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「申し訳ありません、もう一度言って頂けますか?」
昨日の今日で王妃である私の許可を持たない陛下がシャルロッテを連れてまたしてもやって来た。
「ここはシャルロッテが使う。お前は他に移れ」
ここは帝国建国のおりより、代々王妃となった者が使う宮だ。そこをこのバカはあろうことか王妃ではない、側室にも愛人にもできない女に使わせると言う。
大国オレストの王女を退かしてまで。
「ごめんなさい、王妃様。私は別に王妃様と一緒でも良いってクレバーに言ったんだけど」
「お前は本当に優しいな、シャルロッテ。
だが、その必要はない。この女には既に新しい部屋を用意している。お前が気を遣う必要はない」
頭が痛くなってきた。
優しい?気を遣う?
どこが?
この女は入ってきたときから嬉しそうに、また勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
現王妃が落ちていく様は優越を誘い、さぞかし心地良いものだろう。
ああ、何てくだらない優越だろう。
「さっさと移動しろ。これは王命だ」
私の隣で拳を握りしめ、今にも陛下とシャルロッテに噛みつきそうな侍女が三人居た。
陛下にそんな態度をとればこの三人ともただではすまないだろう。
私は三人を見て首を左右に振った。
三人とも不満そうな顔をしていたがこれでいい。
◇◇◇
私が与えられたの城の外にある古びた塔
いつ崩れてもおかしくはない。ボロボロの塔は中も埃まみれで長らく手入れされていないが一目で分かる。
この塔は幽閉塔。罪を犯した王族が入るか塔だ。
「お前には相応しい塔だろ」
そう言って陛下はシャルロッテと一緒に私を嘲笑った。
はて。一体全体、誰が心優しいのだろう?
私についていた侍女は三人ともシャルロッテつきの侍女となり、私には一人の侍女も、そして塔の前には護衛の騎士もいない。
文字通り、一人だ。
まぁ、塔の前に護衛の騎士をつけられても王妃の宮に居た時のように自ら招きかねないので居たところで意味はないだろう。
私が与えられた部屋はずっと閉め切られていた部屋は嗅いだ事のない独特な匂いがした。
塔なので周囲を石の壁で囲まれており、カーペットすら敷かれておらず、あるのは埃まみれの硬いベッドと窓辺に置かれた椅子と小さな丸テーブル。
後はガタガタの机だ。
隙間風はさすがになさそうだがこれで冬を越すのはなかなか厳しいかもしれない。
大国の元王女。現王妃がこんな所で一人。もう、笑うしかない。
「・・・・・王妃様、お食事です」
私は出来る限り住みやすいようにする為、部屋を換気し、生まれて初めて掃除というものをした。
そうしている間にいつの間にかそんな時間になったのか見知らぬ侍女が食事を運んできた。どうやら食事は一応くれるらしい。と、思い視線を向けたが暗く、堅い表情をした侍女の手にある盆に乗せられたのはカピカピのパンとコップ一杯の水のみだ。
「はっ」
思わず失笑してしまった。鼻から空気が抜けるような乾いた音を出してしまい、その音でビクリと見知らぬ侍女は体を震わせた。
「素敵な食事ね」
「も、申し訳ありません、王妃様。ですがこちらはシャルロッテ様の命令ですして」
「陛下もそれを許可されたの?」
「・・・・・はい」
迷うように視線を動かしてから見知らぬ侍女は正直に答えた。
「そう」
「あ、あの、王妃様」
「あなた見ない顔ね。まぁ、私は三人しか侍女の顔を知らないから仕方がないけど。ここに勤めて長いの?」
「いいえ。一か月ほど前に勤め始めたばかりです」
「そう」
新米侍女を王妃の食事運びにしたのか。本来ならベテランの仕事だ。どんな粗相を仕出かすか分からないから。でも、こんな所に食事を運ぶのだ。粗相など大した問題ではないだろう。
寧ろ今の、この状況こそが大問題だ。
「あ、あの」
「ベッドのシーツを洗いたいんだけど、どうすればいい?」
「お、お預かりします。替えのシーツは直ぐに持って来ますね」
「そう。ありがとう」
「!。い、いいえ」
少し驚いた顔をして侍女は私からシーツを受け取り、退室した。
私はカピカピで硬いパンをコップの水につけ、柔らかくしてから口に運んだ。
以前まで出されていた豪華な食事を口に運んだ時と同様、味はしなかった。なら、何を食べても同じだろうと言う結論に達した。
パン一つしかないので食事は直ぐに終わってしまった。
ここ最近はあまり食欲がなかったのでもう少し何か食べたいとは感じなかった。ただ、夜中にお腹が減りそうだなとは思った。
食事を運んできた侍女が食事の膳を下げに来た時、新しい綺麗なシーツと食堂からかっぱらって来たリンゴを一つくれた。とても優しい侍女だ。
「ありがとう」
「・・・・いいえ。それでは失礼します」
「ええ。良い夢を」
侍女は食事の時にしか来ないだろうから少し早いけど私はその侍女に就寝前の挨拶をした。
侍女は一礼して退室した。
昨日の今日で王妃である私の許可を持たない陛下がシャルロッテを連れてまたしてもやって来た。
「ここはシャルロッテが使う。お前は他に移れ」
ここは帝国建国のおりより、代々王妃となった者が使う宮だ。そこをこのバカはあろうことか王妃ではない、側室にも愛人にもできない女に使わせると言う。
大国オレストの王女を退かしてまで。
「ごめんなさい、王妃様。私は別に王妃様と一緒でも良いってクレバーに言ったんだけど」
「お前は本当に優しいな、シャルロッテ。
だが、その必要はない。この女には既に新しい部屋を用意している。お前が気を遣う必要はない」
頭が痛くなってきた。
優しい?気を遣う?
