148 / 184
164.探検! 発見! 僕の財宝!
しおりを挟む見えているだけに、「始まりの島」まではすぐである。
到着する前に、ぜひ話しておかねばならないだろう。
「集合!」
船に乗ってしばし、それぞれがパラパラと散っているので、船乗りたちの邪魔にならない後方で連中を呼び出した。……あ、タトゥーマンたちは結構ですよ? 仕事してくださいね。怖いから来んな。
「どうした?」
船のあれこれをタトゥーマンに聞いて談笑していた超アクティブアニキが、代表して口を開いた。
「今からわたしが話すことをよく聞いてください」
俺はポケットから数枚の紙を取り出し、それを見せながら語りだした。
――果たして悪役令嬢はどのように考えて財宝へと辿り着いたのか、を。
これをやっとかないと、あとで痛いほどつつかれそうだからな。
これから向かう「始まりの島」は、始めて大海賊ギャットの財宝が見つかった島のことだ。ここからギャットの宝探しイベントがスタートしたのである。
サラ・ドジェス近海には、無人島が沢山ある。
いや、無人島だった島、かな。
宝探しのおかげで、簡素ながら宿泊施設などのもてなす施設ができているそうだ。
大海賊ギャットが死んだのが、約二百年前だ。
それから今日に至るまでに見つかった宝は、六つ。というか六ヶ所だ。いずれもこの辺りの無人島から見つかっている。
で、だ。
「最後に見つかったのは、今から五十年ほど前になるそうです。そしてこれが宝のあった場所を示す、この辺りの地図です」
本に載っていた地図を紙に書き写し、更に調べて「宝が見つかった六ヶ所」に印を打ったものだ。
点在する島の数は二十を超え、またこの二百年でどの島も必ず一度は調べられたはずだ。
これだけ探しても宝は見つからない。もしかしたらもう宝はないかもしれない。……と見せかけて、隠すのが巧妙なだけではないか。
そんな「あるのかないのか」って疑惑が、今も冒険者や野心家を宝探しイベントに駆り出すわけだ。
そして、ここからが本題だ。
「次に、わかっている限りですが、大海賊ギャットの最後の航海……『宝を隠すための旅』をできる限り追いかけてみた結果がこれです」
二枚目の紙には、地図と宝の印と、更に「ギャットがどのような航海ルートを辿ったのか」という足跡を辿った矢印を付けてみた。
最初はサラ・ドジェスで、「始まりの島」へ向かい、島々を縫うように複雑な航路を行っていて、最後の島から続く矢印はない。
これは、これまで宝探しに乗り出した連中が、徹底的に調べたものだ。信憑性は……まあ、一考の価値あり、くらいかな。
だがここはどうでもいいのだ。
ぶっちゃけ今話しているのは、結論ありきの話にこじつけるための蛇足だからな。もっともらしいこと言ってるけどな。
「最後の航海は、ギャット一人で旅立ったと言われています。だから『この航海で宝を隠したのではないか』と考えられています。……もしかしたら病気か何かで長くなかったのかもしれません」
いくら魔法で船を動かせるからって、一人で海に出るなんて無謀極まりないからな。案の定の結果になったみたいだしな。
「そしてギャットの船は、『最後の航海』から戻ることなく行方不明になりました。もっとも高い説では、『ギャットの船を見なくなったのは、大型の嵐が通った後』から。つまり嵐に揉まれて沈んだのではないか、と言われています。今も見つかっていません」
そしてこれから見つけることになるわけだが。
「ここからはわたしの推測になります。
宝を隠す以上、ギャットは宝を誰にも渡したくなかった……と言いたいところですが、歴史がすでに証明しているように、宝は見つかっています。これはギャットが『あえて見つかるように隠していた』と考えれば納得できます」
返事はない。
皆そこそこ真剣に俺の話を聞いている。話し始めた時は冷めた目をしていた弟でさえ、ちょっと興味ありげな顔になっていた。
「情報によると、この航海の順番で見つかった宝を追うと、『後に回った宝ほど高額になっている』らしいです。
具体的に言うと『始まりの島』では宝箱一つに財宝が、航路を追って六つ目に位置する財宝は宝箱三つ分あった。
つまり『後に隠した財宝ほど高額になっている』と推測できます」
貸せ、と矢印付きの地図を奪ったキルフェコルトが、「要するにだ」とニヤリと笑う。
「最後に隠した宝が大本命、ってこったな」
そういうことだ。そして俺たちはそれを取りに行く最中だ。
「ちょっと待て」
ジングルは気づいたようだな。
「ギャットの船は沈んだ、って可能性が高いんだよな? だったら、もしかしたら、宝は……」
いいとこ突いた! いいとこ突いたよジングル!
