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第84話 スポーツじゃなく殺し合い
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「ご、ゴンチャン……素手でやんのか? こういうのって普通、グローブを付けてやるんじゃ??」
ディーノはニコニコ笑顔で岩のような拳を握り、早く殴り掛かりたくて我慢できないといった様子のゴンザレスに引きつった笑顔を向ける。
当然の反応だ、素手とは人間が思っている以上に殺傷能力を秘めた代物なのだ。
急所に命中すれば簡単に一生残るダメージを負わせる事が出来るし、連続で命中させれば命を奪う事だって可能。
加えて本気で殴り合えば直ぐに拳が砕けてしまうだろう。
「何を言っているんだ? ……そうか、ディーノはスポーツと勘違いしているな?? 此れは殺し合いの練習なんだから、実際に殺せる武器でやらないと練習に成らないだろ~」
「え? つまり、今から本気で殺し合うって事か??」
「ああその通り! 流石にトドメは刺さないけど、死ぬ寸前までは行って貰うよ。肘も膝も頭突きも目潰しも金的も、何なら武器を仕込んでも良いよ! 勝利の条件は完全に意識を奪う事、そしてディーノは5分間意識を保っても勝ち。ダウンしただけじゃ負けとは認められないから気を抜かない様にね。僕は迷わず馬乗りになってパウンドパンチを入れに行くからッ」
ゴンザレスは非常に楽しそうに言った。
冗談抜きに危険過ぎるルールである、いやッそもそもルール自体存在していない。
マフィアから修行を付けられるのでディーノも覚悟はしていたが、まさか此処まで危険な修業をするとは思っても見なかった。
そして平然とそのルールを言ってのける姿から、このゴンザレスという男も常人では無いと痛感する。目の前に立っているのは紛うこと無きマフィアであった。
しかし、ディーノは自分自身の心配を全くしていない。
寧ろ心配しているのがちゃんと手加減できるか如何かという事である。
「ちょっと心配だな。俺この練習初めてだからさ、ゴンチャンに大怪我させちゃわないかな?」
その言葉を聞いた瞬間、ゴンザレスの身体から血の匂いが吹き出し始める。
「驚いたな、自分じゃなく僕の心配をしてくれるのか。自信有るの?」
「ああ、俺は8年間もストリートチルドレンとしてこの拳一つで生き延びてきたからな。銃を持ってる相手を拳一本で倒した事もある、場数が違うと思うぜ?」
「銃か……それは凄いッ」
そう言ってゴンザレスはタイマーに向かい、10秒後に5分のカウントがスタートするよう設定した。
そして拳を凄まじい速度でかち合わせ合いながら振り向き、舌舐めずりをしながら獣の如き笑みを覗かせた。
今回の笑顔は最初に見せてくれた物とは全くの別物、目から殺意の炎が吹き出ているのだ。
ディーノには直ぐに分かった、人を殺した事がある人間だけが作れる表情であると。
「じゃあもしも僕に勝てたらこの修業は終了だ、次はもっとレベルの高い修業が待ってる。急いでるんだろ? さっさと僕を倒して次のステップに進んじゃいなよッ」
「ああ、そうさせて貰う。恨むなよゴンちゃん!!」
その笑顔を向けられ、ディーノも同じく殺意の炎が吹き出る瞳で笑い返し、拳を打ち付けた。
ディーノも同じ地獄にしか行けない人種である。
この何でも有りなルールこそディーノが最も得意とするストリートファイトの土俵であり、負ける事は先ず無いと思える環境であった。
既に修羅場は幾つも超えている、今更殺し合いだと言われてもビビる事は無い。
お互いに腹の中で買っている殺意という獣が押さえつけられなくなる寸前、10秒が経過して本気で殺し合う5分間が始まった。
勝負開始の音が響いた瞬間、ゴンザレスはコンクリートを裸足の足で蹴り付けて一気に距離を詰めてくる。
その顔は闘争の狂喜で埋まった笑顔が張り付いたままだ。
そしてディーノは目を見開き、足を止めたまま迫るゴンザレスを待ち受けた。
(フッ、馬鹿みたいに真っ直ぐに突進してきやがって。ストリートファイトのスの字も分かってねえ特攻だなッ)