どこが?
この女は入ってきたときから嬉しそうに、また勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
現王妃が落ちていく様は優越を誘い、さぞかし心地良いものだろう。
ああ、何てくだらない優越だろう。
「さっさと移動しろ。これは王命だ」
私の隣で拳を握りしめ、今にも陛下とシャルロッテに噛みつきそうな侍女が三人居た。
陛下にそんな態度をとればこの三人ともただではすまないだろう。
私は三人を見て首を左右に振った。
三人とも不満そうな顔をしていたがこれでいい。
◇◇◇
私が与えられたの城の外にある古びた塔
いつ崩れてもおかしくはない。ボロボロの塔は中も埃まみれで長らく手入れされていないが一目で分かる。
この塔は幽閉塔。罪を犯した王族が入るか塔だ。
「お前には相応しい塔だろ」
そう言って陛下はシャルロッテと一緒に私を嘲笑った。
はて。一体全体、誰が心優しいのだろう?
私についていた侍女は三人ともシャルロッテつきの侍女となり、私には一人の侍女も、そして塔の前には護衛の騎士もいない。
文字通り、一人だ。
まぁ、塔の前に護衛の騎士をつけられても王妃の宮に居た時のように自ら招きかねないので居たところで意味はないだろう。
私が与えられた部屋はずっと閉め切られていた部屋は嗅いだ事のない独特な匂いがした。
塔なので周囲を石の壁で囲まれており、カーペットすら敷かれておらず、あるのは埃まみれの硬いベッドと窓辺に置かれた椅子と小さな丸テーブル。
後はガタガタの机だ。
隙間風はさすがになさそうだがこれで冬を越すのはなかなか厳しいかもしれない。
大国の元王女。現王妃がこんな所で一人。もう、笑うしかない。
「・・・・・王妃様、お食事です」
私は出来る限り住みやすいようにする為、部屋を換気し、生まれて初めて掃除というものをした。
そうしている間にいつの間にかそんな時間になったのか見知らぬ侍女が食事を運んできた。どうやら食事は一応くれるらしい。と、思い視線を向けたが暗く、堅い表情をした侍女の手にある盆に乗せられたのはカピカピのパンとコップ一杯の水のみだ。
「はっ」
思わず失笑してしまった。鼻から空気が抜けるような乾いた音を出してしまい、その音でビクリと見知らぬ侍女は体を震わせた。
「素敵な食事ね」
「も、申し訳ありません、王妃様。ですがこちらはシャルロッテ様の命令ですして」
「陛下もそれを許可されたの?」
「・・・・・はい」
迷うように視線を動かしてから見知らぬ侍女は正直に答えた。
「そう」
「あ、あの、王妃様」
「あなた見ない顔ね。まぁ、私は三人しか侍女の顔を知らないから仕方がないけど。ここに勤めて長いの?」
「いいえ。一か月ほど前に勤め始めたばかりです」
「そう」
新米侍女を王妃の食事運びにしたのか。本来ならベテランの仕事だ。どんな粗相を仕出かすか分からないから。でも、こんな所に食事を運ぶのだ。粗相など大した問題ではないだろう。
寧ろ今の、この状況こそが大問題だ。
「あ、あの」
「ベッドのシーツを洗いたいんだけど、どうすればいい?」
「お、お預かりします。替えのシーツは直ぐに持って来ますね」
「そう。ありがとう」
「!。い、いいえ」
少し驚いた顔をして侍女は私からシーツを受け取り、退室した。
私はカピカピで硬いパンをコップの水につけ、柔らかくしてから口に運んだ。
以前まで出されていた豪華な食事を口に運んだ時と同様、味はしなかった。なら、何を食べても同じだろうと言う結論に達した。
パン一つしかないので食事は直ぐに終わってしまった。
ここ最近はあまり食欲がなかったのでもう少し何か食べたいとは感じなかった。ただ、夜中にお腹が減りそうだなとは思った。
食事を運んできた侍女が食事の膳を下げに来た時、新しい綺麗なシーツと食堂からかっぱらって来たリンゴを一つくれた。とても優しい侍女だ。
「ありがとう」
「・・・・いいえ。それでは失礼します」
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