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2章 セイクリールの歩き方 編
ハーレムキングは観光を楽しむ
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「ふははははっ! ここがセイクリールか! 清らかで美しい街並みだな!」
到着早々、オレは胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
石畳の街道。真っ白な壁が連なる街並み。
修道服の少女たちが行き交い、鐘の音が高らかに鳴り響いていた。
神父ももちろんいる。が、眼中にない! オレは麗しい女の子しか見ていないからな!
「まさに、理想的なハーレム開拓地だ! 来てよかった!」
「ちょっとぉ!? 勝手にハーレムの開拓地にしないでください! ここは神聖な場所ですから!」
横を歩くサラが、苦虫を噛み潰したような顔でツッコんでくる。
「黙ってついて来いと言ったのは君だろう? オレはそれに従って観光を始めているだけだ」
「……もうなんでもいいです」
呆れたサラを尻目に、それでもオレは気にせず歩く。
広場には噴水があり、子どもたちが水を跳ね上げてはしゃいでいる。
露店ではハーブ入りの焼き菓子が並び、修道女たちが買い物袋を手に歩いていた。
「あれは近隣の森で採れる聖樹の実を練り込んだクッキーですね。清めの儀式で配られるやつです。あとは神聖魔法を付与させたお菓子も人気ですね。ほんの少しだけ倦怠感を和らげる効果があります」
「ほう、ならば君も食べるべきだ、サラ! 旅路で疲れているだろう?」
「私は食べ飽きるくらい食べたのでいらないです!」
「ふむ、そうか。では、オレがいただこう」
「な、なんで買ってるんですか! 財布はどこから出したんですか!? 一文無しのくせに!」
「確かにオレは一文無しだが、礼として葉っぱを一枚渡した。それは王が身につけていた神聖な葉っぱだから、そんじょそこらの葉っぱとは訳が違う。神聖な贈り物だと説明したら随分と高評価だったぞ」
「その葉っぱって、あ、あなたが、その……こ、股間を隠すためにつけていたやつですよね!?」
「無論! 神聖な葉っぱだ!」
サラは額を押さえていた。かなり引いている。
何を引くことがある。王が身につけたアイテムではないか。神聖以外の何者でもない。
オレは神殿前の階段を見上げて、ふと口にする。
「そういえば、あの塔はなんだ?」
「神託の塔です。私たち神官は神殿で祈りを捧げ、神託の塔で神託を受けます。あれこそがセイクリールの象徴であり、神との対話が行われる場所。限られた者しか中には——って、ダメです! 勝手に登らないで!」
「ふふん。高い場所から街を見下ろのは、さぞ気分がいいのだろう!」
「ダメです! 中に階段があるので普通登るならそこからです! そもそも一般の方々は登れませんから!」
頂上からの景色が気になったオレはよじ登ろうとしたが、サラが決死の形相でしがみついてきたから中断した。
「やっぱり王様ってただの高所好きの子どもなんじゃ……」
ぶつくさ言われるが気にしない。オレは王、ハーレムキングだからな!
そうして街のあちこちを見て歩いているうちに、オレの懐は焼き菓子と紙細工でパンパンになり、サラの眉間のシワは限界を迎えていた。
「もう! さっきからずっと無許可で買い物、女性に声をかけまくる、教会の鐘を勝手に鳴らす! 祈りの時間中にステンドグラスを指差して“あれはきっとハーレムの暗喩だ”とか言う! 意味がわからないです! 何をやってるんですか!」
「む……言動にやや問題があったか?」
「ややじゃなくて全部ですぅうううう!!!」
サラが本気で泣きそうになっていた。
「……ふむ、結構目立っていたかもしれないな」
「もう遅いです! 神殿で何か言われたら、この人は知らない人だって言いますからね!?」
「安心しろ、サラ。もし何か言われたら、オレがこう言ってやるさ」
「は?」
「“彼女はオレの大切な旅の仲間で、唯一無二のツッコミ役だ。勝手な真似は王が許さぬ”と」
「う、嬉しくないけど……ちょっとだけ……なんか……」
サラが赤面して、口ごもった。
オレは微笑む。
「さあ、神殿に行こうか。君はそこに用事があるのだろう?」
「……ほんっと、ずっと振り回されっぱなしです」
そう言いながら、サラは肩を落として歩く。
オレはそんな彼女の隣で、ふと気になっていたことを口にした。
「ところで、サラ。神殿には何の用があるんだ?」
聞いた瞬間、サラの歩みが少しだけ遅くなった。
「……報告です。村の悪霊の件を上に伝えるんです。それと……もう一つ」
「ほう?」
「“神託の器”というモノを私が割ってしまったので、それについて話をつけに行きます。調査は打ち切られていますが、まだ正式に処分が決まってないんです。私は……どうしても納得できないので……」
その声音には、先ほどまでのツッコミまみれの彼女とは違う、少しだけ芯の強さが滲んでいた。
「自分の口で言うんです。もう一度調査の許可を出してほしいって。……たとえ無視されても、何度でも」
「なるほど。それは立派な理由だな」
オレは頷いた。
知ったように肯定したが、神託の器とやらは全く存じ上げない。
何やら立派な理由のように思えた。善良な心を持つサラのことだ。さぞ大層な理由があるに違いない
「もしも無視された時はオレが騒ぎ立ててやる。神殿の床でも天井でも、オレの名前を刻んでやるぞ! ハーレムキング・デイビッド、ここに来たれり! とな!」
「やめてください!逆効果ですから!」
それでも、どこかサラの声は明るかった。
こうしてオレたちは、神聖都市セイクリールの神殿へと足を向ける。
到着早々、オレは胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
石畳の街道。真っ白な壁が連なる街並み。
修道服の少女たちが行き交い、鐘の音が高らかに鳴り響いていた。
神父ももちろんいる。が、眼中にない! オレは麗しい女の子しか見ていないからな!
