RISE!~男装少女の異世界成り上がり譚~

た~にゃん

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建国~黎明~編

139 難題 人情 リベンジ

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あの数日後、イライジャさんが持ち帰った植物紙の売上で、国庫は何とか…首の皮一枚で繋がった。コレが本当の自転車操業……肝が冷えたよ、もう。ウィリス村だけならともかく、モルゲンもベイリンも丸ごととなると、かかるお金も桁が違う。金貨百枚を大金と喜んでいた頃が懐かしいよ。
ちなみに、植物紙製造を再開するためにフェイク村を潰した。罠とかをすべて取っ払って、ニマム村民に明け渡したのだ。
故郷とはいえ、魔の森に吞まれた跡地に戻るのを村人は拒否した。かと言って遠くの新天地に移住するのも拒否した。ちょうどいい広さの土地がフェイク村だったので利用したのだ。
フェイク村には旧ニマム村と同じ川も流れているし、水車小屋を新設すればビーターも作れる。原野を開拓するわけでもなので手間もかからないし、幻惑の魔道具の仕掛をそのままにすれば、製造工程も隠せるしね。
でも、作る場所を限定すれば製造量も頭打ちになる。モルゲンかベイリンで綺麗な水の流れる川がある場所を探して、製造拠点を増やした方がいいだろうなぁ。アーロンがいなくなって、誰に遠慮することなく植物紙を売り出せるのだし。

その前に。

「私、もう一度ベイリンに行こうと思うんだけど…」
オフィーリアには負担をかけて悪いが、織物職人を訪ねようと思う。彼らは今、仕事が極端に減っている状態だ。きっと不安にもなっているだろうし、何より例の謎植物もとい綿を商品にしなければならない。

この異世界の主だった織物は、先にも言った毛織物(羊毛)に絹、そして麻織物の三種。絹は高価だから、庶民に縁があるのは毛織物と麻織物だね。亜麻に関しては、糸を紡いで織物にするのは職人ではなく農村の女性。農閑期の貴重な現金収入になるんだとか。と言っても、魔の森付近は麻が自生してなくて、ウィリス村やニマム村には亜麻糸紡ぎの技術はないのだけれど。

話を戻そう。

職人さんって、仕事がなくなると他の土地に移っちゃうんだ。フットワークが軽い。けどそうなるとこっちは困るわけで。
(謎植物は綿だし、織物にすれば間違いなく売れる!)
職人さんたちに仕事も与えられて一石二鳥だ。そう…とても簡単に考えていたんだ。

「え?紡げない?!」
だから、はるばる訪ねたベイリンで職人さんから言われた時は愕然とした。だって綿だよ?!なんで?!
「糸が切れちゃうのよ。フワフワして軽いし光沢もあるのに、惜しいねぇ」
とは、ベテラン糸紡ぎのおばあちゃんの言。
「羊の毛と違って繊維が短すぎるんだわ」
ええーっ?!
今更になって思い出す。

「何を仰るのですか。シェフレラから糸なんて紡げませんよ?」

そうだ。だって糸にできるなら、メドラウドでとっくの昔にやっているはず。クッションの中綿だけに甘んじていないだろう。
「うあ~……マジかぁ」
せっかく職人さんたちにいい仕事を提供できると思ったのに…。落ちこむ私に、
「まあ、せっかく持ってきてくれたんだし、やるだけやってみるわ」
職人たちは、仕方ないなぁという顔でそんなことを言ってくれた。
結局、職人さんには、余所の領から買い入れた羊毛を加工してもらうことにした。当然、余所から運んでくる羊毛は割高だし、その分価格を上乗せになるから……頭が痛い。
綿擬きは、やっぱクッションの中身にするかぁ。

