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1章 ハーレムキングの目覚め 編
ハーレムキングは力を知る
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悪霊が再び呻いた。形の定まらない体から、黒い霧のようなものを放ちながら、こちらへと迫ってくる。
「ふむ……問答無用、か。なら、こちらも問答無用で応じるとしよう」
オレは軽く足を踏みしめ、拳を振りかぶった。
魔法でも何でもない。
ただの拳。それだけだ。
だが、それだけでいい!
「ふっ!」
軽く振り抜いたその一撃は、風を裂いた。
森の木々を薙ぎ倒し、地に咲く草花を刈り取る。
そしてその一撃が悪霊に触れた瞬間、霧のようだったその身体が、一瞬で砕け、霧散した。
音もなく、静かに……まるで初めからそこになかったかのように。
「……おしまいか」
拳を下ろすオレの周囲には、もう敵の気配はなかった。
静寂。風の音。森の葉が、カサリと揺れる。
それだけだった。
随分と呆気ない終わりだった。前世では戦闘経験なんてまるでなかったはずだが、やはりハーレムキングの力とこの肉体はすごい。
「さあ、村に戻ろうか! チュートリアルは遂行した! 本編に突入しよう! オレのハーレムライフが幕を開けるぞ!」
オレは意気揚々とサラを見た。
「……えっ? あ、は、はい……」
か細い声が聞こえた。
サラは両膝をついたまま、呆然とオレの背中を見つめていた。女の子座りってやつだ。
何が起こったのか、理解が追いついていないといった様子で。
「む、村に戻るのはいいんですけど……な、なに? 今の、は……?」
ぽつりと零れた言葉に、オレは思案してから答える。
「……オレにもよくわからないが、どうやらオレは強いらしい。というわけで、悪霊はもう消えた。安心してくれ、サラ」
「簡単に言いますけど、消えたって……あなた、なにしたんですか……?」
「殴った」
「……え?」
「拳で殴った。まるで全力ではないがな」
「はぁああああああ!?」
サラが悲鳴のような声を上げて立ち上がる。
「え、ちょ、ちょっと待ってください!? 私の神聖魔法でも倒せなかったんですよ!? 確かに私はセイクリールで名の知れた神官ではありませんが、それでも相手は物理攻撃の効かない悪霊です! あなた、どうやって……?」
早口で捲し立てられても困る。
「うーむ、オレにもわからん。だが、多分これこそが王の力だ。オレは紛れもない王なのだろう! ふはははははっ!!」
「そんな理屈あるかあああああ!!」
サラが頭を抱えて絶叫する。
オレはその横で、森の奥を見やりながら腕を組んだ。
「さて……森の問題はひとまず解決だな。チュートリアルを終えたところで、そろそろ二人目のヒロインと出会う準備をせねば」
「まだ何か言ってる!? ってか、その感じだと私もヒロインに含まれてる!?」
サラは杖で小突こうとして、でも途中で止めた。
顔を真っ赤にしている。空も暗くなってきたというのに、わずかな月明かりでわかるくらいだ。
オレの背中を、じっと見つめるその姿は……キューティーだ。
「サラ、やはり君は美しい! そのツッコミ力はさることながら、可憐な容姿と凜とした佇まい、王であるオレに萎縮しない良い意味で傲慢な態度! オレは君が気に入った!」
自然とそう口にしていた。
これこそオレがハーレムキングたる所以だ! 対女性特攻においては誰の追随を許さない!
「というわけで、村に戻り次第、セイクリールとやらへ案内してほしい! さっきの口ぶりからして村の近くの街なのだろう?」
オレはサラに微笑みかけて踵を返した。
当の彼女はオレの声が聞こえていないのか固まっている。
「な、なんなの、この人……」
もしかして、悪霊が怖くて動けないのか?
であればオレが大役を任されることにしよう!
