どうぞお好きに

音無砂月

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「大きくて素敵なお邸ね」
父に言われ私はシャーベットとセルフ殿下に邸を案内している。
シャーベットはセルフ殿下の腕に抱きついた状態で上機嫌だ。
「あら、ここのお部屋は?」
わざと素通りしようとした部屋の前でシャーベットが足を止めた。必然的にセルフ殿下の足も止まる。
「そこは母の部屋です」
「見せてはくださらないの?」
何を言っているのだ。
これにはさすがのダリウスも眉尻をつり上げる。
「人の部屋を見せるわけにはいきませんのでご容赦ください」
「既に亡くなっているのだろう。なら何も問題はないはずだが」
セルフ殿下は私を睨み付けながら言う。
「セルフ。私が悪かったのよ。昔に亡くなったとは言え、大切なお母様だもの。立ち直るには時間がかかるわ。私もそうだったもの。だからお願い、を許してあげて」
無邪気な子供のように悪意に満ちた言葉を彼女は吐く。
二人は気付いていないようだがダリウスの手が剣の柄を握っている。
私はそっとダリウスの手に触れた。
ダリウスは横目で私を見て、言わんとすることが分かったのか小さくため息をついてから剣の柄を放してくれた。
良かった。どうやら落ち着いてくれたようだ。
そんなやり取りを知らないセルフ殿下は全てを台無しにするように言う。
「シャーベットの優しさに感謝するのだな。でなければ不敬罪で処断されていたのだから」
処断?不敬罪?
この男は自分が王籍を外されたことを知らないのだろうか?
彼が我が家の婿養子になるということは必然的にそうなるのが通例だ。
よって我が家から離縁を申し渡されたら彼の場合は平民になるしかない。
基本はそんなことにはならないし、正当な理由なく離縁はできない。
それに離縁は外聞が悪いからあまりされない。たとえ、相手に愛人が居ても。
というか貴族では男女関係なく愛人がいるものだ。
「小僧。俺はミレイユ公爵家に仕えているわけじゃない」
「なっ!?小僧だと!」
自分を全く敬おうとしないダリウスにセルフ殿下は怒りに震えている。
だが傭兵として百戦錬磨の彼が温室育ちのセルフ殿下にの怒りなどそよ風程度にも満たない。
「俺が仕えているのはスカーレットだ。もし彼女に手を出すのなら」
ニヤリと笑ってダリウスは見せるように剣を半分引き抜いた。
「俺は容赦はしない」
「っ」
懸セルフ殿下は少しだけ出したダリウスの殺気に臆した。
対して危ない感じの雰囲気を醸し出すダリウスをシャーベットは恋する乙女のように見ている。
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