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25.側近side①
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★コブラ・カタブラ
「まずい。非常にまずいことになった」
カタブラ家の嫡男であり、次期公爵。そして父の後を引き継ぎ、僅か二六歳で史上最年少の宰相となったとても優秀な私は今、窮地に立たされていた。
それもこれも全てシャルロッテを溺愛している我儘陛下のせいだ。さっさと身分を弁えて、王妃にだけ愛情を注げばよかったんだ。
王妃は大国の王女というだけあって見た目はちょっと見ない美人だったし。ただ、頭が良い女は生意気で私の好みではない。
シャルロッテのように貞淑で、ただ黙って私の後をついて来る女でこそ妻に相応しい。
あのような生意気な女は一夜の慰みものにはなっても妻など以ての外だ。
だが、まさか。シャルロッテが私以外の男達とできているなんて夢にも思わなかった。
シャルロッテは私には「本当はクレバーのこと好きではないの。私が愛しているのはコブラだけよ。でも、平民の私が国王陛下に逆らえるわけないわ」といつも私の腕の中で泣いていたくせに。
「くそっ。最悪だ」
全部嘘だった。何もかも。裏切られたショックは大きく、与えられた心の傷は深い。だが、この国は終わる。王妃を蔑ろにした愚かの陛下と、平民のくせに王妃になれると信じ、私を裏切った淫乱なシャルロッテのせいで。あの二人に明るい未来はやって来ない。
そう考えると私の溜飲も幾分か下がるものだ。
私の未来?そこは問題ない。私はこの年で一国の宰相を務めあげているぐらい優秀だ。きっと私が欲しいと様々な国から誘いが来るだろう。私はそこで最も条件の良い国の誘いを受けてやればいいだけだ。そうと決まればこんな国、さっさとおさらばするぞ。
私は逃げる準備をする為にいったん帰路へついた。が・・・・・。
なぜか邸の中には入れなかった。門番が通してくれなかったのだ。
「ここより先はカタブラ公爵家のお邸。立ち入ることは赦されておりません」
は?この門番は何を言っている?馬鹿なのか?
「私はコブラ・カタブラだぞ」
「いいえ。あなたはただのコブラです。会場に居たあなたの婚約者から聞かされたはずです。あなたは公爵に勘当されたのですよ」
そう言われればそのようなことを言っていた気がする。でも、あんなのはシャルロッテに私をとられた腹いせに彼女がほざいた妄言だろう。
「私はこの年で宰相を務める程優秀なのだ。その私が勘当などされるはずがない」
「あなたが優秀?」
ハッ。と。門番の一人が鼻で笑い、その隣に居るもう一人の門番も小馬鹿にしたように私を見た。
「あなたは確かに史上最年少の宰相です。ですが、それはあなたが決して優秀だったからではありません。寧ろ、あなたよりも優秀な人はクレバー陛下が王位に就くまでは山の様にいました」
「どういうことだ?」
訳が分からないという顔をしている私に門番たちはお互いの顔を見合わせて溜め息をついた。
「まさか、ここまでとは」
「酷すぎるな」
「何なんだ、お前たちは。さっきから!無礼にも程があるぞ」
「無礼はそちらです。我々は高位でなくとも貴族です。平民よりも地位は上のはずだが?」
「はぁ!?何をわけのわからないことを言っている。私は公爵家の人間だぞ」
「だから、さっき勘当されたって言っただろうが!つまり貴様は平民だということだ」
「いい加減分けれよ」と門番が吐き捨てるように言った。口調までも変わっている。そのことが更に私を混乱に陥れた。
「クレバー陛下は自分に都合の良い人間にしか地位を与えなかったからな。だから優秀な奴らは早々に見切りをつけて国外に出た。そっちの方が目が出るからな。王妃を迎えてからはそれが顕著になった。当然だ。大国の王妃をあのようにぞんざいに扱えばこの国に未来がないのは分かりきっている」
「この国に残っているのは母国に未練のある者か。行く宛てがなく共に滅びの道を選んだ者。俺達の様に主がまだこの国に留まっているからそれに付き合っているだけの者。もしくはお前の様に現実が見えていないお花畑だけだ」
「多くの貴族が最初はクレバー陛下やお前らに忠言をした。公爵様もその一人だ。でも聞き入れようとはしなかった。陛下も貴様らも。だからもうこの国にはいない。忠言をする忠臣も。オレストから命を懸けてこの国を守ろうとする騎士も。もう居ない。この国は滅ぶしかないんだ。あんたらのせいでな」
私は一気に足元から地面が崩れるような感覚を味わった。体が闇の底に沈んでいくようなそんな感覚だ。
何でこうなった?私が平民?勘当された?違う。だって、私は何も悪くない。
全てはオレストから迎い入れた王妃を蔑ろにした陛下と私を裏切っていたシャルロッテのせいだ。私は悪くない。
それに。そうだ。私は優秀なんだ。私を宰相に迎い入れた国は山の様にあるはずだ。なら、ここで勘当されても、この国が滅んでも問題はない。私にはもう関わりのないことだ。そうだ。そうなんだ。私は他国に亡命して、そこで宰相として辣腕を振るう。きっと、私を勘当した愚かな父はそんな私を見て後悔するだろう。
自分の考えが間違っていたと。もしかしたら私のひざ元で泣いて許しを請うかもしれない。