「わたしもそう考えた。『宝を隠す前に船が沈んだのではないか』と」
まあ考えたっつーか、ゲーム中にこんな風に導かれるんだよ。小悪党の街でインチキ地図が五、六枚ほど売ってて、探しに行ってもはした金しか見つからない。とある依頼をこなしていき本物の地図を見つけないと進めないようになっているのだ。
で、本物の地図を使って一番遠い島まで行って、「もしかしたらギャットの船は沈んだんじゃ……」みたいなフラグを立てないと見つからない仕様になっていた。
現実ではフラグとか関係ないけどな! あるものはそこにあるからな! だから直接取りにいく!
「ところで皆さん、『宝を隠す』ならどこがいい? ギャットの気持ちを考えるなら、『最後に隠す宝』ほど大切で、簡単には見つけて欲しくなかったと思います。
つまり『この近海で一番見つかりづらい場所に隠そうとした』。わたしはそう考えます」
キルフェコルトが独占している矢印地図を全員で覗き込み、うんうん唸る集団。輪に入らないのはメイドたちだけだ。クローナに微笑みかけたらすすっと距離を取られて微笑み返された。……ちょっと傷ついた。更に俺から庇うようにレンが視界に割り込んだ。「おまえ何した?」と言いたげな顔して。……悲しくなってきた。
「よく考えてきたな、嬢ちゃん」
うわっ、タトゥーマンが来た! こっわ! ……首のサメの絵、素敵ですね!
「宝、見つかるといいな。見つかったら一杯おごってくれや」
どうにも本気にしてないようで、俺の背後を通り抜けて何かしらのロープを結わえ始めた。どうやら通りすがりにちょっと聞こえただけらしい。
まあこのイベントの船乗りにしてみれば、これは「何百回もやってる宝探し」の一回に過ぎない。これまで死ぬほど空振りしてるだけに、もう微塵の期待も湧かないのだろう。いろんなもっともらしい説も聞いてるだろうしな。
「――昔、こんな本を読んだことがある」
と、珍しく穏やかではない真剣な表情のラインラックが、地図を見ながら呟いた。
「あえて一番注目される場所に隠す、いつも見えているがゆえに疑いの目は向けられない」
「あるいは、立っている自分の靴の裏はどう頑張っても見えやしねえ、ってのもあったな」
出たよ! 王子連中の教養が出たよ!
「「『始まりの島』だ」」
声を揃えて結論が出た。ファンならたまらない瞬間かもしれない。俺はファンじゃないからどうでもいいけど。
「一番最初に見つかったのは、門前払いをするはした金だね」
「もうすでに見つかっている以上、そんな場所を何度も念入りに探す奴はいない、とギャットは考える」
「もっとも有名な島だ」
「そして一番注目された記念すべき島でもある」
「「隠すならここだ」」
二度目のシンクロ来ましたー! でもファンじゃないから別にどうでもいいけど。
で、付け加えるとだ。
「『最後の航海』で途切れた情報。最後に立ち寄ったとされる島から、『始まりの島』まで移動するつもりだったギャットは、しかし途中で嵐に遭って消息を絶ってしまう。つまり――」
「「「最後の島と『始まりの島』を結ぶ航海路の間に沈んでいる」」」
……っておい! 俺までシンクロに巻き込むなよ! 一人で言わせろよ! 俺別にファンじゃねえから声揃ったって嬉しくねえぞ!
「あっ! だから『真眼のルーペ』か!」
おう! ジングルくん正解だよ!
