悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月

文字の大きさ
4 / 31

4

しおりを挟む
 「申し訳ありません、もう一度言って頂けますか?」
 昨日の今日で王妃である私の許可を持たない陛下がシャルロッテを連れてまたしてもやって来た。
 「ここはシャルロッテが使う。お前は他に移れ」
 ここは帝国建国のおりより、代々王妃となった者が使う宮だ。そこをこのバカはあろうことか王妃ではない、側室にも愛人にもできない女に使わせると言う。
 大国オレストの王女を退かしてまで。
 「ごめんなさい、王妃様。私は別に王妃様と一緒でも良いってクレバーに言ったんだけど」
 「お前は本当に優しいな、シャルロッテ。
 だが、その必要はない。この女には既に新しい部屋を用意している。お前が気を遣う必要はない」
 頭が痛くなってきた。
 優しい?気を遣う?
 どこが?
 この女は入ってきたときから嬉しそうに、また勝ち誇ったような笑みを浮かべていた。
 現王妃が落ちていく様は優越を誘い、さぞかし心地良いものだろう。
 ああ、何てくだらない優越だろう。
 「さっさと移動しろ。これは王命だ」
 私の隣で拳を握りしめ、今にも陛下とシャルロッテに噛みつきそうな侍女が三人居た。
 陛下にそんな態度をとればこの三人ともただではすまないだろう。
 私は三人を見て首を左右に振った。
 三人とも不満そうな顔をしていたがこれでいい。

◇◇◇
 私が与えられたの城の外にある古びた塔
 いつ崩れてもおかしくはない。ボロボロの塔は中も埃まみれで長らく手入れされていないが一目で分かる。
 この塔は幽閉塔。罪を犯した王族が入るか塔だ。
 「お前には相応しい塔だろ」
 そう言って陛下はシャルロッテと一緒に私を嘲笑った。
 はて。一体全体、誰が心優しいのだろう?
 私についていた侍女は三人ともシャルロッテつきの侍女となり、私には一人の侍女も、そして塔の前には護衛の騎士もいない。
 文字通り、一人だ。
 まぁ、塔の前に護衛の騎士をつけられても王妃の宮に居た時のように自ら招きかねないので居たところで意味はないだろう。
  私が与えられた部屋はずっと閉め切られていた部屋は嗅いだ事のない独特な匂いがした。
 塔なので周囲を石の壁で囲まれており、カーペットすら敷かれておらず、あるのは埃まみれの硬いベッドと窓辺に置かれた椅子と小さな丸テーブル。
 後はガタガタの机だ。
 隙間風はさすがになさそうだがこれで冬を越すのはなかなか厳しいかもしれない。
 大国の元王女。現王妃がこんな所で一人。もう、笑うしかない。

 「・・・・・王妃様、お食事です」
 私は出来る限り住みやすいようにする為、部屋を換気し、生まれて初めて掃除というものをした。
 そうしている間にいつの間にかそんな時間になったのか見知らぬ侍女が食事を運んできた。どうやら食事は一応くれるらしい。と、思い視線を向けたが暗く、堅い表情をした侍女の手にある盆に乗せられたのはカピカピのパンとコップ一杯の水のみだ。
 「はっ」
 思わず失笑してしまった。鼻から空気が抜けるような乾いた音を出してしまい、その音でビクリと見知らぬ侍女は体を震わせた。
 「素敵な食事ね」
 「も、申し訳ありません、王妃様。ですがこちらはシャルロッテ様の命令ですして」
 「陛下もそれを許可されたの?」
 「・・・・・はい」
 迷うように視線を動かしてから見知らぬ侍女は正直に答えた。
 「そう」
 「あ、あの、王妃様」
 「あなた見ない顔ね。まぁ、私は三人しか侍女の顔を知らないから仕方がないけど。ここに勤めて長いの?」
 「いいえ。一か月ほど前に勤め始めたばかりです」
 「そう」
 新米侍女を王妃の食事運びにしたのか。本来ならベテランの仕事だ。どんな粗相を仕出かすか分からないから。でも、こんな所に食事を運ぶのだ。粗相など大した問題ではないだろう。
 寧ろ今の、この状況こそが大問題だ。
 「あ、あの」
 「ベッドのシーツを洗いたいんだけど、どうすればいい?」
 「お、お預かりします。替えのシーツは直ぐに持って来ますね」
 「そう。ありがとう」
 「!。い、いいえ」
 少し驚いた顔をして侍女は私からシーツを受け取り、退室した。
 私はカピカピで硬いパンをコップの水につけ、柔らかくしてから口に運んだ。
 以前まで出されていた豪華な食事を口に運んだ時と同様、味はしなかった。なら、何を食べても同じだろうと言う結論に達した。
 パン一つしかないので食事は直ぐに終わってしまった。
 ここ最近はあまり食欲がなかったのでもう少し何か食べたいとは感じなかった。ただ、夜中にお腹が減りそうだなとは思った。
 食事を運んできた侍女が食事の膳を下げに来た時、新しい綺麗なシーツと食堂からかっぱらって来たリンゴを一つくれた。とても優しい侍女だ。
 「ありがとう」
 「・・・・いいえ。それでは失礼します」
 「ええ。良い夢を」
 侍女は食事の時にしか来ないだろうから少し早いけど私はその侍女に就寝前の挨拶をした。
 侍女は一礼して退室した。
しおりを挟む
感想 156