ベイリンからトンボ返りして戻って来たら、意外なお客様が来ているという。
「マリーちゃんに会いにロリエッタ侯爵が来たぁ?!」

◆◆◆

急遽ロリドレスに着替え、胸を寄せてあげて、髪を巻いてツインテールにして『マリーちゃん』に扮した私。応接室へ行く途中、アルと父さんに見つかり説教されて……結局中途半端にロリな村娘の格好に着替えて、私はロリエッタ侯爵の待つ応接室に入った。
「お待たせしてごめんなさい。おじさま」
敢えて侯爵の隣に腰かける。この位置取りでよい。
ロリエッタ侯爵は、敵に回せない重要な取引相手だ。それは皆わかっているため、オフィーリアがとっておきの茶葉とお菓子でおもてなししていた。
「マリーちゃん!素朴な雰囲気なのにとがってる感じがまた最高じゃあ!!」
ご機嫌で何より。…オフィーリア、引いちゃダメだ。こういう人だから。あと、扉の後ろ!アルと父さんから殺気がダダ漏れだよ!
「わざわざマリーに会いに来られるなんて。さ…寂しくなっちゃったのかしら?」
普通に話せないのがつらい。ロリエッタ侯爵は、『ツンデレのマリーちゃん』が好きなのだ。語尾でツンとそっぽを向く(※キノコの演技指導による)。
「それがの…大変なことになったんじゃ」

◆◆◆

王国に察知された。
アーロンを降してベイリンを吸収し、独立したことがバレた。ロリエッタ侯爵からの情報では、近々王国から討伐隊がここに送られる予定だという。
「標的はお兄様?お義姉様ではなくて?」
「そうなんじゃ。魔物に乗っ取られたサイラス・ウィリスが諸悪の根源、というのが王妃殿下の掲げる大義なんじゃが…」
首を傾げているからして、私のことは普通の人間だと疑ってないみたいだ。顔には出さないけど、ホッとする。
「お兄様は、魔物に乗っ取られてなんかいないわ」
「じゃよのぉ」
ロリエッタ侯爵に曖昧に微笑む仮面の下、私は盛大に顔を顰めていた。
これ…間違いなく『ゲーム』のシナリオを知った上での行動だよね?確かシナリオでは、ウィリス村は戦で焼かれて消滅したんだっけ?修正しようとしているの?
何が目的なんだろう。エヴァの話によれば、王妃様は『本編』のヒロイン。つまり、彼女が主人公のストーリーは既に終わっているのだ。なのになぜ、シナリオを進めようとするの?
「マリーちゃん、ここはわしと一緒に逃げぬか?」
「……へ?」
いかん。つい、考え事をしていてロリエッタ侯爵のことをすっかり忘れていた。

近っ!!

私の両手を包みこみ、息がかかるほどロリエッタ侯爵の顔がどアップ…
「何ならお兄さんと一緒にでもいい。君らさえ見つからなければ、王妃様の大義も意味をなさんよ」
匿ってやるって…そう言ってくれてる?たまに…たま~に、ロリエッタ侯爵は普通の優しいおじさまになるんだよね。私は、心配そうなおじさまにニコッと笑ってみせた。
「ありがとう、ロリエッタおじさま。でも、大丈夫。おじさまのおかげで後手に回らずに済みましたもの」
今度こそ。今度こそ、戦という最悪の方法を取らずにその討伐隊とやら、退けてやるぜ!

「じゃ。オフィーリア、後は任せた!」
まずは情報収集だ。私はまたしてもオフィーリアに留守を任せ、ニミュエとベイリンを経由して王都へ向かうことになった。
寒かった冬は過ぎ去り、今は春の只中。日本みたいに満開の桜で華やぐ春よりは遥かに地味な春だけど。戦で荒れた街は復活し、まだ範囲は狭いけど街道にコンクリートの道を敷き、格段に物流事情は良くなった。少しずつ、少しずつだけど、発展への道を進んでいるんだ。ゲームだか何だか知らないけど、大切な故郷を焼かせて堪るもんか。
正直なところ、もう少し時間が欲しかったけど。でも、いい機会だもん。コネ作り、頑張りますか!

◆◆◆

サイラスがウィリスを発った頃、王都では――
王都のメインストリートを、絢爛に飾り立てた豪奢な馬車がゆっくりと王宮へと向かっていた。馬車の後ろには、銀の甲冑も眩しい騎士団を従え、その後ろで楽隊が賑やかな行進曲を演奏する。メインストリートは見物人で溢れ、さながら祭りのような熱気に溢れていた。南部鎮圧の凱旋式が、今始まろうとしている。
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