンベルトがその取っ手に手を掛ける。

 そして勢いよくその扉を開けると、その先には軽く500m四方はある巨大な地下空間が広がっていた。床は全てコンクリートで、何本か地上を支える支柱が立っている。



「凄えッ、何だよこれ?」



「訓練場だ、則を利用して思い切り戦う為のな。此れでも狭い位だ」



 今まで見たことが無い巨大空間に度肝を抜かれるディーノとは対照的に、アンベルトは見慣れている様で表情を一切変えずに足を踏み入れていく。

 しかしディーノに疑問が浮かんだ。此れで狭いとはどういう事なのだろうか?



「此れで狭いのかよ? 一体どんな修業をするつもりだよ」



「直に分かる。おいゴンザレスッ!! ディーノを連れてきたッ修業を付けろォッ!!」



 途轍もなく巨大な空間全てに響き渡る程の大声をアンベルトが発すると、空間の奥から凄まじい速度で人影が迫ってくる。

 始めは遠すぎて人相も体格も把握出来なかったが、近づいてきて相手が自分の二倍以上の肩幅を誇っている事に気が付いた時漸く誰だか分かった。

 此処で意識を取り戻したとき、息が掛る程の至近距離で自分を凝視していた大男である。



 その大男は豆粒大にしか見えない距離から弾丸の様に走ってきて、ものの十秒程度でディーノの前に姿を現した。

 アンベルトに呼ばれた大男、ゴンザレスは足の裏から煙が出しながらブレーキを掛けてディーノの前に停止し、満面の笑みで手を伸ばして来た。



「やあディーノ、この前は脅かせちゃって悪かったね。僕はゴンザレス、今日は僕が君に修業を付けるよ。一緒に強く成っていこうね!!」



「あッ、ああ!! 宜しく!!」



 ド派手な登場には一瞬ビビったが、その声を聞き表情を見たディーノは直ぐに相手が良い奴であると気が付いた。

 数日前に会った時と同じく、僅かな悪意も感じさせない男である。

 ディーノは迷い無くその手を掴み返す。

 過ごした時間はまだ数秒だが、既に二人の間には謎の友情が出現していた。



 そんな二人を見て居心地が悪そうにしていたアンベルトが痺れを切らした様に口を開く。



「男同士で見詰め合うな、気色悪い。さっさと修業だッ我々に残されいる時間は有限なんだぞ!!」



「了解ですッ!! ディーノ、ちょっと準備するから付いて来てッ」



 アンベルトの声を聞いたゴンザレスは慌てて手を離し、一目散に地下空間の中央を目掛けて走り抜けて行った。

 当然の様にダダダダダダという衝突音を響かせる全力ダッシュ。

 全力以外のギアを持ち合わせていない様な男である。



 そしてディーノが数秒遅れてその背中を追おうとし、アンベルトに話掛ける。



「俺の修業は、あのゴンザレスって奴が言ったメニューを熟せば良いって事か?」



「ああ、その通りだ」



 アンベルトは薄い笑みを浮かべながら頷いた。



「あのゴンザレスは我々マフィアには珍しく人並みの、いやッ常人以上の優しさと思いやりを持った非常に素直な男だ。きっとお前に最適なメニューを提供してくれる筈だッ」



「なッ、何でお前笑ってんだよ……」



 話している最中でアンベルトは急に耐えられなく成った様に笑みを深め、気味の悪い笑顔を作ってゴンザレスの説明をした。

 ディーノはその表情に若干の不安を覚える。

 しかしディーノの不安を解消する事無くアンベルトは再び無表情に戻り、振り返って元来た扉へ向かい歩き始めた。



「とにかくお前はあの男の指示に従っていれば良い。終わったら勝手に汗を流し、着替えて自室に戻れ……修業を切り抜けられたらの話だがな」



 最後にそう言い残してアンベルトは扉の向こうに消える。

 ディーノはその含みのある言葉に違和感を覚えて頭を傾げたが、とにかく自分が今すべき事は明確に成ったのでゴンザレスの背を追った。

 そして空間の中央に到達すると、何も無い場所でゴンザレスが巨大な身体を丸めてタイマーを弄っている。

 その絶妙な不格好さは非常にコミカルに映った。



「ゴンちゃん、タイマー弄って何すんの?」



「ん? ああ、このタイマーを五分でセットするから音が鳴るまで殴り合うんだよ」



 ディーノは背後からゴンザレスのグローブの様に巨大な手に包まれたタイマーを覗き込む。

 そしてゴンザレスは、突然の『ゴンちゃん』呼びにも一切気分を害した様子を見せず、満面の笑みで一切オブラートに包まない修業内容を発表した。

 その殴り合うという言葉を平然と言ってのける姿に、ディーノも流石に顔を引き吊らせる。



「そ、そうなんだ……」



「うん、そうだよ~……よしッ! 準備完了だ!! 早速やろうかッ!!」



 タイマーのセットを完了させたゴンザレスは少し離れた所にタイマーを置き、笑顔で振り返って巨大な拳を作った。

 どうやらゴンザレスは殺る気まんまんの様だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

処理中です...