どうぞお好きに

音無砂月

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「うふふ。もう、セルフったら」
邸の案内を終え、後は晩餐の時間まで各々好きに過ごしてもらった。
晩餐では、私の前にセルフ殿下とシャーベットが横にひっつく形で座っていた。
食事中は喋らないのがマナー。
だが、目の前の二人は食事中ずっといちゃいちゃとしていた。
食事をお互いに食べさせ合いっこをしてたり、「好き」だの「愛している」だの「可愛い」だの「素敵」だの言い合っている。我が公爵家が雇っている使用人は成人していれば、働く必要のある男爵家や子爵家になるが、年頃の子であれば礼儀作法を学ぶために上級貴族の子も来ている。
その為、目の前で繰り広げられる寸劇に誰もが眉を潜めている。
父はチラチラと何か言いたそうに横目でセルフ殿下達を見ている。だが、相手が王族になるので何も言えずに黙って食事をすることを選択。
私は極力関わり合いになりたくないので見て見ぬふりをする。
さっさと食事を終えて退出した。父も直ぐに私の後に続き、公爵家の人間が退出すると使用人達もそこには誰もいないものとして片づけを始めた。
本来なら食事をしている人間全てが終えてから片づけを始めるものだが、彼女達にはセルフ殿下とシャーベットが見えていないようだ。
私も彼女たちの行動を咎めることはしなかった。
これから先、こんな状況が続くのかと思うと頭が痛い。

「明日は王宮へ行くわ」
食堂を出るとそこには当然、私の護衛であるダリウスが居た。
「今日一日で随分、疲れているな」
苦笑交じりにダリウスが言う。彼の言う通り疲れているせいか苦笑しか出て来ない。
「公爵もまた厄介ごとを引き受けたものだな」
「全くね。お父様が押しに弱いのも、頼まれたら断れない性格だというのも知っているけれど知っていたけれど。まさか娘の一生もそれで決めてしまうとは思わなかったわ」
「お前が『逃げたい』と一言言えば、俺はどこまでもお前を連れて逃げて行ってやる」
本気とも冗談ともとれる言葉。でも、彼なら本当にそれを実現させてしまいそうだ。
「私がそれを言えないって知っているでしょ。領民も、お父様も、この家も何も捨てられないわ。何かを捨てないと得られない自由は、それはもう自由ではないわ」
「そう言えるお前だから俺はお前を選んだんだ」
そっと、ダリウスが壊れ物でも扱うような手つきで私の頬に触れた。
「でも、俺がさっき言ったことだけは覚えておいてくれ。お前が望む全てを抱えて、俺が逃がしてやる」
「その時はあなたも一緒よ。ダリウス」
私の言葉にダリウスは嬉しそうに笑った。
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