だったら早く私の希望ある未来を繋ぎとめるために他国へ亡命しなければ。こんな所で油を売っている暇はないんだ。
「まずい。非常にまずいことになった」
カタブラ家の嫡男であり、次期公爵。そして父の後を引き継ぎ、僅か二六歳で史上最年少の宰相となったとても優秀な私は今、窮地に立たされていた。
それもこれも全てシャルロッテを溺愛している我儘陛下のせいだ。さっさと身分を弁えて、王妃にだけ愛情を注げばよかったんだ。
王妃は大国の王女というだけあって見た目はちょっと見ない美人だったし。ただ、頭が良い女は生意気で私の好みではない。
シャルロッテのように貞淑で、ただ黙って私の後をついて来る女でこそ妻に相応しい。
あのような生意気な女は一夜の慰みものにはなっても妻など以ての外だ。
だが、まさか。シャルロッテが私以外の男達とできているなんて夢にも思わなかった。
シャルロッテは私には「本当はクレバーのこと好きではないの。私が愛しているのはコブラだけよ。でも、平民の私が国王陛下に逆らえるわけないわ」といつも私の腕の中で泣いていたくせに。
「くそっ。最悪だ」
全部嘘だった。何もかも。裏切られたショックは大きく、与えられた心の傷は深い。だが、この国は終わる。王妃を蔑ろにした愚かの陛下と、平民のくせに王妃になれると信じ、私を裏切った淫乱なシャルロッテのせいで。あの二人に明るい未来はやって来ない。
そう考えると私の溜飲も幾分か下がるものだ。
私の未来?そこは問題ない。私はこの年で一国の宰相を務めあげているぐらい優秀だ。きっと私が欲しいと様々な国から誘いが来るだろう。私はそこで最も条件の良い国の誘いを受けてやればいいだけだ。そうと決まればこんな国、さっさとおさらばするぞ。
私は逃げる準備をする為にいったん帰路へついた。が・・・・・。
なぜか邸の中には入れなかった。門番が通してくれなかったのだ。
「ここより先はカタブラ公爵家のお邸。立ち入ることは赦されておりません」
は?この門番は何を言っている?馬鹿なのか?
「私はコブラ・カタブラだぞ」
「いいえ。あなたはただのコブラです。会場に居たあなたの婚約者から聞かされたはずです。あなたは公爵に勘当されたのですよ」
そう言われればそのようなことを言っていた気がする。でも、あんなのはシャルロッテに私をとられた腹いせに彼女がほざいた妄言だろう。
「私はこの年で宰相を務める程優秀なのだ。その私が勘当などされるはずがない」
「あなたが優秀?」
ハッ。と。門番の一人が鼻で笑い、その隣に居るもう一人の門番も小馬鹿にしたように私を見た。
「あなたは確かに史上最年少の宰相です。ですが、それはあなたが決して優秀だったからではありません。寧ろ、あなたよりも優秀な人はクレバー陛下が王位に就くまでは山の様にいました」
「どういうことだ?」
訳が分からないという顔をしている私に門番たちはお互いの顔を見合わせて溜め息をついた。
「まさか、ここまでとは」
「酷すぎるな」
「何なんだ、お前たちは。さっきから!無礼にも程があるぞ」
「無礼はそちらです。我々は高位でなくとも貴族です。平民よりも地位は上のはずだが?」
「はぁ!?何をわけのわからないことを言っている。私は公爵家の人間だぞ」
「だから、さっき勘当されたって言っただろうが!つまり貴様は平民だということだ」
「いい加減分けれよ」と門番が吐き捨てるように言った。口調までも変わっている。そのことが更に私を混乱に陥れた。
「クレバー陛下は自分に都合の良い人間にしか地位を与えなかったからな。だから優秀な奴らは早々に見切りをつけて国外に出た。そっちの方が目が出るからな。王妃を迎えてからはそれが顕著になった。当然だ。大国の王妃をあのようにぞんざいに扱えばこの国に未来がないのは分かりきっている」
「この国に残っているのは母国に未練のある者か。行く宛てがなく共に滅びの道を選んだ者。俺達の様に主がまだこの国に留まっているからそれに付き合っているだけの者。もしくはお前の様に現実が見えていないお花畑だけだ」
「多くの貴族が最初はクレバー陛下やお前らに忠言をした。公爵様もその一人だ。でも聞き入れようとはしなかった。陛下も貴様らも。だからもうこの国にはいない。忠言をする忠臣も。オレストから命を懸けてこの国を守ろうとする騎士も。もう居ない。この国は滅ぶしかないんだ。あんたらのせいでな」
私は一気に足元から地面が崩れるような感覚を味わった。体が闇の底に沈んでいくようなそんな感覚だ。
何でこうなった?私が平民?勘当された?違う。だって、私は何も悪くない。
全てはオレストから迎い入れた王妃を蔑ろにした陛下と私を裏切っていたシャルロッテのせいだ。私は悪くない。
それに。そうだ。私は優秀なんだ。私を宰相に迎い入れた国は山の様にあるはずだ。なら、ここで勘当されても、この国が滅んでも問題はない。私にはもう関わりのないことだ。そうだ。そうなんだ。私は他国に亡命して、そこで宰相として辣腕を振るう。きっと、私を勘当した愚かな父はそんな私を見て後悔するだろう。
自分の考えが間違っていたと。もしかしたら私のひざ元で泣いて許しを請うかもしれない。
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