「失礼する!」
「ちょ、ちょっと! 勝手に私に触れないでください! 私は神聖な神官で、異性との接触は禁止されいてる……って、なんでそんなに幸せな顔なんですか! ほくほくしないでください!」
「幸せな顔にもなる! なぜならオレはハーレムキング、つまりは王なのだ! 君のような美しくもあり可憐な女性との接触は何よりも望んでいたことだ! そして何より、お姫様抱っこはカッコいいではないか! 理想のシチュエーションというやつだ! ふはははははっ!!」
オレがそれだけ言うと、腕の中のサラはぴたりと静かになった。
自らの顔を手で覆い隠しながらも、指の隙間から覗かせる視線はこちらを見ていた。
「なんなの、本当に……王って、まさか冗談じゃなかったんですか? なんかもうカッコよく見えてきちゃったし……って、私ってば何考えてるんですか! もう!」
サラは自分で自分の頬を軽く叩いていた。自虐趣味があるとは思えないが、どうやら興奮しているらしい。
「落ち着け。それで、何か不満があったか? 女性の悩みや不安は早急に解決するのがオレのやり方だ。問題があったのならなんでも聞かせてくれ!」
「……全部あなたが原因ですからね!?」
サラはオレの腕を弾いて自らの足で着地すると、頬を膨らませてすっと目を逸らした。お姫様抱っこが解除されてしまった。悲しきかな。
ふむ、女性の扱いはやはり難しい。喜怒哀楽が読みにくい。
オレは紛れもないハーレムキングだが、まだまだ努力が必要だ。
「早く行きますよ! ぼーっとしてないで!」
「おいおい、待ってくれ、サラ!」
「なんですか!」
「オレの次なる目的のために、君の助力が必要だ! やはり村を出たらセイクリールへ案内してくれないか! さっきの誘いの返答がほしい!」
「もうっ、うるさいです! 黙って私についてきてください! ちょうど運良くたまたま偶然ラッキーなことに、セイクリールに案内する気分になったので、今回だけは悪霊退治を手伝ってくれたお礼にセイクリールへ連れて行ってあげます! これでいいですか?」
振り返りもせずに言い放たれたが、言葉には寄り添いを感じた。
「ありがとう! 感謝する!」
オレは即座に感謝を伝えたが、その間にもサラの背中は遠くなっていた。
——こうして、オレはサラと共に森の問題をひとまず終え、村へと戻っていくのだった。
「ふむ……問答無用、か。なら、こちらも問答無用で応じるとしよう」
オレは軽く足を踏みしめ、拳を振りかぶった。
魔法でも何でもない。
ただの拳。それだけだ。
だが、それだけでいい!
「ふっ!」
軽く振り抜いたその一撃は、風を裂いた。
森の木々を薙ぎ倒し、地に咲く草花を刈り取る。
そしてその一撃が悪霊に触れた瞬間、霧のようだったその身体が、一瞬で砕け、霧散した。
音もなく、静かに……まるで初めからそこになかったかのように。
「……おしまいか」
拳を下ろすオレの周囲には、もう敵の気配はなかった。
静寂。風の音。森の葉が、カサリと揺れる。
それだけだった。
随分と呆気ない終わりだった。前世では戦闘経験なんてまるでなかったはずだが、やはりハーレムキングの力とこの肉体はすごい。
「さあ、村に戻ろうか! チュートリアルは遂行した! 本編に突入しよう! オレのハーレムライフが幕を開けるぞ!」
オレは意気揚々とサラを見た。
「……えっ? あ、は、はい……」
か細い声が聞こえた。
サラは両膝をついたまま、呆然とオレの背中を見つめていた。女の子座りってやつだ。
何が起こったのか、理解が追いついていないといった様子で。
「む、村に戻るのはいいんですけど……な、なに? 今の、は……?」
ぽつりと零れた言葉に、オレは思案してから答える。
「……オレにもよくわからないが、どうやらオレは強いらしい。というわけで、悪霊はもう消えた。安心してくれ、サラ」
「簡単に言いますけど、消えたって……あなた、なにしたんですか……?」
「殴った」
「……え?」
「拳で殴った。まるで全力ではないがな」
「はぁああああああ!?」
サラが悲鳴のような声を上げて立ち上がる。