この時点でディーノは勝利を確信する。
拳が一体どれ程の威力を誇るのかを彼は身をもって知っており、拳を用いた戦闘で一番大切なことを理解していた。
其れは攻撃を喰らわない事。
戦い方を知っている者同士の戦闘では、ほぼ確実にクリティカルヒットを先に出した方が勝利する。
技術を持った人間が放つ素手での一撃は根性程度で堪えられる代物ではない。
頭部に命中すれば能が揺れて立てなくなるし、綺麗に水月に拳が入れば全身が一気に強張って力が入らなく成る。
一度喰らえば巨大な隙が発生し、その隙に次の攻撃が命中して更に巨大な隙が発生する無限ループ。
リアルの殺し合いに10カウントなど存在しない、一度倒れればもう立ち上がれないのだ。
(だから、確実に手堅く行動する。何発も拳を当てて判定勝ちを狙う必要は無い、一発で良いッ一発のクリティカルヒットで勝負が決まる! その為に今は避けに徹するッ)
余程の実力差がない限り我武者羅に放った一発がクリティカルヒットになる事は無い。
致命傷が発生するのは敵の体力が切れたとき、不意打ちに成功した時、そして相手の呼吸や集中の波を読み切りカウンターを合わせた時。
ディーノはこのカウンターの名手であった。
(避けながら相手の癖やリズムを把握して、俺の呼吸とピッタリ一致した瞬間に拳を打ち込むッ!!それで終いだッ!!)
勝利への道筋を脳内に描き出し、ディーノは迫るゴンザレスの拳に意識を全て注ぎ込む。
ゴンザレスが放ったパンチは笑ってしまう程真っ直ぐで体重が乗ったストレート。
とても相手の呼吸を把握しておらず、全く体力を削れてもいない最序盤開幕の一撃とは思えない程全身全霊の一撃。
その表情は渾身の力が籠もっているからか力強く歯を食い縛っていて血管が芋虫の様に隆起している鬼の形相で、流石に一瞬ビビりそうになる。
しかしディーノは闘争本能で恐怖を押さえ込み、冷静に攻撃を回避する為に行動する。
(冷静にクールな頭で対処しよう。先ずは上半身を素早くストレートの軌道から逃し、足を使って側面に回り込む。此れだけ大振りな一撃だ、外せば必ず大きく崩れ……ッ!?)
此処でディーノは漸く自分の身体に起こってる異変に気付き背筋が凍り付く。
ゴンザレスの砲弾の様なパンチが迫ってきているというのに、身体が凍った様に動かないのだった。
ディーノはニコニコ笑顔で岩のような拳を握り、早く殴り掛かりたくて我慢できないといった様子のゴンザレスに引きつった笑顔を向ける。
当然の反応だ、素手とは人間が思っている以上に殺傷能力を秘めた代物なのだ。
急所に命中すれば簡単に一生残るダメージを負わせる事が出来るし、連続で命中させれば命を奪う事だって可能。
加えて本気で殴り合えば直ぐに拳が砕けてしまうだろう。
「何を言っているんだ? ……そうか、ディーノはスポーツと勘違いしているな?? 此れは殺し合いの練習なんだから、実際に殺せる武器でやらないと練習に成らないだろ~」
「え? つまり、今から本気で殺し合うって事か??」
「ああその通り! 流石にトドメは刺さないけど、死ぬ寸前までは行って貰うよ。肘も膝も頭突きも目潰しも金的も、何なら武器を仕込んでも良いよ! 勝利の条件は完全に意識を奪う事、そしてディーノは5分間意識を保っても勝ち。ダウンしただけじゃ負けとは認められないから気を抜かない様にね。僕は迷わず馬乗りになってパウンドパンチを入れに行くからッ」
ゴンザレスは非常に楽しそうに言った。
冗談抜きに危険過ぎるルールである、いやッそもそもルール自体存在していない。
マフィアから修行を付けられるのでディーノも覚悟はしていたが、まさか此処まで危険な修業をするとは思っても見なかった。
そして平然とそのルールを言ってのける姿から、このゴンザレスという男も常人では無いと痛感する。目の前に立っているのは紛うこと無きマフィアであった。
しかし、ディーノは自分自身の心配を全くしていない。
寧ろ心配しているのがちゃんと手加減できるか如何かという事である。
