悪役だから仕方がないなんて言わせない!

音無砂月

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24.クレバーside

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 目が覚めたら医務室だった。俺の周りにはいつもの側近共がいる。でも、シャルロッテの姿がどこにもない。
 体は起き上がろうとすると鈍い痛みがあるので目だけを動かし、シャルロッテを探した。けれど、俺の視界には入らなかった。
 「・・・・・シャルロッテは?」
 俺の問いに誰もが気まずそうに視線を逸らした。今までは俺の問いに何でも答えてくれたのに。ああ、そういえばこいつらは裏切りものだった。
 不意に意識が刈り取られる前に見た光景が浮かんだ。
 「彼女なら別室で休んでいますよ、陛下」
 カーテンの外から真っ赤な髪を一つに束ね、白衣を着た女が現れた。
 肉厚な唇に、豊満な胸。括れた腰。醸し出す色かはマリアやシャルロッテにはない大人の女性特有のものがあった。彼女はアマリリス。この王宮唯一の侍医。そして、前王。つまり俺の父の信頼の篤い医者だ。愛人の噂もあった。本当のところはどうか知らない。
 「何で傍にいない?」
 俺の問いにアマリリスは口角を右肩上がりした。
 「あなたが眠っている間に面白い見世物があったんですよ」
 アマリリスは会場であったことを全て話してくれた。話し終えた彼女は棚にある薬品棚からいくつも薬を出して鞄に積めていた。不思議に思い、カーテンを開けてみるといつもは物で溢れ返っているそこが買ったばかりの家のように何もなかった。
 「何をしている?」
 「何って見ての通り。国を出る準備ですよ。あなた達が派手に暴れてくれたお陰でこの国は亡国となりますからね」
 「は?何ふざけたこと言っている。友好国に攻めいろうとする輩なんて追い出せば良いだろ」
 「どうやって?」
 アマリリスは王である俺が話しているというのに背を向けたまま荷物を次々に鞄に入れていく。
 一つ、また一つと医務室から物がなくなっていく。
 「どうって、そんなの騎士を徴集して」
 「既に離脱者が出ています」
 「なっ!?何だと!」
 戦いを恐れて逃げだすなんて、何て恥知らずな。
 「騎士なった以上、彼らも死ぬ覚悟ぐらいはできていますよ」
 俺の心を読んだかのように先回りしてアマリリスが言う。
 「でも、無駄死にする覚悟を持って騎士になる人なんていないんですよ、陛下」
 「無駄死にだと?何を言っているんだ」
 戦いの中で死ぬのは単に運が悪かったか、己の力量不足だろ。国を守って死ぬことのどこが無駄死になんだ?
 俺の疑問が顔に出ていたのかアマリリスは手を止め、大きなため息を一つ、ついた。
 「騎士になったのだから、命を懸けても良いと思える人を主に選んで死にたい。そう思う騎士も少なくはありません」
 「俺はそんな主ではないと言いたいのか?」
 俺が聞くとアマリリスはにんまりと笑った。
 「よくお分かりで、陛下。自国を滅ぼす男を誰が命がけで守りたいと思いますか?」
 「俺のせいではない!あれはっ」
 「オレストのせい?でもそうなった原因はあなたにある。私は王妃様の扱いについて再三申し上げました。でもあなたは聞く耳を持たなかった」
 鞄に入る必要最低限の物を積め終えたアマリリスは鞄のチャックをきゅっという音をたてて閉じた。
 「好きでもない女を迎えた自分を哀れみ。心から愛する女と引き裂かれた悲劇のヒーローにでもなったつもりなんだろうけど」
 アマリリスは俺を侮蔑の眼差しを向けてきた。
 「男ばかりではないのよ。好きでもない人に嫁がれた悲劇の主人公は。それでは、さようなら。頑張って騎士を集めるか、頑張って許してもらえるようにするのね。まぁ、無理でしょうけど」
 パタン
 アマリリスはそう言い残して医務室を出ていった。
 扉がしまる音がやけに大きく響いたのは医務室の中がいつもよりがらんとしていているからだろうか。
 空の器程よく響く〈*シェイクスピア著〉と何かの本に書いてあった。
 「へ、陛下。我々も一旦下がらせてもらいます」
 「は?何を言っているんだ?」
 「本当に戦争になるのなら準備も必要ですし」
 確かに。
 「分かった。俺は疲れたから休む。後はお前達に任せる。全てが終わった後でシャルロッテのことを聞く」
 「はい」
 側近達は全員、神妙に頷いた後、部屋を出ていった。
 一人になった後、俺はシャルロッテのことを考えていた。
 可愛くて、貞淑な淑女だと思っていた彼女が側近達全員と肉体関係があるなんてまだ信じられなかった。
 これはもしかしたら俺とシャルロッテの仲を嫉妬したマリアが仕組んだことなのかもしれない。
 シャルロッテがオレストの王妃になると言ったことも俺とシャルロッテの仲を嫉妬した側近達がついた嘘なのかもしれない。
 ああ、きっとそうだ。その方が辻褄が合う。
 そうでないとおかしい。
 俺は結論を導きだし、シャルロッテの元へ向かうために医務室を出た。
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