「え、ちょ、ちょっと待ってください!? 私の神聖魔法でも倒せなかったんですよ!? 確かに私はセイクリールで名の知れた神官ではありませんが、それでも相手は物理攻撃の効かない悪霊です! あなた、どうやって……?」
早口で捲し立てられても困る。
「うーむ、オレにもわからん。だが、多分これこそが王の力だ。オレは紛れもない王なのだろう! ふはははははっ!!」
「そんな理屈あるかあああああ!!」
サラが頭を抱えて絶叫する。
オレはその横で、森の奥を見やりながら腕を組んだ。
「さて……森の問題はひとまず解決だな。チュートリアルを終えたところで、そろそろ二人目のヒロインと出会う準備をせねば」
「まだ何か言ってる!? ってか、その感じだと私もヒロインに含まれてる!?」
サラは杖で小突こうとして、でも途中で止めた。
顔を真っ赤にしている。空も暗くなってきたというのに、わずかな月明かりでわかるくらいだ。
オレの背中を、じっと見つめるその姿は……キューティーだ。
「サラ、やはり君は美しい! そのツッコミ力はさることながら、可憐な容姿と凜とした佇まい、王であるオレに萎縮しない良い意味で傲慢な態度! オレは君が気に入った!」
自然とそう口にしていた。
これこそオレがハーレムキングたる所以だ! 対女性特攻においては誰の追随を許さない!
「というわけで、村に戻り次第、セイクリールとやらへ案内してほしい! さっきの口ぶりからして村の近くの街なのだろう?」
オレはサラに微笑みかけて踵を返した。
当の彼女はオレの声が聞こえていないのか固まっている。
「な、なんなの、この人……」
もしかして、悪霊が怖くて動けないのか?
であればオレが大役を任されることにしよう!
「失礼する!」
「ちょ、ちょっと! 勝手に私に触れないでください! 私は神聖な神官で、異性との接触は禁止されいてる……って、なんでそんなに幸せな顔なんですか! ほくほくしないでください!」
「幸せな顔にもなる! なぜならオレはハーレムキング、つまりは王なのだ! 君のような美しくもあり可憐な女性との接触は何よりも望んでいたことだ! そして何より、お姫様抱っこはカッコいいではないか! 理想のシチュエーションというやつだ! ふはははははっ!!」
オレがそれだけ言うと、腕の中のサラはぴたりと静かになった。
自らの顔を手で覆い隠しながらも、指の隙間から覗かせる視線はこちらを見ていた。
「なんなの、本当に……王って、まさか冗談じゃなかったんですか? なんかもうカッコよく見えてきちゃったし……って、私ってば何考えてるんですか! もう!」
サラは自分で自分の頬を軽く叩いていた。自虐趣味があるとは思えないが、どうやら興奮しているらしい。
「落ち着け。それで、何か不満があったか? 女性の悩みや不安は早急に解決するのがオレのやり方だ。問題があったのならなんでも聞かせてくれ!」
「……全部あなたが原因ですからね!?」
サラはオレの腕を弾いて自らの足で着地すると、頬を膨らませてすっと目を逸らした。お姫様抱っこが解除されてしまった。悲しきかな。
ふむ、女性の扱いはやはり難しい。喜怒哀楽が読みにくい。
オレは紛れもないハーレムキングだが、まだまだ努力が必要だ。
「早く行きますよ! ぼーっとしてないで!」
「おいおい、待ってくれ、サラ!」
「なんですか!」
「オレの次なる目的のために、君の助力が必要だ! やはり村を出たらセイクリールへ案内してくれないか! さっきの誘いの返答がほしい!」
「もうっ、うるさいです! 黙って私についてきてください! ちょうど運良くたまたま偶然ラッキーなことに、セイクリールに案内する気分になったので、今回だけは悪霊退治を手伝ってくれたお礼にセイクリールへ連れて行ってあげます! これでいいですか?」
振り返りもせずに言い放たれたが、言葉には寄り添いを感じた。
「ありがとう! 感謝する!」
オレは即座に感謝を伝えたが、その間にもサラの背中は遠くなっていた。
——こうして、オレはサラと共に森の問題をひとまず終え、村へと戻っていくのだった。
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