「ちょっと心配だな。俺この練習初めてだからさ、ゴンチャンに大怪我させちゃわないかな?」
その言葉を聞いた瞬間、ゴンザレスの身体から血の匂いが吹き出し始める。
「驚いたな、自分じゃなく僕の心配をしてくれるのか。自信有るの?」
「ああ、俺は8年間もストリートチルドレンとしてこの拳一つで生き延びてきたからな。銃を持ってる相手を拳一本で倒した事もある、場数が違うと思うぜ?」
「銃か……それは凄いッ」
そう言ってゴンザレスはタイマーに向かい、10秒後に5分のカウントがスタートするよう設定した。
そして拳を凄まじい速度でかち合わせ合いながら振り向き、舌舐めずりをしながら獣の如き笑みを覗かせた。
今回の笑顔は最初に見せてくれた物とは全くの別物、目から殺意の炎が吹き出ているのだ。
ディーノには直ぐに分かった、人を殺した事がある人間だけが作れる表情であると。
「じゃあもしも僕に勝てたらこの修業は終了だ、次はもっとレベルの高い修業が待ってる。急いでるんだろ? さっさと僕を倒して次のステップに進んじゃいなよッ」
「ああ、そうさせて貰う。恨むなよゴンちゃん!!」
その笑顔を向けられ、ディーノも同じく殺意の炎が吹き出る瞳で笑い返し、拳を打ち付けた。
ディーノも同じ地獄にしか行けない人種である。
この何でも有りなルールこそディーノが最も得意とするストリートファイトの土俵であり、負ける事は先ず無いと思える環境であった。
既に修羅場は幾つも超えている、今更殺し合いだと言われてもビビる事は無い。
お互いに腹の中で買っている殺意という獣が押さえつけられなくなる寸前、10秒が経過して本気で殺し合う5分間が始まった。
勝負開始の音が響いた瞬間、ゴンザレスはコンクリートを裸足の足で蹴り付けて一気に距離を詰めてくる。
その顔は闘争の狂喜で埋まった笑顔が張り付いたままだ。
そしてディーノは目を見開き、足を止めたまま迫るゴンザレスを待ち受けた。
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この時点でディーノは勝利を確信する。
拳が一体どれ程の威力を誇るのかを彼は身をもって知っており、拳を用いた戦闘で一番大切なことを理解していた。
其れは攻撃を喰らわない事。
戦い方を知っている者同士の戦闘では、ほぼ確実にクリティカルヒットを先に出した方が勝利する。
技術を持った人間が放つ素手での一撃は根性程度で堪えられる代物ではない。
頭部に命中すれば能が揺れて立てなくなるし、綺麗に水月に拳が入れば全身が一気に強張って力が入らなく成る。
一度喰らえば巨大な隙が発生し、その隙に次の攻撃が命中して更に巨大な隙が発生する無限ループ。
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致命傷が発生するのは敵の体力が切れたとき、不意打ちに成功した時、そして相手の呼吸や集中の波を読み切りカウンターを合わせた時。
ディーノはこのカウンターの名手であった。
(避けながら相手の癖やリズムを把握して、俺の呼吸とピッタリ一致した瞬間に拳を打ち込むッ!!それで終いだッ!!)
勝利への道筋を脳内に描き出し、ディーノは迫るゴンザレスの拳に意識を全て注ぎ込む。
ゴンザレスが放ったパンチは笑ってしまう程真っ直ぐで体重が乗ったストレート。
とても相手の呼吸を把握しておらず、全く体力を削れてもいない最序盤開幕の一撃とは思えない程全身全霊の一撃。
その表情は渾身の力が籠もっているからか力強く歯を食い縛っていて血管が芋虫の様に隆起している鬼の形相で、流石に一瞬ビビりそうになる。
しかしディーノは闘争本能で恐怖を押さえ込み、冷静に攻撃を回避する為に行動する。
(冷静にクールな頭で対処しよう。先ずは上半身を素早くストレートの軌道から逃し、足を使って側面に回り込む。此れだけ大振りな一撃だ、外せば必ず大きく崩れ……ッ!?)
此処でディーノは漸く自分の身体に起こってる異変に気付き背筋が凍り付く。
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