キング・オブ・アウト ~半分が裏社会に呑み込まれた世界で法則の力『則』と法則のを超えた力『則獣』を駆使してマフィアの頂点を目指す!!

NEOki

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第110話 技が体を凌駕する

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「ガァ……ッア。ハグッ……」



 五度も則で殺人的な威力を纏った膝蹴りを叩き込まれ、流石のゴンザレスも白目を剥き泡を吹きながら気絶した。

 腹部は内出血で真紫に変色し、内臓に深刻な損傷を受けたことを暗示している。

 アンベルトの腕を犠牲にして膝蹴りを叩き込むという、正に肉を切らせて骨を断つ的な戦法に嵌まった事が敗因である。

 此処は身を置いてきた環境の差であり、強敵と幾度も渡り合った技術の差であった。



「フッ……」



 一瞬危険を感じた相手ではあったが、終わってみれば圧倒的幕切れで笑みが零れる。

 確実にパワーでは負けている相手であったが、見事に技が体を凌駕するという証明を果たした。

 白目を剥いて涎を垂らす姿を見て相手の無力化を確認したアンベルトは、固定していた腕を解きゴンザレスの身体を解放する。

 そうすると彼の身体は重力に従って力なく背後に倒れて行った。



 そしてアンベルトは興味を失って背後を向き、生死不明の大男を残して立ち去ろうとする。

 しかしズズッズズズッ……という何かをコンクリートの地面で引き摺るような音を聞き、注意を引かれたアンベルトはゆっくりと振り向た。



「グルルル……ガアッ、アァァァァァッ」



 振り返ったアンベルトが目にしたのは、とてもこの世の物とは思えない怪物であった。

 先程膝蹴りの五連撃によって意識を完全に刈り取った筈のゴンザレスが白目を剥き、涎を垂らしたまま起き上がろうとしているのである。

 その姿からは全く人間的な部分が感じ取れなかった、感じるのは獣の様な凶暴さだけ。



「何だ、このッ怪物は……!?」



 その光景には今まで幾つもの地獄が現世に現われた様な戦場を経験したアンベルトであっても息を呑む程だった。とても人間が狙って出来る表情では無い。

 恐怖には耐性があったが流石に衝撃で身体が固まり、その怪物が立ち上がるのを傍観した。



 そして怪物、ゴンザレスは立ち上がって拳を握る。

 確実に意識は断ち切られている筈である、しかしこの怪物はその状態で本能を頼りに起き上がり臨戦態勢となったのだ。

 その姿はおぞましくもあり、何故か神聖さも感じさせた。



「鬼神ってのがこの世に実在するのなら、其れはきっとお前と瓜二つ何だろうな……」



 意識を失い人間性を失ったとしても拳を作り戦いを続けようとする姿、其れは正に闘争化身、武の結晶であった。

 戦い以外は何も知らず、戦う為にだけ生まれてきた様な男である。

 その有り余る闘争本能は肉体に宿ったモノか、其れとも魂の根幹に刻まれたモノか……



 そしてアンベルトが凄まじい闘志に圧倒されていると、三度ゴンザレスが地面を蹴り付けて距離を詰めてくる。

 しかし今回も油断して無策に待ち構える程彼は愚かでは無い。だが今までと大きく変わる訳でも無い。

 アンベルトは敢えて両腕に全力で則を纏い、クロスさせて待ち受けた。



(向こうの外見が多少変化したからってコッチまで手を変える必要はねえ、確実に勝てる手があるのならその手を使い続けるまでだ)



 アンベルトの作戦は先程と変わらない。

 迫る敵の攻撃を確実に受け止め、今度は物理的に身体が動かなくなるまで徹底的に破壊するつもりであった。

 迫るゴンザレスの突進は先程と全く変わらず、それどころかより無骨で単純になっている。

 幾ら怪物染みたパワーを持っていたとしても、攻撃を完璧に先読みされては全てが無意味となるだろう。



「グルオオォーッ!!」



 耳を麻痺させる程の雄叫びを上げて、拳を振り上げた小山の様な巨人が迫ってきた。

 しかし勝利を確信していたアンベルトは一切怯えることは無く、それどころか全身の力を抜いて非常にリラックスした状態で待ち受ける。

 そして先程と一切変わらないハンマーを振り下ろす様な攻撃を、これまた一切変わらない両腕をクロスさせた防御で受け止めた。



 ズンッという若干響く重低音が発止し、今回は完全に両腕にエネルギーを纏わせて防御していたにも関わらず、三度腕を粉砕された。

 だがその程度は予想の範囲内の様でアンベルトは苦笑いを浮かべるのみ。

 しかし数秒後、その苦笑いすら失う衝撃の事実に直面する事となった。



(かッ……身体が、動かない!?)



