イジメられっ子は悪役令嬢( ; ; )イジメっ子はヒロイン∑(゚Д゚)じゃあ仕方がないっ!性格が悪くても(⌒▽⌒)

音無砂月

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Ⅸ.ヒーローは遅れてやって来る

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 ここ最近、いろいろとやりにくい。
 周りからは憐れみの目で見られることも多くなった。
 前世のことをよく思い出す。

 東堂光星に虐められていた時
 周りは今の彼らと同じように私を憐れんだ目で見ていた。
 でも、視線を向けるとみんな私から逸らした。
 誰も関わりたくはないのだ。
 誰も代わりになりたくはないのだ。
 仕方がないことだ。
 だって人間はいつだって自分が一番なんだから。

 「あらぁ~、大丈夫?レイラ」

 私は全身びしょ濡れだった。
 メアリー・ブロウがいつの間にかその豊満な胸で取り込んでいた貴族の子息を使って私の頭から水をかけて来たのだ。

 ジェイコブ・コブラ
 公爵家の次男。問題ばかり起こすろくでなしで家族の中でも厄介者扱いされている。
 カレブ・リキット
 公爵家の三男。女好きで有名だ。

 さすがに立場が分かっている嫡男はこの中にはいないがそれでも伯爵家よりも上の次男やら三男やらをメアリーは味方につけたようだ。
 仮にも王族に嫁がなければいけない身ならば処女でなければいけない。
 はたして、その旨と美貌を使って落とした男達
 メアリーを信奉する姿を見て、メアリーが処女だというのは考えにくい。

 「芸がないのね。
 スープの次は水をかけるなんて」

 「かける?
 何を言っているのかしら。
 あなたは自分から被ったんでしょ。
 私のせいにしないでよ」

 今、あなたの取り巻きが思いっきりかけてきたよね。
 しかも、その手には水に濡れたバケツがあるけど。
 そのバケツの中にあった水を私にかけたんだろ。

 「私、あなたに何かしたかしら?
 別にあなたが殿下とどうなろうが私はどうでもいいし、邪魔をするつもりもないわよ」
 「邪魔をしようがしまいが、私が王妃になることに変わりはないわ。
 それにあなたは絶対に王妃なれないわ。
 だってあなたは悪役令嬢だもの。処刑って未来が決まっているのよ」

 決まってねぇよ。
 ゲームと現実がごちゃ混ぜになりすぎている。

 「妄想も大概にしなさい」
 「おい、お前、口の利き方に気をつけろ」
 「その言葉、そっくりそのままお返ししますわ。
 カレブ・リキット侯爵子息。
 誰に口をきいているのかしら?」
 「っ」
 「まぁ!身分を笠に着るなんて本当に嫌な女ね。
 さすがは悪役令嬢」
 「ご自分が物語のヒロインになった気でいるようですが、メアリー・ブロウ。
 傍から見たらあなたの方が悪役にピッタリですわ」
 「何ですって」
 「お前、いい加減にしろよっ!」

 ジェイコブが手を振り上げた。
 殴られると思った私はさすがに体を強張らせた。

 「いい加減にするのはそっちだ。
 男が女に手を上げるなど、紳士のすることではない」

 「・・・・・デューク」

 私に届くはずだったジェイコブの手はデュークによって止められていた。
 彼はギリギリと男が聞こえてきそうなほど強くジェイコブの手首を掴んでいる。

 「っ」

 ジェイコブは痛みのあまり悲鳴さえ上げられない状態だ。

 「レイラ、ごめん遅くなって。
 もう大丈夫だから」

 そう言ってデュークは空いた手で私を抱き締めてくれる。
 体が震えていたことに今、初めて気づいた私は絶対に大丈夫だという安心感を得た為かじわりと目頭が熱くなった。
 泣き顔を見られたくなくて私はデュークの胸に自分の顔を押し付ける。

 私が泣いていることに気がついたデュークは殺気を更に強め、メアリー始め、その取り巻き達を睨みつけた。

 「ひっ」

 デュークの放つ殺気に脚を竦ませ、情けのない悲鳴を上げている男達をデュークは弱者を狩る獣の目で見つめる。

 まだ掴まれたままのジェイコブの手は血が通わず、青く変色し始めた。
 掴まれた本人は間近でデュークの殺気に当てられ、気を失った。
 デュークはそれを紙屑を屑箱に入れるように投げ捨てた。

 「お前ら、覚悟はできているんだろな」

 低く唸るようなデュークの声に誰もが真っ青になり、騒ぎを聞きつけた野次馬さえも怯えさせていた。

 「私が何をしたって言うのよ」

 自分が狩られる側になったと気づいていないメアリーは怒気を孕んだ目をデュークに向けた。

 「男爵家の人間が公爵家の人間に無礼を働く。
 その意味をお前の両親は教えてくれなかったのか?
 メアリー・ブロウ」
 「私は貴族よ。平民のお前に呼び捨てにされる覚えはないわ」
 「貴族?ここにいることすら奇跡に等しいお前が?」
 「何よ!私は次期王妃なのよ!私にそんな口をきいて良いと思っているの?」