「まさに、理想的なハーレム開拓地だ! 来てよかった!」
「ちょっとぉ!? 勝手にハーレムの開拓地にしないでください! ここは神聖な場所ですから!」
横を歩くサラが、苦虫を噛み潰したような顔でツッコんでくる。
「黙ってついて来いと言ったのは君だろう? オレはそれに従って観光を始めているだけだ」
「……もうなんでもいいです」
呆れたサラを尻目に、それでもオレは気にせず歩く。
広場には噴水があり、子どもたちが水を跳ね上げてはしゃいでいる。
露店ではハーブ入りの焼き菓子が並び、修道女たちが買い物袋を手に歩いていた。
「あれは近隣の森で採れる聖樹の実を練り込んだクッキーですね。清めの儀式で配られるやつです。あとは神聖魔法を付与させたお菓子も人気ですね。ほんの少しだけ倦怠感を和らげる効果があります」
「ほう、ならば君も食べるべきだ、サラ! 旅路で疲れているだろう?」
「私は食べ飽きるくらい食べたのでいらないです!」
「ふむ、そうか。では、オレがいただこう」
「な、なんで買ってるんですか! 財布はどこから出したんですか!? 一文無しのくせに!」
「確かにオレは一文無しだが、礼として葉っぱを一枚渡した。それは王が身につけていた神聖な葉っぱだから、そんじょそこらの葉っぱとは訳が違う。神聖な贈り物だと説明したら随分と高評価だったぞ」
「その葉っぱって、あ、あなたが、その……こ、股間を隠すためにつけていたやつですよね!?」
「無論! 神聖な葉っぱだ!」
サラは額を押さえていた。かなり引いている。
何を引くことがある。王が身につけたアイテムではないか。神聖以外の何者でもない。
オレは神殿前の階段を見上げて、ふと口にする。
「そういえば、あの塔はなんだ?」
「神託の塔です。私たち神官は神殿で祈りを捧げ、神託の塔で神託を受けます。あれこそがセイクリールの象徴であり、神との対話が行われる場所。限られた者しか中には——って、ダメです! 勝手に登らないで!」
「ふふん。高い場所から街を見下ろのは、さぞ気分がいいのだろう!」
「ダメです! 中に階段があるので普通登るならそこからです! そもそも一般の方々は登れませんから!」
頂上からの景色が気になったオレはよじ登ろうとしたが、サラが決死の形相でしがみついてきたから中断した。
「やっぱり王様ってただの高所好きの子どもなんじゃ……」
ぶつくさ言われるが気にしない。オレは王、ハーレムキングだからな!
そうして街のあちこちを見て歩いているうちに、オレの懐は焼き菓子と紙細工でパンパンになり、サラの眉間のシワは限界を迎えていた。
「もう! さっきからずっと無許可で買い物、女性に声をかけまくる、教会の鐘を勝手に鳴らす! 祈りの時間中にステンドグラスを指差して“あれはきっとハーレムの暗喩だ”とか言う! 意味がわからないです! 何をやってるんですか!」
「む……言動にやや問題があったか?」
「ややじゃなくて全部ですぅうううう!!!」
サラが本気で泣きそうになっていた。
「……ふむ、結構目立っていたかもしれないな」
「もう遅いです! 神殿で何か言われたら、この人は知らない人だって言いますからね!?」
「安心しろ、サラ。もし何か言われたら、オレがこう言ってやるさ」
「は?」
「“彼女はオレの大切な旅の仲間で、唯一無二のツッコミ役だ。勝手な真似は王が許さぬ”と」
「う、嬉しくないけど……ちょっとだけ……なんか……」
サラが赤面して、口ごもった。
オレは微笑む。
「さあ、神殿に行こうか。君はそこに用事があるのだろう?」
「……ほんっと、ずっと振り回されっぱなしです」
そう言いながら、サラは肩を落として歩く。
オレはそんな彼女の隣で、ふと気になっていたことを口にした。
「ところで、サラ。神殿には何の用があるんだ?」
聞いた瞬間、サラの歩みが少しだけ遅くなった。
「……報告です。村の悪霊の件を上に伝えるんです。それと……もう一つ」
「ほう?」
「“神託の器”というモノを私が割ってしまったので、それについて話をつけに行きます。調査は打ち切られていますが、まだ正式に処分が決まってないんです。私は……どうしても納得できないので……」
その声音には、先ほどまでのツッコミまみれの彼女とは違う、少しだけ芯の強さが滲んでいた。
「自分の口で言うんです。もう一度調査の許可を出してほしいって。……たとえ無視されても、何度でも」
「なるほど。それは立派な理由だな」
オレは頷いた。
知ったように肯定したが、神託の器とやらは全く存じ上げない。
何やら立派な理由のように思えた。善良な心を持つサラのことだ。さぞ大層な理由があるに違いない
「もしも無視された時はオレが騒ぎ立ててやる。神殿の床でも天井でも、オレの名前を刻んでやるぞ! ハーレムキング・デイビッド、ここに来たれり! とな!」
「やめてください!逆効果ですから!」
それでも、どこかサラの声は明るかった。
こうしてオレたちは、神聖都市セイクリールの神殿へと足を向ける。
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