 アンベルトは拳を受け止めた状態のまま動けない自分の身体に驚愕する。

 隕石の様なゴンザレスの一撃はアンベルトが腕に纏わせていたエネルギーで幾らか相殺されたが、其れでも貫通した衝撃は背骨を通じて全身へと拡散した。

 その結果全身の筋肉が一時的に麻痺を起こし、ピクリとも動かなく成ったのだ。



「へ、へへえッ……」



 ゴンザレスは気絶状態であっても獲物の脳が発するパニック信号を感知したのか笑顔を作り、其れから立ち尽くす唯のサンドバッグと化したアンベルトの横腹に蹴りを叩き込んだ。

 パキパキッという命にヒビが入る音が耳に届く。



「フグゥ……ッ!?」



 身体の側面から侵入して体内を無茶苦茶に破壊して回るエネルギーに苦悶の声を上げ、アンベルトはまるで嵐に弄ばれる小枝の様に吹飛ばされた。

 10メートル近くは吹飛ばされ、近くの廃墟に叩き付けられて粉塵が舞った。



「……ウッガア!!」



 アンベルトの姿は壁が粉砕して発生した土煙によって覆い隠されたが、ゴンザレスは雀の涙ほどの躊躇も見せず弾丸の様に煙幕の中へ飛び込んだ。

 そして恐らく敵が意識を失って寝転んでいるであろう場所に思い切り拳を振り下ろす。

 だがその時、煙の中から腹の奥底まで響く声が聞こえた。



「『プレディオーネ』」



 その言葉が聞こえてからコンマ数秒後、ゴンザレスの拳は何か途轍もなく硬い物体に命中する。

 余りの堅さに裸で叩き付けられたゴンザレスの拳は砕けて響くような鈍い痛みが走り、口からは呻き声零れた。



 数秒後、煙幕が大気の流れによって消えてその中から怪物が現われる。

 純白で神聖さの結晶の様な鎧を醜さの化身の様な生き物が纏ったアンベルトの則獣『プレディオーネ』は、ゴンザレスの拳を頭部に直撃した状態で受け止めていた。

 分厚いコンクリートをガラスの様に砕く拳を楽々受け止めるとは、恐ろしい防御力である。



 ゴンザレスは初めて見た異形の怪物と、直撃すれば確殺が約束されていると信じていた拳を防がれた衝撃で固まる。

 当然アンベルトがその隙を逃す訳が無く、則獣の裏からヌッと飛び出した腕がゴンザレスの胴体に触れた。



「お返し、いやッ倍返しだ」



 そう抑揚の無い声が響くと、ゴンザレスの肉体は凄まじい速度で背後に弾き飛ばされた。

 慌てて両足を地面に押し当てて速度を落とそうとするが、両足によって地面は削れるばかりで僅かな減速すら発生しない。

 何かの衝撃で吹飛ばされているというよりも、彼の身体が望んで背後に進んでいる様な感覚だ。

 そのまま電車道の様に二本のブレーキ痕が真っ直ぐ走り、ゴンザレスの身体はアンベルトとは正反対の廃墟へ叩き込まれた。



 数秒の時間差をおいて崩壊し、あの大男を呑み込みながら崩壊していく廃墟を見ながらアンベルトは瓦礫の外へと歩み出た。

 あの崩壊に巻き込まれれば常人なら確実に圧死でお陀仏だが、決して警戒は緩めない。

 この数分間のやり取りであの男を型に嵌めて考えるのがどれ程リスキーな行動なのか痛感していたのだ。

 そして予想通り、ゴンザレスは生きて瓦礫の山から這い出てきた。
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