 「メアリー、どうした?」

 いつも肝心な時にはおらず、かれど面倒だと思う時には必ず来る馬鹿王子にデュークも周囲もうんざいりした。
 そしてつかさず「殿下ぁ」と媚びを売るメアリーにも。
 バルタザールはメアリーを愛おしそうに抱き締め、レイラを抱き締めているデュークを睨みつけた。

 「レイラがデュークを使って私をイジメるの」
 「デューク?あの亜人のことか」
 「そうです。
 私に暴力を振るおうとしたのよ」
 「何っ!?」

 バルタザールの目の険しさが増すがデュークには痛くもかゆくもない。
 騎士としてそれなりに賊退治などをしているのでバルタザールが放つ殺気や怒気などは赤ん坊の泣き声と同じなのだ。

 「亜人ということは平民だな」

 貴族の亜人はいない。
 昔、亜人は奴隷として扱われていたし、不当な差別を受けていた。
 今では平民としての身分が与えられているが、貴族同士で利益の為にしか結婚しない貴族の中に亜人はいないのだ。
 だが、恋愛結婚が可能な下級貴族の中には少数だが亜人もいる。

 「平民風情が俺の婚約者に手を出すとは。
 その服を着ているということは騎士だな。
 どこの所属だ?直ぐにクビにしてやる」

 何て傲慢なのだろう。
 王に仕える騎士を殿下とは言え、王の家臣として扱われる身で勝手にクビにするなどできるはずがない。

 「第七騎士団所属のデューク・バルセットです」

 「・・・・第七」

 誰かがポツリと呟いた。

 第七騎士団は騎士団の中でも精鋭ぞろいで、王族の護衛を任されることも多い。
 また騎士団長はこの中から選ばれることも多く、騎士の中では憧れの的とされ、誰もが第七に入る為に努力するのだ。

 「クビにしたいのならどうぞご自由に。
 あなたの我儘に付き合ってくれる大人が周囲に居るとは思えませんが」
 「何だとっ!
 貴様、誰に口をきいているのか分かっているのか?」
 「ええ。自分が何を言っているのか分かってもいないあなたと違って俺は誰に何を言っているのかも、それにより起こる事象も全て分かっています」

 「貴様はクビだ。直ぐにクビにしてやる」

 「それは困るなぁ」

 喚き散らすバルタザールを面白がるような声で言ってきて現れた人物に周りは凍り付いた。
 そこで初めてメアリーの取り巻き達は思い出したのだ。
 レイラ・カーティスが野獣の姪であることに。

 「団長」
 「伯父様」

 「殿下」
 「な、なんだ」
 「事情は分かりませんが騎士をクビにできるのは私か陛下だけです」
 「なら、今すぐこの無礼者をクビにしろ」
 「それはできませんなぁ」
 「何だと!この俺が命じているのだぞ」
 「私に命令することができるのは陛下だけですよ」
 「俺は王子だぞ」
 「そう叫ばんでも知っていますよ。
 王子は王の臣下であって、王ではない」
 「次期王だ」
 「次期、ですね。今は違う」
 「それがどうした」
 「かなり重要な問題じゃな。
 王を廃して今すぐにでも王位につくと言っているようにも取られず。
 お遊びも大概にせなんだ、この先どうなるか分からん」
 「何が言いたい」
 「さてな。
 ああ、そうそう、デュークのことだがな。
 これは私の愛弟子じゃ。そう簡単にクビは出来ん。
 実力もある。今、騎士の中でもっとも騎士団長に近いと言われている男だ」
 「なっ!こんな平民風情が」
 「努力をすれば誰だって手に入れられる地位じゃ。
 騎士団長は身分だけでなれる程、甘い地位ではない」

 ミルトレッドの目に剣呑な光が宿り、さすがにまずいと思ったのかバルタザールは黙り込む。
 バルタザールの腕に抱き着いたままのメアリーは先程から何も言わずに目の前で繰り広げられている光景を睨みつけていた。

 「さて、では行こうか。デューク、レイラ」
 「はい」
 「はい」
 「レイラ、デュークはこれから騎士学生に剣の稽古をつけるんじゃが、見学していかんか」
 「はい、是非!
 デューク、危ない所を助けてくれてありがとう。
 伯父様もありがとうございます」
 「いや、無事で良かった」

 にっこりと微笑まれるとドキリとしてしまう。

 「あんな甘えん坊の小童など一ひねりじゃよグワハハハハハ」

 さっきの殊勝さはどこえやら。
 早速物騒な言葉を言って獣の咆哮のような笑い声があげた。



 私は急ごしらえで用意してもらった服を着替えデュークの見学へ行った。

 騎士学生は目をキラキラしてデュークに相手をしてもらっていた。

 「踏み込みが甘い。
 もっと早く」

 と、何人も相手にしながら汗一つかかず、息も乱さないデュークは純粋に凄いと思うし、格好良いと思う。
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