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1章 ハーレムキングの目覚め 編
ハーレムキングは戦いを知る
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森の奥、ぬるりとした空気が広がった。
温度は変わらないのに、肌がじっとりと汗ばむ。嫌な気配が這い寄ってくる感覚。
やがて、ぼんやりと霞んだ影が木立の間から浮かび上がった。
白く透けていて、形が定まらない。
人のような、獣のような、なにかの未練が渦を巻いたもの。
「……こいつが悪霊か」
オレは呟いて腕を鳴らした。
しかし、そんなオレを差し置いて、サラが一歩前に出た。
さっきまでとは違う、凛とした背筋。指先に力がこもっている。
「ここは、私に任せてください。神官として、村を護る義務があります」
その声音には、確かな覚悟がこもっていた。
この少女——サラという神官は、ただのヒロイン役ではない。確かに、自らの立場を背負ってここに立っている。
「神よ、我が祈りを聞き届けたまえ——浄光の導!」
サラの手元に淡い金色の光が集まる。小さな光粒が舞い上がり、彼女の身体を中心に円を描いて広がっていく。
清らかな輝き。周囲の空気すら清浄に変わったような感覚がした。
「これが浄化の魔法か。これは確かに……綺麗だな。王であるオレの次に美しい!」
オレは一歩引いた位置からその光景を眺めた。
光を浴びた悪霊がうねるように動く。
光の結界に本能的な嫌悪を示しているのが分かる。
「これで……!」
サラの手のひらから、無数の閃光が放たれていく。それは悪霊の中心へと一直線に向かっていく。
閃光は悪霊を捉えて離さない。
やがて直撃すると、
——キィィィィンッ!!
鋭い金属音のような、耳を裂く悲鳴のような音が森に響いた。
「……弾かれたのか」
初めて見る光景なのに、ハーレムキングの力を持つオレは何が起きたか一目で分かった。
光が弾かれたようだ。
同時に、悪霊の体が波打つ。
だが、消えない。むしろその形は明確になり、人のような顔を作り出してこちらを見つめてきた。
禍々しいその姿は先ほどまでのぼんやりした形とは訳が違った。身に纏う雰囲気も辺りの空気感も、何もかも。
「っ……!?」
サラの目が見開かれる。
「効かない……? そんなはず……!」
彼女の足が半歩後ずさった。
その隣で、オレは静かに目を細めていた。
「とりあえず、こいつを倒せばチュートリアルはクリアってことでいいのか」
悪霊は吠えた。
音のない咆哮が空気を震わせ、森の木々が軋んだ。
それと同時に、地面が濁り、空気が澱み、圧倒的な負の気配が広がっていく。
「っ、ぐ……っ!」
サラが膝をついた。神聖魔法の光が弱まる。加護が、押し返されている。
「サラ」
オレは一歩、前に出た。
「だ、ダメです……! あなたには何もできないって、言ったでしょう……! 悪霊には物理攻撃が通じないんです! 神聖魔法で浄化するほか対処方法は存在しないんです!」
彼女は苦しげに声を絞る。
だが、オレはその言葉には答えなかった。ただ静かに前を見据える。
悪霊の瞳と視線がぶつかる。こちらに意識を向けてきたのが分かった。
「……ほう、ようやくこっちを見たな」
オレは右足を半歩引き、拳を軽く握る。
「ちょ、ちょっと……? あなた、まさか本気で……?」
サラの声が震える。何に対してか。悪霊に対してか、オレに対してか——それは分からなかった。
しかし、やることは決まっていた。
「ふはははははっ! サラよ、ここまでよく頑張った! あとはオレに任せてほしい! 女性のピンチを救うのはハーレムキングの務めだからな! さあ、悪霊よ、死に方を選ばせてやる!」
オレは高らかに笑った。
温度は変わらないのに、肌がじっとりと汗ばむ。嫌な気配が這い寄ってくる感覚。
やがて、ぼんやりと霞んだ影が木立の間から浮かび上がった。
白く透けていて、形が定まらない。
人のような、獣のような、なにかの未練が渦を巻いたもの。
「……こいつが悪霊か」
オレは呟いて腕を鳴らした。
しかし、そんなオレを差し置いて、サラが一歩前に出た。
さっきまでとは違う、凛とした背筋。指先に力がこもっている。
「ここは、私に任せてください。神官として、村を護る義務があります」
その声音には、確かな覚悟がこもっていた。
この少女——サラという神官は、ただのヒロイン役ではない。確かに、自らの立場を背負ってここに立っている。
「神よ、我が祈りを聞き届けたまえ——浄光の導!」
サラの手元に淡い金色の光が集まる。小さな光粒が舞い上がり、彼女の身体を中心に円を描いて広がっていく。
清らかな輝き。周囲の空気すら清浄に変わったような感覚がした。
「これが浄化の魔法か。これは確かに……綺麗だな。王であるオレの次に美しい!」
オレは一歩引いた位置からその光景を眺めた。
光を浴びた悪霊がうねるように動く。
光の結界に本能的な嫌悪を示しているのが分かる。
「これで……!」
サラの手のひらから、無数の閃光が放たれていく。それは悪霊の中心へと一直線に向かっていく。
閃光は悪霊を捉えて離さない。
やがて直撃すると、
——キィィィィンッ!!
鋭い金属音のような、耳を裂く悲鳴のような音が森に響いた。
「……弾かれたのか」
初めて見る光景なのに、ハーレムキングの力を持つオレは何が起きたか一目で分かった。
光が弾かれたようだ。
同時に、悪霊の体が波打つ。
だが、消えない。むしろその形は明確になり、人のような顔を作り出してこちらを見つめてきた。
禍々しいその姿は先ほどまでのぼんやりした形とは訳が違った。身に纏う雰囲気も辺りの空気感も、何もかも。
「っ……!?」
サラの目が見開かれる。
「効かない……? そんなはず……!」
彼女の足が半歩後ずさった。
その隣で、オレは静かに目を細めていた。
「とりあえず、こいつを倒せばチュートリアルはクリアってことでいいのか」
悪霊は吠えた。
音のない咆哮が空気を震わせ、森の木々が軋んだ。
それと同時に、地面が濁り、空気が澱み、圧倒的な負の気配が広がっていく。
「っ、ぐ……っ!」
サラが膝をついた。神聖魔法の光が弱まる。加護が、押し返されている。
「サラ」
オレは一歩、前に出た。
「だ、ダメです……! あなたには何もできないって、言ったでしょう……! 悪霊には物理攻撃が通じないんです! 神聖魔法で浄化するほか対処方法は存在しないんです!」
彼女は苦しげに声を絞る。
だが、オレはその言葉には答えなかった。ただ静かに前を見据える。
悪霊の瞳と視線がぶつかる。こちらに意識を向けてきたのが分かった。
「……ほう、ようやくこっちを見たな」
オレは右足を半歩引き、拳を軽く握る。
「ちょ、ちょっと……? あなた、まさか本気で……?」
サラの声が震える。何に対してか。悪霊に対してか、オレに対してか——それは分からなかった。
しかし、やることは決まっていた。
「ふはははははっ! サラよ、ここまでよく頑張った! あとはオレに任せてほしい! 女性のピンチを救うのはハーレムキングの務めだからな! さあ、悪霊よ、死に方を選ばせてやる!」
オレは高らかに笑った。
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