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26.側近side②
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★ジョセフ・マダータ
「兎に角、騎士を集めなければ」
騎士団長である俺は急ぎ足で近衛兵団へ向かっていた。
実力で俺は騎士団長にはなれたが、生まれてこの方一度も戦争を味わったことがない。俺の普段の仕事は国の治安維持と陛下の護衛だが、この度オレストの愚行により戦争が勃発した。
俺は戦場へ向かう恐怖と、自分の実力を披露できる場を設けられた喜びに打ちひしがれていた。
「おい、みんな」
兵団に行き、扉を開けたが中には誰も居なかった。
「おい、どこへ行ったんだ?」
普段はむさくるしい男どもで溢れている兵団。だが、今は蟻の子一匹すらいない状態だ。
「くそ。この一大事にどこで油を売っているんだ」
苛立つ心を抑えきれず、近くにあった木の椅子を蹴っ飛ばした。
「まさか、本当に来るとはな」
背後から聞こえた声に俺は慌てて振り返った。振り返った先には副団長が居た。
副団長は神経質そうな顔でなぜか驚いていた。
だが、オレストが三日後に攻め込んで来る一大事に俺はそんな副団長の表情に気づかずかなかった。
「ちょうどいい所に来た。副団長。直ぐに騎士を集めてくれ」
「それは無理です」
俺の命令を副団長は一刀両断した。
「無理って、何を言って」
「何を。ではなく、無理だと言ったんです」
「どうして無理なのだ!」
苛立つ俺を見て、副団長は嘆息した。俺を睨みつけるように見るその目には上司を敬う感情が一切含まれていなかった。
「王妃様のことで忠言を言った騎士の多くが陛下とあなたによって処断されました。無論、シャルロッテのことを忠言した騎士も」
「そ、それは致し方のないことだ。陛下の意に逆らうから」
「・・・・・そうですか。まぁ、そんなわけでクレバー陛下着任後、騎士の数は激減。一割も残ってはいなかったのですよ。これじゃあ、相手がどんな弱小国でも勝ち目なんてありませんね。にも拘わらず相手が大国のオレストなのだから。まぁ、オレストもそこまで武力の高い国ではありませんが。それでも大国。数だけはいますよ。
ここに辛うじて残っていた一割の騎士はすでに離職を申し出て、ここにいなかったあなたの代わりに私が許可しました」
「はぁ!?何を考えている!そんな権限お前にはないだろう」
「あなたにも、もう既にありませんよ」
侮蔑を込めながら俺を見下す副団長に俺は怒りを抑えきれずにいた。だが、副団長はそんな俺よりも更に大きな怒りを持っていた。
「あなたは実力で騎士団長になれたと思っていたようですが、それは違いますよ。あなたはクレバー陛下の幼馴染。だから、なれたんですよ」
「な、なんだと」
それは騎士としてこの上ない侮辱だった。幾ら実力で俺に劣り、副団長の地位に納まるしかなかったとは言え、そんな侮辱をされる謂れはなかった。
「もう一度言ってみろ」
獣が低く唸るような声を出して言うが、副団長は恐れるどころか、何処吹く風で言った。
「あなたの実力では騎士団長など遠く及ばない」
「ふざけ、がはっ」
最後まで言葉を発することはできなかった。
柄に手をかけた瞬間、目にも止まらぬ速さで剣を抜いた副団長が俺の手を斬り落としたからだ。
焼けるような痛みに俺は言葉を発することができなかった。そんな俺を嘲笑うように副団長は剣を振り上げ、今度は俺の残っている手に向かって振り落とした。
「あ、ああああ、あああ」
最早、言葉を発することはできない。
冷たい床に横たわり、開いた口からは唾液と言葉にならない悲鳴が漏れる。
「ああ、これで剣を持つことが叶わなくなりましたね。でも、それでいいでしょう。騎士道のなんたるかも分からない愚か者に剣は必要ありませんので」
視線だけを上に向けると、今まで見たことのない副団長の冷徹な目が二つ。俺を見下ろしていた。
「直にオレストの騎士があなたを捕らえにやってくれでしょうね。それまでここで頭を冷やしているといいですよ。私は自室に居ます。こうなったのは、あなた方を止めきれなかった私たちの責任でもあるので。あなたも私と共に国と滅びましょう」
にやりと笑って副団長は俺に背を向けた。
