俺が悪役令嬢になって汚名を返上するまで (旧タイトル・男版 乙女ゲーの悪役令嬢になったよくある話)

南野海風

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147.派閥としては、無骨な殴打や刀もあるけど……

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 冒険の荷造りを済ませ、今度はレンに頼んで買ってきてもらったアイテムを一つ一つ確認する。

「『聖水』5本、『聖水玉』10発、『薬草』と『毒消し草』5束ずつ、と……」

 ゲームでは全然使わないアイテムばっかだが、現実だからな。保険の意味も兼ねて本に書いてあるアンデッド対策に添って購入してみた。……「聖水玉」ってこんなんなんだな。ゲームでもこの世界の本でも名前だけしかなかったから知らなかった。
 ちなみに物はピンポン玉大のガラス玉で、中に白い煙が漂っている。ガラスではないが、それっぽく硬質である。なかなか神秘的で綺麗だ。使い捨てアイテムだけどな。

 次に、装飾品だ。

「『野良猫の指輪』と『白蛇のタリスマン』、と」

 野良猫かどうかはわからんが、可愛い猫……でもねえな。切り分けたスイカみたいにニタニタした猫の細工が付いた黒い指輪が「野良猫の指輪」だ。憎たらしい顔してんな……
「白蛇のタリスマン」は、ぶっちゃけ白い蛇の抜け殻だな。それをてのひらサイズの正六角形にカットして紐を通したものだ。雑なお守りって感じだ。

 この二つが、俺が憶えている限りのアイテムドロップ率アップの装飾品だ。触ってみた感じ、何らかの魔法効果は感じる。そんなに強くはないようだが。
「純白のアルカ」では一人一つしか装備できなかったが、現実ならどっちも一人で身につけられるよな? ……いや、念のために別々で装備しよう。

「身につけるならどっちがいい?」

 俺の確認作業を確認するかのように傍で佇み見ていたレンに、指輪とお守りを指し問うと、

「指輪で」

 即答だった。

「猫、好き?」
「はい。特にその指輪の猫は可愛いと思います」

 え? マジで? ……憎たらしくない? アイテム泥棒のメラ○ーっぽくて。

「女の子の趣味って変わってるなぁ」

 改めて見るも、どう見ても憎たらしい。
 俺たちの世界でも「キモかわいい」やら「ブサかわいい」なる不思議なジャンルがあったもんなぁ。顔がひらべったい猫とか、ブルドッグとか。……ブルドッグは俺もちょっと可愛いと思うが。

「もう女の子という歳でもないですけどね」
「何言ってるの? 男は結婚するまではお兄さんだし、女子は結婚するまでは女の子だし結婚してから二十年はお姉さんよ?」
「……強引だと思います」

 俺も実はそう思う。でも現代日本ではだいたいこれが正解なのだ。例外もあるが、俺の正解はこれだ。……お姉さんを怒らせていいことなんて一つもないからな。

「……じゃあ、まあ、冒険中はこれ着けといて」

 ちょっとお姉さん関係と色々あったことを思い出して、テンションが落ちてしまった。ホームシックとはまた違う嫌な思い出である。気持ちを入れ替えよう。

「効果はあるんでしょうか?」

 店売りのマジックアイテムは効果が怪しいものが多い、ってのがこの世界の常識だ。ベテラン冒険者なら有名な錬金術師にオーダーメイドしたり、冒険先で古代のアイテムを見つけたりして身につけているもんだからな。

 効果は怪しいくせに、値段は普通にマジックアイテムだからな。金をドブに捨てる覚悟でもしないとなかなか手は出せないだろう。
 かく言うレンも、「気にはなるけど手は出せない」という感じで、店売りのマジックアイテムは敬遠しているのだとか。

 アレだろ。
 千円自販機みたいな心理だろ。
 千円出す価値があるとは思えないけど3DSとか入ってるらしいから当たるかもしれないし一度くらいやってみるか、みたいな感じだろ。もしくは宝くじかな。

「検証しないと確かなことはわからないけど、デザインが気に入ったんならいいんじゃない?」
「くれるんですか?」
「あげる、って言っても受け取らないでしょ?」
「そうですね。高価なものですし」

 そう言うと思ったよ。

「じゃあ預かってて。ずっと」
「それは……」

 さて、次だ次。
 可愛くない指輪を渡し、戸惑うレンを無視して、最後の一つを確認した。

「『シャインの紋章』2つ、と……」

 聖人シャイアの顔が掘られたメダルだ。魔力を込めると魔除け効果が発生するアイテムで、何回か使うと砂になるんだとか。
 使うかどうかはまだわからないが、必要に迫られた時にこれがないとまずいからな。




 今日は昼以降の訓練はなしだ。早めに風呂に入って夕食を取り、夜まで仮眠である。
 全然眠くなかったが、夜に備えてベッドで横になった。

 眠いんだか寝たんだか起きてるんだかというはっきりしない状態のままうだらだら過ごし、レンに起こされた時にはすっかり夜になっていた。
 寝た気はするが、あんまり良い睡眠は取れてない気がするな……

 久しぶりに装着した「鉄のアームガード」と「鉄のレイピア」、新調した魔法で強化した制服を着て、準備完了だ。
 ……まあたぶん、またレイピアなんて使わないんだろうけどな。

「行きましょうか」
「ええ」

 同じく制服姿で剣とダガーを帯びたレンとともに、購買部へ向かう。

「ジングルさんは現地で合流するんでしたね?」
「ええ。……一応顔見知り?」
「『ドラゴンの谷』で会っただけです。あの後も会ってません。あの時はまともな話もできませんでした」

 そうか。俺もあの時、まともな別れの挨拶さえせずに「帰還の魔石」で帰ってきて、それっきりだった。レンも似たようなものだと言うならほぼ初対面だな。

「ヨウさんの命を助けたんですよね。ぜひお礼を言わないと」
「やめろよねえちゃん、恥ずかしいだろ」
「実弟の体で発言しないでください」

 のんびり歩く夜道の先には、購買部の明かりがある。

 あんまり冒険フィールド自体に出たことがない俺だけに、前の「ドラゴンの谷」ではだいぶ緊張していた気がするが、今回は割と自然体だった。
 やっぱり敵が弱いフィールドってことで、ある種の安心があるからだろう。

 おまけに、光魔法が劇的に効果を上げるモンスターばっかいる場所だからな。

 ――不安があるとすれば、リアルゾンビがいることだが。

 調べてみたら確実にいるっぽいんだよな、リアルゾンビ……
 テレビモニター越しならともかく、本物をこの目で見て、ともすれば襲われるというのは、かなり怖いのではなかろうか。お化け屋敷とか怖いから普通に嫌いな俺が、ホラーでグロいのを直視して正常でいられるかなぁ……

「レンさん、死霊系ってどう? 得意?」
「得意も何もないですよ。モンスターはモンスターです。それ以上何もないです」

 なんというクールガール! いつも通りだな!

「じゃあ俺が『ゾンビ怖い! レンさん守って!』って言ったら?」
「その時は大人しく帰りましょう。ベテラン冒険者でも死霊系を恐れ、避ける人は多いですから。恥ずかしくないですよ」

 ……そうできたらいいんだけど、すでにアイテム買ったりして散財してるからなぁ。せめてその分くらいは稼ぎたいよなぁ。

 まあ、気負わずがんばるか。
 昨今のゾンビゲーはバッテリーだのなんだのを組み合わせた即席電流バットやら、美女がバイオレンス丸出しで刀やらで戦うものなどもあるが、ライトなヲタクとしては、やっぱりゾンビは銃で撃ちたいなぁ。




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