あなたにおすすめの小説

バイトの時間なのでお先に失礼します!~普通科と特進科の相互理解~

スズキアカネ
恋愛
バイト三昧の変わり者な普通科の彼女と、美形・高身長・秀才の三拍子揃った特進科の彼。 何もかもが違う、相容れないはずの彼らの学園生活をハチャメチャに描いた和風青春現代ラブコメ。 ◇◆◇ 作品の転載転用は禁止です。著作権は放棄しておりません。 DO NOT REPOST.

【完結】伯爵令嬢の25通の手紙 ~この手紙たちが、わたしを支えてくれますように~

朝日みらい
恋愛
煌びやかな晩餐会。クラリッサは上品に振る舞おうと努めるが、周囲の貴族は彼女の地味な外見を笑う。 婚約者ルネがワインを掲げて笑う。「俺は華のある令嬢が好きなんだ。すまないが、君では退屈だ。」 静寂と嘲笑の中、クラリッサは微笑みを崩さずに頭を下げる。 夜、涙をこらえて母宛てに手紙を書く。 「恥をかいたけれど、泣かないことを誇りに思いたいです。」 彼女の最初の手紙が、物語の始まりになるように――。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を

さくたろう
恋愛
 その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。  少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。 20話です。小説家になろう様でも公開中です。

花言葉は「私のものになって」

岬 空弥
恋愛
(婚約者様との会話など必要ありません。) そうして今日もまた、見目麗しい婚約者様を前に、まるで人形のように微笑み、私は自分の世界に入ってゆくのでした。 その理由は、彼が私を利用して、私の姉を狙っているからなのです。 美しい姉を持つ思い込みの激しいユニーナと、少し考えの足りない美男子アレイドの拗れた恋愛。 青春ならではのちょっぴり恥ずかしい二人の言動を「気持ち悪い!」と吐き捨てる姉の婚約者にもご注目ください。

婚約破棄を希望しておりますが、なぜかうまく行きません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のオニキスは大好きな婚約者、ブラインから冷遇されている事を気にして、婚約破棄を決意する。 意気揚々と父親に婚約破棄をお願いするが、あっさり断られるオニキス。それなら本人に、そう思いブラインに婚約破棄の話をするが 「婚約破棄は絶対にしない!」 と怒られてしまった。自分とは目も合わせない、口もろくにきかない、触れもないのに、どうして婚約破棄を承諾してもらえないのか、オニキスは理解に苦しむ。 さらに父親からも叱責され、一度は婚約破棄を諦めたオニキスだったが、前世の記憶を持つと言う伯爵令嬢、クロエに 「あなたは悪役令嬢で、私とブライン様は愛し合っている。いずれ私たちは結婚するのよ」 と聞かされる。やはり自分は愛されていなかったと確信したオニキスは、クロエに頼んでブラインとの穏便な婚約破棄の協力を依頼した。 クロエも悪役令嬢らしくないオニキスにイライラしており、自分に協力するなら、婚約破棄出来る様に協力すると約束する。 強力?な助っ人、クロエの協力を得たオニキスは、クロエの指示のもと、悪役令嬢を目指しつつ婚約破棄を目論むのだった。 一方ブラインは、ある体質のせいで大好きなオニキスに触れる事も顔を見る事も出来ずに悩んでいた。そうとは知らず婚約破棄を目指すオニキスに、ブラインは… 婚約破棄をしたい悪役令嬢?オニキスと、美しい見た目とは裏腹にド変態な王太子ブラインとのラブコメディーです。

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

処理中です...