ハーレムキング

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4章 論理と感情を合わせる方法 編

ハーレムキングは未来を見ている

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 深夜のイデアは、嘘のように静まり返っていた。
 先の一件があったからか、夜の街は全て閉店しているようだ。

 まあ、当然か。

 広場のベンチに腰掛け、オレは夜空を見上げていた。
 月が高く、風が心地よい。

 しばらくすると、足音が近づく。
 現れたのは、銀の鎧を身に纏った女騎士——アレッタだった。
 なぜ彼女がここにいるのか、答えは簡単だ。オレが彼女たち警備隊の拠点に行き手紙を投げ入れたからだ。

「……大切な話ってなによ」

「ふはははははっ! 王は夜の風を愛する生き物なのだよ。夜にしか見えないものもあるからな!」

 オレが肩をすくめると、アレッタは隣に腰を下ろし、水筒から一口水を含んだ。

「サラは?」

「寝た。布団の中で小さくなってな。まあ、さすがに今日は疲れたのだろう」

「そっか」

 少しの沈黙。

 そして、オレは真顔になった。

「先刻、サラに預けたあの小さな石は、死者蘇生という禁呪の触媒だ。つまり、あの石を用いて禁忌を犯し、禁呪を完成させることができるかもしれない。そんな代物だ」

「は?」

 当然のことにアレッタは口をぽっかり開けていた。
 だが、首をブンブン振って我に返って続けた。

「あんた、やっぱり変だよ」

「おや、褒め言葉として受け取っておこう。王は常に特別な存在であるからな!」

「そうじゃなくて……あの石のこと。なんでサラに預けたの? やばいんでしょ? あの石」

 アレッタの目は真剣だった。

「やばいかやばくないかと言われれば、やばい石なのだろう」

「禁呪の触媒、しかも死者蘇生なんて……それこそ、きちんとした人に渡すべきじゃないの? あの子にそんなものを持たせる意味って、なに?」

 アレッタの言葉は震えていた。若干気持ちが昂っているようだ。戸惑いだろう。

 だが、心配ない。王はそれすら見透かしている!

 オレは軽く笑い、それから視線を夜空に投げた。

「簡単なことだ。オレはサラに託したのだ。“託す”とは、信頼の証明であり、同時に問いかけでもある」

「問いかけ……?」

「ああ。サラが、それをどう扱うか。どう向き合うか。どこに立ち、何を選ぶか。それを、彼女自身に問いかけるためだ」

 アレッタは黙ってオレの横顔を見つめていた。

 オレは続ける。

「サラは、かつて妹を亡くした。その痛みは今も、癒えていない。“もしあの時こうしていれば”、“もし助けられる力があったなら”と、未だに嘆くこともあるのだろう? 妹の死はそれほどまでにサラの人生に多大な影響を与えたのだ」

「……」

「その感情は、誰にも止められない。生き返らせたいという願いは誰にも否定はできん。それが人間だ。だからこそ、オレはあの石を渡した」

 拳をゆるく握る。

「サラが、真にそれを望むのか。使うのか、捨てるのか。それとも持ち続けて悩むのか、それを彼女自身に選ばせるために、だ」

「そんな……でも、あの子がそれに飲まれたら……」

「飲まれはしない。君はオレよりもよく知っているはずだ。サラは、誰よりも真っ直ぐで、強い」

 その言葉に、アレッタは小さく唇を噛んだ。

 だが、反論はしなかった。

「オレが思うに、神聖魔法は誰かのための魔法だ。補助的な役割しか担えないことがそれを証明している。そして、サラはいつも“誰かのため”に魔法を使ってきた。妹を救えなかった過去も、今を救う力に変えようとしている。あの石が、彼女の願いと過去と理想を交差させる鍵になると、オレは信じている」

 言い切って、オレはアレッタの方へ向き直る。

「そして、その結果がどんなものであろうと、オレは責任を取る。王とはそういうものだ」

 アレッタはしばし無言だったが、やがて深いため息をつき、そっぽを向いてぽつりと呟いた。

「……なんか、すごいな、あんた」

「ふはははははっ! よく言われる!」

「でも……信じてる。その子を選んだ王様も、選ばれたサラも。……信じたからには、あたしも背中押すわよ」

「それでこそ、我が騎士系もとい幼馴染系ヒロインよ!」

「そういうのやめろって言ってるでしょ!」

「ふははははっ! やめろと言われてやめる王ではない!」

「むかつくっ!」

 アレッタは言葉ではそう口にするものの、頬はやんわりと緩んでいた。以前よりも心を開いてくれた証拠だ。

「何ニヤニヤしてんのよ」

「ふっ……アレッタ、君の凛々しさの中にある麗しさに見惚れていたのだ。オレに対する優しさと信頼が垣間見えて喜ばしい限り!」

「……ばかみたい」

 ツンとしたアレッタはそっぽを向いて息を吐いた。
 話は終わったかに思えた。しかし、まだ伝えなければならないことがあった。
 
 そこでオレは言った。

「明朝、サラはおそらくセレナの元へ向かうだろう」

「セレナ?」

「魔法の研究やらなにやらで著名なスペシャリストらしい。彼女もまたオレのヒロインなわけだが、今はまだ堕とすに至っていない」

「あんたのヒロインかどうかはいいとして……その人も禁呪に触れようとしてるの?」

「どうだろうな。ただ、元素魔法の発展系である構築魔法の研究者ならば、誰も成し得たことのない未知の禁呪に興味が湧くのが自然だと思うがな。もしかすると、既に独自の研究に着手し始めているかもしれない。ともかく、サラはオレが見張っておくから、そちらは任務を進めてかまわない。ではな! アレッタよ、いや、麗しきヒロインよ!」

「ちょっと! サラに何かあったら承知しないんだからね! 絶対に守りなさいよ!」

「ふはははははっ! わかっている! サラは何が何でもオレが守り通す! 安心するがいい!」

 オレはそれだけ告げて立ち去った。

 サラは、あの石をどうするのか。
 願いは、想いは、彼女をどこへ導いていくのか。

 そして、オレは静かに確信していた。

 彼女はきっと“過去”を超える。
 あの石は、その扉を開く鍵となる。




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