52 / 245
第五十一話 勝手に名前が使われるというもの
しおりを挟むというわけでお祭り初日。
見回り隊として兄ちゃんズと僕は警備に回るため準備をしていた。
とはいえ僕は魔法とゼオラという全方位をカバーする幽霊がついている上にシルヴァに乗って移動し、さらにハリヤー達もついてくるためそれほど危険は無かったりする。
「昼過ぎから回りだすぞ。警護団はすでに行動を開始しているから急がなくていい」
「うん。とりあえず三人が来るのを待ってからだね」
「にしても、なんか力がみなぎる格好だよなこれ」
「でしょ? 戦いにはあまり向かないけど動きやすいから」
タイガを肩に乗せたロイド兄ちゃんが言う『力がみなぎる格好』というのは甚平とはっぴのことである。
はっぴは僕が夜なべをして家族と屋台を出す人全員に配った。かなり疲れた。
ウチはそれに加えて甚平を作成し、母さんには浴衣をプレゼント。
「ウルカちゃんからのプレゼント……!! バスレ、家宝にするのよ!」
「はい」
「そういうのはいいから!?」
というような話もあったけど概ね喜んでもらえた。きつけはよく分からないので浴衣はなんちゃってな仕様なんだけどね。
【スース―するよぉ】
「無理しなくていいのに……。あと、なんで可愛く言ったのさ」
ゼオラも何故か着替えて口を尖らせていた。スースーするの? 幽霊なのに?
ちなみに僕達の甚平や浴衣には鉄糸を編み込んでいるので少しだけ耐刃も兼ねている。刺す攻撃には弱いし重い一撃には耐えられないけどないよりはきっといい。
という感じで祭りらしさを演出。で、三人を待っているのはステラとアニー、それとフォルドにもプレゼントをするためだ。
「む、来たぞ」
「おーい! こっちだよ!」
「やっほー!」
丘を登ってくる三人に手を振ると、元気よくアニーが駆け出してきた。いつも元気だな。
「とうちゃーく!」
先にダッシュしてきて僕に抱き着いてくるアニーの後からステラとフォルドもやってくる。
「おはようウルカ君」
「よ!」
「おはようみんな! フォルドはお疲れ様」
「おう……マジで疲れたぜ」
でも楽しかったけどなと鼻の下を指で擦るフォルドは満足そうだった。ジェットコースターもどきを使っていた時は楽しそうだったしね。
「というか兄ちゃん達もウルカもなんかカッコいい服を着ているな」
「うん。それなんだけど、みんなのも作っておいたよ」
「え!? マジか!?」
早速、シルヴァに移動してもらい、庭のテーブルの上に用意しておいた服をそれぞれ手渡してあげる。採寸とかはあまり考えていないのでだいたいだけどどうかな?
「わーい! アニー着るー!」
「こら、ここで脱ぐんじゃないって。バスレさん、バスレさーん!」
「お任せください」
「うお!? どっから出てきた!?」
「気にしたら負けだよロイド兄ちゃん。いつもこんなんだよ? ステラとアニーの着替えを手伝ってあげて」
「嬉しい」
ステラも僕に抱き着いてから軽い足取りでバスレさんについていく。
ロイド兄ちゃんが訝し気な顔でバスレさんを見送っていたけど、特に言及はしないでOKだろう。彼女はそういうものなのだ。
さて、みんな喜んでいたので結果は上々。後は着替え終わった三人が出てきたら警備に出発だ。
「というかウルカ。別に俺達に巡回を任せてくれていいんだぞ? フォルド達と遊ぶんじゃないのか?」
「言いだしっぺが僕だから行くよ。巡回しながらでも楽しめると思うよ」
「ま、たまには兄弟で歩くのも悪くねえな」
フォルド達はクライトさんが見てくれるらしいので着替えたら連れて行く予定である。五歳になってから色々と屋敷以外で過ごすことが多くなってきたし、兄ちゃんズと一緒なのも悪くない。
そんな話をしていると着替えた三人が戻ってくる。
「こけー♪」
「おう、ジェニファー。喜んでくれるか!」
「可愛い」
「わたしとウルカ君、お揃い!」
「うんうん、似合う似合う」
ステラは浴衣で、フォルドとアニーは甚平だ。アニーは元気すぎるのでまだ甚平みたいな動きやすい方がいいという判断だ。来年、大人しくなれば変えてもいいけど。
「可愛いよステラ、アニー」
「……」
「やったー!」
相変わらず表情は口元以外変わらないけど、顔を赤くして僕の袖をひっぱるステラ。アニーは大喜びでシルヴァの背中に飛び乗った。
「それじゃあ町まで行こうか。ギルドへ行ったらクライトさんと回ってね」
「残念。パパを貸すからウルカ君は一緒に行こう」
「それはダメだよ!? ほらステラもシルヴァの背中に乗って。さ、出発だ!」
「「おー!」」
「わふわふ」
フォルドとアニーが拳を突き上げて声を出し、シルヴァがゆっくり歩き出す。子供とはいえ二人を乗せても足取りがしっかりしているので魔物としての力は復活したらしい。僕が力を分けなくても頑張れるヤツだ。
「ウルカ君と一緒に行きたかったなあ」
「また遊ぼうよ。明日は普通に回って明後日また巡回だし」
「ぶー」
「プッ! アニーは分かりやすいな」
頬を膨らませるアニーを見てギル兄ちゃんが珍しく噴き出していた。子供だから感情のまま動くし気にはならないけど、我慢することも勉強だと頭を撫でてやる。
「ん……。絶対一緒に遊ぶんだよ!」
「うんうん。今日はお祭りを楽しんでよ」
「はあい」
「うぉふ!?」
まだ頬を膨らませていたけど理解してくれたようだ。だけど気が収まらないのかシルヴァの背中をぺしぺしと叩いていた。
シルヴァがびっくりしてたけどちゃんと痛くないよう軽くだった。アニーはいい子になるな、きっと。
そのままてくてくと丘を下っていくと町の入口付近にお祭りの提灯が見えてきた。
「お、この距離だと見栄えが……いい、ね?」
「くっくっく」
「おい、笑うなよ」
僕が固まったのを見てロイド兄ちゃんが笑いそれを窘めるギル兄ちゃん。固まった理由……それは――
「なんだよ『ようこそウルカティウス祭』って!?」
そう、看板には僕の名前がどーんと書かれていたのだ。
11
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました
空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。
平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。
どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。
希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。
手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。
「このまま死ぬのかな……」
そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。
そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。
試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。
「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」
スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。
たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる