【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗

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第78話 ウソだと信じたい

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ゆっくり遠くなっていく大和の背中を見つめていると、濃かったこの数週間が蘇ってきた。

いきなりの壁ドンに彼氏はいるけど付き合ってみないかとか、断ったら元カノとの恥ずかしい別れ話をネタにすると脅してきたりとか、頭がおかしいヤツだと思っていたはじめの頃。
それまではしゃべったこともなかったヤツ。

話したり笑ったりしたのはたった数週間なのに、思い出がいっぱいすぎて…。

ただのチャラ男だと思っていたのに、俺のためにカラダを張って自分がケガをしたり心配して病院で泊まってくれたり、気がついたらいつもいっしょにいた。

ふと、頭の中に疑問が浮かぶ。
大和って、彼氏がいるのに「付き合おう」なんて言ってくるようなヤツだった?

すぐ目の前に大和が“彼氏”だと言ったヤツがいるのに、やっぱり信じられなくて。

「大和」
無意識に名前を呼んでいた。

一度は振り返って和馬を見た大和だったがすぐに視線を逸らし、“彼氏”だと言った男の方向へ向き直って歩きはじめようとする。

行くな。
…行くな!

「大和、俺…、お前のこと…」
好きだからと、そう伝えるつもりだった。

でも、
「和馬くん、昨日ぶり。大和くんのこと、返してくれてありがとね」
そう言われて言葉が出てこなくなった。

そんなふうに言ったのは、大和が“彼氏”だと言ったトモ。
大和が財布を奪ったとイラついていたはずのトモだった。

昨日コンビニで会ったときもトモの顔を見て不機嫌そうにしていたのに、こいつが彼氏だったのかよ…。

確かにトモからは
「まぁ俺は大和くんがどんな悪いヤツでも大好きだし、上手に扱ってあげられる。大和くんも俺とは離れられないと思うから、早く僕に返してね」
そう言われていた。

だからやっぱりって気持ちもあったけど…。

ウソだろ?

これはウソだ。
そう信じたい。

和馬は背中を向けたままの大和に叫んでいた。

「俺は…、俺は大和のことが好きだ…!」
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