ハーレムキング

チドリ正明@不労所得発売中!!

文字の大きさ
8 / 48
2章 セイクリールの歩き方 編

ハーレムキングは神聖都市に行く

しおりを挟む
 旅はいい。何がいいって? 女の子と二人きりという構図が素晴らしい!

 隣を歩く神官少女は可憐で美しい。風に靡く艶やかな銀髪、ふりふりと揺れる慎ましいアクセサリー、どこかからか香る甘い香り……うむ、最高だ!

「そうは思わないか!」

「思いません! というか、心の声が全て漏れてましたよ! 何が“二人きり”ですか。距離感を間違えないでください! こっちにぐいぐい詰めてこないでください」

「ふむ……オレが一歩近づくたびに、君の顔が赤くなる。それはつまり、距離を詰める価値があるということではないのか?」

「ち、違います! これは……そ、そう、日差しのせいです! あと、あなたが暑苦しいからです!」

「なるほど、オレは太陽のように熱く眩い存在というわけだな! それは喜ばしい! 全人類に必要とされる存在と肩を並べられるとはな! ふはははははっ!」

「もう! 話を聞いてぇぇぇっ!」

 サラのツッコミが今日も冴えている。

 村を出て、早くも数時間。
 オレたちはセイクリールへと続く街道を歩いていた。サラによるともうすぐ着くらしい。

 ちなみに、村からは悪霊退治の礼と称して馬車を譲られそうになったが、サラが「神聖都市セイクリールの神官である私は施しは受けないのです。当たり前のことをしただけですから」と言って断った。
 なので、移動は徒歩だ。

 まあ、苦ではないから気にしていない。むしろ、サラの善良な人間性を垣間見ることができたことが喜ばしいくらいだ。
 村人の前ではあんなんでも、オレの隣を歩く彼女は、ツンとデレの間を揺れ動いているしな!

「……あの、なんでニヤニヤしてるんですか? 視線を感じて怖いんですけど」

「ずっと君を見ていたい、そう思ったのだ!」

「っ……か、揶揄わないでください! 別に私はあなたのことなんてなんとも思ってないんですから!」

 と、言いつつも、サラの口調は踊っていた。
 実に可愛い。オレは幸せ者だ。

「それで、本当にセイクリールに行ってどうするんですか?」

 一つ咳払いをしたサラが空気を一新した。

「セイクリールに行く理由? 簡単だ! 新たな出会いを求めて、だな!」

「……」

「いや、冗談だ。半分だけな」

「やっぱり冗談じゃないんですね!? 私という人がいながら他の女性との出会いを求めるなんて最低です!」

 サラが早足で先を歩き始める。だが、彼女の背筋はまっすぐで、足取りも迷いがない。

「ふむ……君の歩く姿も、なかなかに絵になる。額縁に入れて寝室に飾りたいくらいだ。最高の目覚めになるのは間違い無いだろう! それに、その口ぶりだと君はオレのことを既に受け入れてくれたように聞こえるのだが? それもまた最高だ!」
 
「や、やめてください。褒め方が気持ち悪いんですけど……」

 そう言いながらも、耳がほんのり赤いのは見逃さない。うん、これはもうデレ始めている。

 しかも否定しないとは……うむ、やはりサラは最高だ!



 やがて、丘を越えた先に白く輝く街が姿を現した。

 高い石の外壁。真っ直ぐ伸びる大理石の道。
 その先に、空を衝くように建つ巨大な尖塔があった。

「ここが、神聖都市セイクリールか……」

「ええ。世界でも最も格式高く、神の言葉を最も大切にする、“祈りの都”とも呼ばれています」

「ふむ……つまり、美しい女性がたくさんいると」

「どこからそう繋がるんですか!?」

 サラが振り向いて詰め寄ってきた。
 だが、その顔はどこか安心したようにも見えた。

「ここでは、ちゃんと振る舞ってくださいね。あなたみたいな王様が暴れたら、大騒ぎになりますから」

「心配するな。オレは上品で繊細だ。貴族のように優雅に、騎士のように誠実に、王のように堂々と振る舞う。それこそがハーレムキングだ!」

「……あなたの言ってるところが信じられないんですけど」

「むしろ言わなければ伝わらない。女性は言葉での説得に弱いと聞くからな!」

「間違ってはないけど、悪用してる!」

 そうして騒がしくも、楽しげなやり取りを続けながら、オレたちは聖都の門をくぐった。

 ここが、神聖なる街——そしてきっと、次なるハーレムの舞台だ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

インターネットで異世界無双!?

kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。  その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。  これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。

処理中です...