【奨励賞・受賞】彼氏がイケメンなのは絶対ヒミツ

第107話 芽生えた不安

「調査しているうちに、政治界を変えたいと望む政治家やフィクサーたちが政治に対する優秀な遺伝子を持つ歴史偉人の子孫や末裔たちを引き入れようとしていること。逆に汚職や職権乱用で甘い蜜を吸っている政治家やフィクサーたちがそれを阻止しようと躍起になっていることに辿り着いたの」

影薄先生の小声には気づいていない様子の皇帝が話を続ける。

「でもそれがどう、この白鷺しらさぎ学園と絡んでくるわけ？」

「理事長にした白川樹希しらかわききはそれを商機と捉え、いまの政治界を変えたいと望む政治家やフィクサーたちの子どもたちを必ずこの白鷺しらさぎ学園へ入学させるとともに、相当の教育を施して財政界へ進出させるよう密約を交わすようになったみたいよ」

皇帝は少し喉が渇いたようで、ポケットからミニサイズのペットボトルを取り出してゴクリ。

「皇帝ってば、そのお水、好きね」

養老の滝と印字された水のペットボトルをおいしそうに飲み干す皇帝を見つめながら呆れ顔をした影薄先生は
「ほんと2人とも友情に熱いというか、本当にお互い意地っ張りというか…」
また小声で溜め息をついた。

影薄先生の言葉に一瞬水を吐き出しそうになった皇帝は、
「ちょっと影ちゃん、人が好んで飲んでいる水をいちいちいろんな話とくっつけるのはやめてちょうだい！」
真っ赤になって怒鳴りながら、
「そんなことよりも」
と仕切り直す。

「白川樹希しらかわききは密約を実行するため、資金繰りに喘いでいた忍者協会に出資。見返りに学園への協力を約束させているわ。そして、学園へ入学を予定している歴史偉人の子孫や末裔たちに自我の封じ込めをおこなったの」

…なんか、すごい話。

最初は、ただただすごい話だと思いながら他人事のように聞いていた末明だったけれど、ひとつの不安が芽生えてだんだんと大きくなっていくのを感じていた。