悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月

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 私が居る塔は王宮ないからかなり離れて、城門、それも使用人が使う裏門の傍にある。
 裏門には常備、騎士が二人ついてはいるが、安心はできない。
 それに王宮から離れすぎているので王宮で何かあっても異変に気づけず、逃げ遅れることになる。
 私は自国から使用人も騎士も連れてきてない。
 手紙は必ず帝国の人間が中を検分してから出されるので私は何も向こうに知らせる術がない。
 王族でも他人の言うことは信ずるべきではない。
 そのことに気づいても後の祭り。
 私は長い道のりを歩いて(王城内って無駄に広い)王宮の中に入る。
 居城は移されたが王宮内の出入りは禁止されていない。
 バカのいる王宮内に大した用はないけど何もすることがない時間はあるだけ無駄なので私は王宮の中にある図書館を目指していた。
 王宮の廊下を歩いていると中庭から楽しげな声が聞こえた。
 視線を向けるとそこには陛下とシャルロッテ、それに取り巻きだろうか?数人の男達が居た。
 「みな、側近の者達です」
 嗄れた声が聞こえた、視線を向けるといつの間にかそこには床につくぐらい長い髭と髪をしたご老人が立っていた。髭も髪も真っ白で、身に付けている長い赤いローブには銀色の刺繍が施されていた。
 これで杖を持っていたら完璧な魔法使いだなと思った。
 皺まみれの顔で穏やかに笑う老人の目には愁いが宿っていた。
 「お初にお目にかかります。私はマーリン・カタブラと申します」
 「マリア・フォン・オレストです。
 先ほど陛下の周囲にいる彼らは側近だと言っていましたが、それにしては若すぎませんか?」
 私の当然とも言える問にマーリンは苦笑した。
 「陛下が代替わりしてから側近もみな変わりましたから。
 前王に仕えていた者達は全員、王宮を追われるか、自ら出て行くか」
 「あなたは?」
 「私は自ら出て行きました。ただ、少し気になることがありまして」
 「気になること?」
 「はい。彼はあの平民とのことを隠そうとはしていません。知れ渡るのも時間の問題でしょう。
 彼らがどうなるかは興味がありません。全ては行った者が負う責任。
 もし『そんなことは知らないかった』と言うのであればそれは無知だっただけのこと。
 けれど、平民には関係ありません。負うべき責任もありません」
 「・・・・・心にとめておきます」
 マーリンは一礼して去って行った。
 私はまた一人になった。一人になって楽しそうに中庭で笑う二人に視線を向けた。
 私は自分の現状を母国に知らせてはいない。知らせる術がないから。でも、知らせることが現状を知ってもらうための技ではない。
 何も知らせないことも現状を知らせる為の技なのだ。
 そのことを彼らは愚かな彼らは知らない。そして恐らく、先程話したマーリンはそのことに気づいている。
 だから『民だけは』と訴えて来たのだろう。その為だけに自ら退いた王宮へ足を運んだ。
 彼は英傑な人のだろう。
 そんな彼は、彼自身気づいているのだろうか?
 一度もクレバー・レフトを『陛下』とは呼ばなかったことに。
 私は彼からか視線を外し、王宮の長い廊下を歩き始めた。
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