4 / 19
4
しおりを挟む
「うふふ。もう、セルフったら」
邸の案内を終え、後は晩餐の時間まで各々好きに過ごしてもらった。
晩餐では、私の前にセルフ殿下とシャーベットが横にひっつく形で座っていた。
食事中は喋らないのがマナー。
だが、目の前の二人は食事中ずっといちゃいちゃとしていた。
食事をお互いに食べさせ合いっこをしてたり、「好き」だの「愛している」だの「可愛い」だの「素敵」だの言い合っている。我が公爵家が雇っている使用人は成人していれば、働く必要のある男爵家や子爵家になるが、年頃の子であれば礼儀作法を学ぶために上級貴族の子も来ている。
その為、目の前で繰り広げられる寸劇に誰もが眉を潜めている。
父はチラチラと何か言いたそうに横目でセルフ殿下達を見ている。だが、相手が王族になるので何も言えずに黙って食事をすることを選択。
私は極力関わり合いになりたくないので見て見ぬふりをする。
さっさと食事を終えて退出した。父も直ぐに私の後に続き、公爵家の人間が退出すると使用人達もそこには誰もいないものとして片づけを始めた。
本来なら食事をしている人間全てが終えてから片づけを始めるものだが、彼女達にはセルフ殿下とシャーベットが見えていないようだ。
私も彼女たちの行動を咎めることはしなかった。
これから先、こんな状況が続くのかと思うと頭が痛い。
「明日は王宮へ行くわ」
食堂を出るとそこには当然、私の護衛であるダリウスが居た。
「今日一日で随分、疲れているな」
苦笑交じりにダリウスが言う。彼の言う通り疲れているせいか苦笑しか出て来ない。
「公爵もまた厄介ごとを引き受けたものだな」
「全くね。お父様が押しに弱いのも、頼まれたら断れない性格だというのも知っているけれど知っていたけれど。まさか娘の一生もそれで決めてしまうとは思わなかったわ」
「お前が『逃げたい』と一言言えば、俺はどこまでもお前を連れて逃げて行ってやる」
本気とも冗談ともとれる言葉。でも、彼なら本当にそれを実現させてしまいそうだ。
「私がそれを言えないって知っているでしょ。領民も、お父様も、この家も何も捨てられないわ。何かを捨てないと得られない自由は、それはもう自由ではないわ」
「そう言えるお前だから俺はお前を選んだんだ」
そっと、ダリウスが壊れ物でも扱うような手つきで私の頬に触れた。
「でも、俺がさっき言ったことだけは覚えておいてくれ。お前が望む全てを抱えて、俺が逃がしてやる」
「その時はあなたも一緒よ。ダリウス」
私の言葉にダリウスは嬉しそうに笑った。
邸の案内を終え、後は晩餐の時間まで各々好きに過ごしてもらった。
晩餐では、私の前にセルフ殿下とシャーベットが横にひっつく形で座っていた。
食事中は喋らないのがマナー。
だが、目の前の二人は食事中ずっといちゃいちゃとしていた。
食事をお互いに食べさせ合いっこをしてたり、「好き」だの「愛している」だの「可愛い」だの「素敵」だの言い合っている。我が公爵家が雇っている使用人は成人していれば、働く必要のある男爵家や子爵家になるが、年頃の子であれば礼儀作法を学ぶために上級貴族の子も来ている。
その為、目の前で繰り広げられる寸劇に誰もが眉を潜めている。
父はチラチラと何か言いたそうに横目でセルフ殿下達を見ている。だが、相手が王族になるので何も言えずに黙って食事をすることを選択。
私は極力関わり合いになりたくないので見て見ぬふりをする。
さっさと食事を終えて退出した。父も直ぐに私の後に続き、公爵家の人間が退出すると使用人達もそこには誰もいないものとして片づけを始めた。
本来なら食事をしている人間全てが終えてから片づけを始めるものだが、彼女達にはセルフ殿下とシャーベットが見えていないようだ。
私も彼女たちの行動を咎めることはしなかった。
これから先、こんな状況が続くのかと思うと頭が痛い。
「明日は王宮へ行くわ」
食堂を出るとそこには当然、私の護衛であるダリウスが居た。
「今日一日で随分、疲れているな」
苦笑交じりにダリウスが言う。彼の言う通り疲れているせいか苦笑しか出て来ない。
「公爵もまた厄介ごとを引き受けたものだな」
「全くね。お父様が押しに弱いのも、頼まれたら断れない性格だというのも知っているけれど知っていたけれど。まさか娘の一生もそれで決めてしまうとは思わなかったわ」
「お前が『逃げたい』と一言言えば、俺はどこまでもお前を連れて逃げて行ってやる」
本気とも冗談ともとれる言葉。でも、彼なら本当にそれを実現させてしまいそうだ。
「私がそれを言えないって知っているでしょ。領民も、お父様も、この家も何も捨てられないわ。何かを捨てないと得られない自由は、それはもう自由ではないわ」
「そう言えるお前だから俺はお前を選んだんだ」
そっと、ダリウスが壊れ物でも扱うような手つきで私の頬に触れた。
「でも、俺がさっき言ったことだけは覚えておいてくれ。お前が望む全てを抱えて、俺が逃がしてやる」
「その時はあなたも一緒よ。ダリウス」
私の言葉にダリウスは嬉しそうに笑った。
103
あなたにおすすめの小説
透明な貴方
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
政略結婚の両親は、私が生まれてから離縁した。
私の名は、マーシャ・フャルム・ククルス。
ククルス公爵家の一人娘。
父ククルス公爵は仕事人間で、殆ど家には帰って来ない。母は既に年下の伯爵と再婚し、伯爵夫人として暮らしているらしい。
複雑な環境で育つマーシャの家庭には、秘密があった。
(カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
愛する妹が理不尽に婚約破棄をされたので、これからお礼をしてこようと思う
柚木ゆず
ファンタジー
※12月23日、本編完結いたしました。明日より、番外編を投稿させていただきます。
大切な妹、マノン。そんな彼女は、俺が公務から戻ると部屋で泣いていた――。
その原因はマノンの婚約者、セガデリズ侯爵家のロビン。ヤツはテースレイル男爵家のイリアに心変わりをしていて、彼女と結婚をするためマノンの罪を捏造。学院で――大勢の前で、イリアへのイジメを理由にして婚約破棄を宣言したらしい。
そうか。あの男は、そんなことをしたんだな。
……俺の大切な人を傷付けた報い、受けてもらうぞ。
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
お言葉ですが今さらです
MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。
次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。
しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。
アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。
失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。
そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。
お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。
内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。
他社サイト様投稿済み。
逆行転生って胎児から!?
章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。
そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。
そう、胎児にまで。
別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。
長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる