【奨励賞・受賞】彼氏がイケメンなのは絶対ヒミツ

竹柏凪紗

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第89話 “変化の術”を発動する忍具

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「誰かを装うとき、まず気を使うべきは見た目。顔の輪郭や体格は変えられませんから、髪型や服装をまったくの別人に見えるよう変えたり目指す人物に似せたりすることが重要です。でもそれは、付け焼刃と同じ。すぐにボロが出るものです」

またドヤ顔で語りはじめた皇帝は、食い気味に話しを聞いている柚吏と扇にご満悦。
サラサラと言葉が滑り出してくるという様子で続ける。

「どうして別人になりすましていてもバレるのか。それは、人が持つオーラや雰囲気、方言を含むしゃべり方や仕草、そして匂いなど、ふとしたときに出る沁みついた自分自身の特徴。そういった特徴のない人は印象に残らず記憶にも残りにくいもの」

「言われてみれば」

「人間は60%の水のほか、炭素原子などを中心にさまざまな原子で構成されているの。電子の化学反応をうまく利用することによって本来の人が持つ特徴を自在に変化させるのが“変化の術”。自分の原子を忍術で変化させるなんて、相当な鍛錬を積んだ者しかできない」

皇帝節はまだまだ続く。

「だから、身に着けるだけで簡単に“変化の術”を発動できるこういった装飾品が発明されたのよ。このネックレスに流れる電流が電子の化学反応をうまく調整して、その人が本来持っている特徴を消してごくごく一般的で平均的な印象を与えてくれるの」

「なんだかよくわからないけど、すごいモノなんだな」

「ええそうよ。だからそのネックレスを着けてさえいれば、ダダ漏れになっているイケメンオーラを抑えることができる。馬戸柚吏の自我はイケメンがダダ漏れになっていることで気づかれやすいから、ピッタリのアイテムだと思うわ」

「なるほど。さすがは皇帝だな」
「サンキュー、皇帝」

2人のイケメンにお礼を言われて皇帝の頬が緩んだとき、昼休み終了のチャイムが鳴った。
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