「地獄で会いましょう。騎士団長殿」
そう言って彼は出て行った。遠ざかる足音は確かに出口とは反対側の、副団長の部屋がある方へ向かっていた。
「兎に角、騎士を集めなければ」
騎士団長である俺は急ぎ足で近衛兵団へ向かっていた。
実力で俺は騎士団長にはなれたが、生まれてこの方一度も戦争を味わったことがない。俺の普段の仕事は国の治安維持と陛下の護衛だが、この度オレストの愚行により戦争が勃発した。
俺は戦場へ向かう恐怖と、自分の実力を披露できる場を設けられた喜びに打ちひしがれていた。
「おい、みんな」
兵団に行き、扉を開けたが中には誰も居なかった。
「おい、どこへ行ったんだ?」
普段はむさくるしい男どもで溢れている兵団。だが、今は蟻の子一匹すらいない状態だ。
「くそ。この一大事にどこで油を売っているんだ」
苛立つ心を抑えきれず、近くにあった木の椅子を蹴っ飛ばした。
「まさか、本当に来るとはな」
背後から聞こえた声に俺は慌てて振り返った。振り返った先には副団長が居た。
副団長は神経質そうな顔でなぜか驚いていた。
だが、オレストが三日後に攻め込んで来る一大事に俺はそんな副団長の表情に気づかずかなかった。
「ちょうどいい所に来た。副団長。直ぐに騎士を集めてくれ」
「それは無理です」
俺の命令を副団長は一刀両断した。
「無理って、何を言って」
「何を。ではなく、無理だと言ったんです」
「どうして無理なのだ!」
苛立つ俺を見て、副団長は嘆息した。俺を睨みつけるように見るその目には上司を敬う感情が一切含まれていなかった。
「王妃様のことで忠言を言った騎士の多くが陛下とあなたによって処断されました。無論、シャルロッテのことを忠言した騎士も」
「そ、それは致し方のないことだ。陛下の意に逆らうから」
「・・・・・そうですか。まぁ、そんなわけでクレバー陛下着任後、騎士の数は激減。一割も残ってはいなかったのですよ。これじゃあ、相手がどんな弱小国でも勝ち目なんてありませんね。にも拘わらず相手が大国のオレストなのだから。まぁ、オレストもそこまで武力の高い国ではありませんが。それでも大国。数だけはいますよ。
ここに辛うじて残っていた一割の騎士はすでに離職を申し出て、ここにいなかったあなたの代わりに私が許可しました」
「はぁ!?何を考えている!そんな権限お前にはないだろう」
「あなたにも、もう既にありませんよ」
侮蔑を込めながら俺を見下す副団長に俺は怒りを抑えきれずにいた。だが、副団長はそんな俺よりも更に大きな怒りを持っていた。
「あなたは実力で騎士団長になれたと思っていたようですが、それは違いますよ。あなたはクレバー陛下の幼馴染。だから、なれたんですよ」
「な、なんだと」
それは騎士としてこの上ない侮辱だった。幾ら実力で俺に劣り、副団長の地位に納まるしかなかったとは言え、そんな侮辱をされる謂れはなかった。
「もう一度言ってみろ」
獣が低く唸るような声を出して言うが、副団長は恐れるどころか、何処吹く風で言った。
「あなたの実力では騎士団長など遠く及ばない」
「ふざけ、がはっ」
最後まで言葉を発することはできなかった。
柄に手をかけた瞬間、目にも止まらぬ速さで剣を抜いた副団長が俺の手を斬り落としたからだ。
焼けるような痛みに俺は言葉を発することができなかった。そんな俺を嘲笑うように副団長は剣を振り上げ、今度は俺の残っている手に向かって振り落とした。
「あ、ああああ、あああ」
最早、言葉を発することはできない。
冷たい床に横たわり、開いた口からは唾液と言葉にならない悲鳴が漏れる。
「ああ、これで剣を持つことが叶わなくなりましたね。でも、それでいいでしょう。騎士道のなんたるかも分からない愚か者に剣は必要ありませんので」
視線だけを上に向けると、今まで見たことのない副団長の冷徹な目が二つ。俺を見下ろしていた。
「直にオレストの騎士があなたを捕らえにやってくれでしょうね。それまでここで頭を冷やしているといいですよ。私は自室に居ます。こうなったのは、あなた方を止めきれなかった私たちの責任でもあるので。あなたも私と共に国と滅びましょう」
にやりと笑って副団長は俺に背を向けた。
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