「まあそういうことね。『真眼のルーペ』は魔素を多く含む物体を、色濃く見せて表示するマジックアイテムよ。だから――」
ゲームでは鑑定アイテムで、売値がわかるくらいしか効果がないのだが。
でもこれは、この宝探しのキーアイテムだからな。
「これを使えば海底に沈んでいる財宝が見えるわけ」
――ちなみに、ちゃんと実験してできることを確認してきてるぞ。川に金貨を投げ込んで見えるかどうか試したりな。これでレンは「イケる!」と判断した。俺も安心した。レンがそう判断したなら、俺が太鼓判押すより信頼できるからな。
さて、これで話は一旦終わりで、次のステージに行くわけだ。
「クレイオル」
「は、……はい」
さすがに興奮してきているらしき弟は、俺に声を掛けられて、表情を取り繕った。もういいよ、はしゃげよ。
「わたしたちの推測では、あっち。あの方角にギャットの船が財宝ごと沈んでいるわ」
「…………」
「あなたが一番最初に発見しなさい」
と、俺は絶対に落とさない、なくさないよう革紐まで通して服の下に忍ばせておいた『真眼のルーペ』を外し、弟の首に掛けた。
「フロントフロン次期当主として、きっちり勤めなさい」
「お、お姉様……」
よし、これで「俺、次期当主狙ってないYO」「おまえやれYO」「YOUやっちゃいなYO」と本気で姉が思っている、と弟に意思表示できたはずだ。きっちり背中を押せたはずだ。
何せ王子連中の前での行動だからな。
この宝探しの一番の功労者は、一番最初に宝を見つけるのは、フロントフロン家次期当主クレイオル・ディル・フロントフロンだ。
たとえ宝を見つけたことが明るみにでないとしても、王子たちはこの事実を知っている。これほど心強い証人もいないだろう。こいつらに誓って次期当主はおまえだよ、と言ったようなもんだからな。
「早く探せよ」
「そうだね。私も楽しみだ、早く見つけてくれ」
王子たちも後押しし、俺に何か言いたそうだった弟は「お、お任せ下さい」と答え、俺の差す方向を『真眼のルーペ』で覗き込んだ。
そして――
「……あそこ! 色とりどりの強い光が見えます!」
あ、やっぱ簡単に見つかったわ。よかったー。
……ここまで盛り上げといて宝がなかったらどうしようかと、ちょっと心配になっていたのは、墓まで持っていく秘密にしとこうと思う。
22
あなたにおすすめの小説
断罪済み悪役令嬢に憑依したけど、ネトゲの自キャラ能力が使えたので逃げ出しました
八華
ファンタジー
断罪済みの牢の中で悪役令嬢と意識が融合してしまった主人公。
乙女ゲームストーリー上、待っているのは破滅のみ。
でも、なぜか地球でやっていたオンラインゲームキャラの能力が使えるみたいで……。
ゲームキャラチートを利用して、あっさり脱獄成功。
王都の街で色んな人と出会いながら、現実世界への帰還を目指します!
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!
月芝
ファンタジー
国の端っこのきわきわにある辺境の里にて。
不自由なりにも快適にすみっこ暮らしをしていたチヨコ。
いずれは都会に出て……なんてことはまるで考えておらず、
実家の畑と趣味の園芸の二刀流で、第一次産業の星を目指す所存。
父母妹、クセの強い里の仲間たち、その他いろいろ。
ちょっぴり変わった環境に囲まれて、すくすく育ち迎えた十一歳。
森で行き倒れの老人を助けたら、なぜだか剣の母に任命されちゃった!!
って、剣の母って何?
世に邪悪があふれ災いがはびこるとき、地上へと神がつかわす天剣(アマノツルギ)。
それを産み出す母体に選ばれてしまった少女。
役に立ちそうで微妙なチカラを授かるも、使命を果たさないと恐ろしい呪いが……。
うかうかしていたら、あっという間に灰色の青春が過ぎて、
孤高の人生の果てに、寂しい老後が待っている。
なんてこったい!
チヨコの明日はどっちだ!
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。
彩世幻夜
ファンタジー
「働きもせずぐうたら三昧なんてつまんないわ!」
お嬢様はご不満の様です。
海に面した豊かな国。その港から船で一泊二日の距離にある少々大きな離島を領地に持つとある伯爵家。
名前こそ辺境伯だが、両親も現当主の祖父母夫妻も王都から戻って来ない。
使用人と領民しか居ない田舎の島ですくすく育った精霊姫に、『玉の輿』と羨まれる様な縁談が持ち込まれるが……。
王道中の王道の俺様王子様と地元民のイケメンと。そして隠された王子と。
乙女ゲームのヒロインとして生まれながら、その役を拒否するお嬢様が選ぶのは果たして誰だ?
※5/4完結しました。
新作
【あやかしたちのとまり木の日常】
連載開始しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる