キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

文字の大きさ
83 / 120

第84話 スポーツじゃなく殺し合い

しおりを挟む
「ご、ゴンチャン……素手でやんのか? こういうのって普通、グローブを付けてやるんじゃ??」



 ディーノはニコニコ笑顔で岩のような拳を握り、早く殴り掛かりたくて我慢できないといった様子のゴンザレスに引きつった笑顔を向ける。

 当然の反応だ、素手とは人間が思っている以上に殺傷能力を秘めた代物なのだ。

 急所に命中すれば簡単に一生残るダメージを負わせる事が出来るし、連続で命中させれば命を奪う事だって可能。

 加えて本気で殴り合えば直ぐに拳が砕けてしまうだろう。



「何を言っているんだ? ……そうか、ディーノはスポーツと勘違いしているな?? 此れは殺し合いの練習なんだから、実際に殺せる武器でやらないと練習に成らないだろ~」



「え? つまり、今から本気で殺し合うって事か??」



「ああその通り! 流石にトドメは刺さないけど、死ぬ寸前までは行って貰うよ。肘も膝も頭突きも目潰しも金的も、何なら武器を仕込んでも良いよ! 勝利の条件は完全に意識を奪う事、そしてディーノは5分間意識を保っても勝ち。ダウンしただけじゃ負けとは認められないから気を抜かない様にね。僕は迷わず馬乗りになってパウンドパンチを入れに行くからッ」



 ゴンザレスは非常に楽しそうに言った。

 冗談抜きに危険過ぎるルールである、いやッそもそもルール自体存在していない。

 マフィアから修行を付けられるのでディーノも覚悟はしていたが、まさか此処まで危険な修業をするとは思っても見なかった。

 そして平然とそのルールを言ってのける姿から、このゴンザレスという男も常人では無いと痛感する。目の前に立っているのは紛うこと無きマフィアであった。



 しかし、ディーノは自分自身の心配を全くしていない。

 寧ろ心配しているのがちゃんと手加減できるか如何かという事である。



「ちょっと心配だな。俺この練習初めてだからさ、ゴンチャンに大怪我させちゃわないかな?」



 その言葉を聞いた瞬間、ゴンザレスの身体から血の匂いが吹き出し始める。



「驚いたな、自分じゃなく僕の心配をしてくれるのか。自信有るの?」



「ああ、俺は8年間もストリートチルドレンとしてこの拳一つで生き延びてきたからな。銃を持ってる相手を拳一本で倒した事もある、場数が違うと思うぜ?」



「銃か……それは凄いッ」



 そう言ってゴンザレスはタイマーに向かい、10秒後に5分のカウントがスタートするよう設定した。

 そして拳を凄まじい速度でかち合わせ合いながら振り向き、舌舐めずりをしながら獣の如き笑みを覗かせた。

 今回の笑顔は最初に見せてくれた物とは全くの別物、目から殺意の炎が吹き出ているのだ。

 ディーノには直ぐに分かった、人を殺した事がある人間だけが作れる表情であると。



「じゃあもしも僕に勝てたらこの修業は終了だ、次はもっとレベルの高い修業が待ってる。急いでるんだろ? さっさと僕を倒して次のステップに進んじゃいなよッ」



「ああ、そうさせて貰う。恨むなよゴンちゃん!!」



 その笑顔を向けられ、ディーノも同じく殺意の炎が吹き出る瞳で笑い返し、拳を打ち付けた。

 ディーノも同じ地獄にしか行けない人種である。

 この何でも有りなルールこそディーノが最も得意とするストリートファイトの土俵であり、負ける事は先ず無いと思える環境であった。

 既に修羅場は幾つも超えている、今更殺し合いだと言われてもビビる事は無い。



 お互いに腹の中で買っている殺意という獣が押さえつけられなくなる寸前、10秒が経過して本気で殺し合う5分間が始まった。

 勝負開始の音が響いた瞬間、ゴンザレスはコンクリートを裸足の足で蹴り付けて一気に距離を詰めてくる。

 その顔は闘争の狂喜で埋まった笑顔が張り付いたままだ。



 そしてディーノは目を見開き、足を止めたまま迫るゴンザレスを待ち受けた。



(フッ、馬鹿みたいに真っ直ぐに突進してきやがって。ストリートファイトのスの字も分かってねえ特攻だなッ)



 この時点でディーノは勝利を確信する。

 拳が一体どれ程の威力を誇るのかを彼は身をもって知っており、拳を用いた戦闘で一番大切なことを理解していた。

 其れは攻撃を喰らわない事。

 戦い方を知っている者同士の戦闘では、ほぼ確実にクリティカルヒットを先に出した方が勝利する。

 技術を持った人間が放つ素手での一撃は根性程度で堪えられる代物ではない。

 頭部に命中すれば能が揺れて立てなくなるし、綺麗に水月に拳が入れば全身が一気に強張って力が入らなく成る。

 一度喰らえば巨大な隙が発生し、その隙に次の攻撃が命中して更に巨大な隙が発生する無限ループ。

 リアルの殺し合いに10カウントなど存在しない、一度倒れればもう立ち上がれないのだ。



(だから、確実に手堅く行動する。何発も拳を当てて判定勝ちを狙う必要は無い、一発で良いッ一発のクリティカルヒットで勝負が決まる! その為に今は避けに徹するッ)



 余程の実力差がない限り我武者羅に放った一発がクリティカルヒットになる事は無い。

 致命傷が発生するのは敵の体力が切れたとき、不意打ちに成功した時、そして相手の呼吸や集中の波を読み切りカウンターを合わせた時。

 ディーノはこのカウンターの名手であった。



(避けながら相手の癖やリズムを把握して、俺の呼吸とピッタリ一致した瞬間に拳を打ち込むッ!!それで終いだッ!!)



 勝利への道筋を脳内に描き出し、ディーノは迫るゴンザレスの拳に意識を全て注ぎ込む。

 ゴンザレスが放ったパンチは笑ってしまう程真っ直ぐで体重が乗ったストレート。

 とても相手の呼吸を把握しておらず、全く体力を削れてもいない最序盤開幕の一撃とは思えない程全身全霊の一撃。

 その表情は渾身の力が籠もっているからか力強く歯を食い縛っていて血管が芋虫の様に隆起している鬼の形相で、流石に一瞬ビビりそうになる。

 しかしディーノは闘争本能で恐怖を押さえ込み、冷静に攻撃を回避する為に行動する。



(冷静にクールな頭で対処しよう。先ずは上半身を素早くストレートの軌道から逃し、足を使って側面に回り込む。此れだけ大振りな一撃だ、外せば必ず大きく崩れ……ッ!?)



 此処でディーノは漸く自分の身体に起こってる異変に気付き背筋が凍り付く。

 ゴンザレスの砲弾の様なパンチが迫ってきているというのに、身体が凍った様に動かないのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...