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第五十話 お祭りは準備も楽しいというもの

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 集会所での打ち合わせを終えた後は各自の店や出し物をするための準備をスタートさせた。
 疑問と質問についてなにかあれば父さんか僕へ尋ねてもらうよう言ってある。屋敷までは遠いので基本的に昼間はお店に来てもらう形にした。

「初めましてウルカ坊ちゃん。イワノフと申します」
「私はエラよ」
「初めまして! しばらくここでお世話になります」

 父さんのお店に到着すると、カウンターにいる男性と女性に声をかけられた。イワノフさんは三十歳くらいで短い茶髪だ。エラさんは二十歳半ばくらいかな? セミロングをしたオレンジの髪に三角巾が似合う。

「ロドリオ様、やっと連れてきてくれましたね」
「いやあ、友達と遊んでいることが多いからなかなか機会がね。私も忙しいし赤ん坊のころは無理だからさ」
「まあでしょうなあ。ウチも子供ができたばかりで大変さはよく分かりますよ。エラもはやくいい人を見つけないとな!」
「余計なお世話ですー!」

 仕事中に赤ちゃんのお世話は無理。
 母さんが僕を手放さないからここへ来ることもなかったんだよね。初めて町に出た時はクライトさんと町長さんのところだけだったし。

 そんな初顔合わせの人と握手を交わした後、店の軒先にご意見番のブースを設置する。
 さっと木と布でテーブルとビーチパラソルを作成し、それと氷柱を二本立ててテーブルに扇風機を置く。これでまだ暑さの残る外でも快適に過ごせるだろう。
 椅子は僕のゲーミングチェアを運び込んでいるので座っていても疲れない。

「ええー……魔法であんなことできるの……?」
「しかもなんだアレ? 風を出す魔法具か? 氷柱もあってここより涼しそうなんだが……」
「ん?」

 イワノフさんとエラさんの声が聞こえたので視線を向けてみると、入り口から顔を覗かせていた。僕と目が合うとさっと引っ込んで姿を消した。

「暑いのかな……? 扇風機を貸してあげよう」
「ごげー」

 テーブルの上で涼んでいたジェニファーには悪いけど確かにカウンターは少し暑かった気がするので扇風機を渡しておいた。凄く感謝されてこれからも仲良くやっていけそうだと思う。
 ギル兄ちゃんが継ぐ可能性が高いし、サポートで僕も手伝うだろうから損はないよね。

「こけー……」
「落ち込み方が凄いねジェニファー。ミストシャワーで我慢してくれよ」
「こけ♪」

 そんな調子でご意見番をスタート。
 父さんやイワノフさんが裏の倉庫を往復するのが見えたり、お客さんが結構出入りしているのも見える。
 田舎町だけど外からの商品はやはり興味があるようで色々と売れていた。
 肉とか野菜みたいな食品は個別に売っているけど、タオルや洗剤のような雑貨は父さんが仕入れてまとめて店で売る……まあスーパーマーケットみたいな感じのようだ。

「えっと、ウルカ様?」
「はい、そうです! お祭りについてですか?」
「ええ、このお店なんですけど――」

 おっと、お客さんだ仕事仕事。

【頑張れよー】
「ゼオラも手伝って欲しいよ。姿が見えればお化け屋敷とかいいんだけどな」
「なにか?」
「いえ! ではお話を――」

 ということでお仕事開始。
 思ったよりも相談には来なかったのでみんな理解してくれていたようで一安心である。その間、踊り子さんの衣装を作成したりなどもあるから長話にならないのは僥倖だった。

「あー、可愛い服だねー」
「おしゃれ」

 ステラやアニーも僕がここに居ることを知って顔を見せてくれ、退屈はしなかった。ちなみにフォルドは親父さんのお手伝いでここに来れないとアニーから聞いた。

「いらっしゃいませー、いらっしゃいませー」
「にゃあん」
「あら、頭に猫を乗せて可愛い子ね」

 なぜか呼び込みの真似をアニーがしてお店の売り上げがいつもより多かったというエピソードなどもあったが割愛だ。
 そんなこんなで二日ほど店先に座り相談を受け付けていたけど三日目からは僕も広場へ行ってステージの装飾などの確認をすることに。
 父さんにも金銭と仕入れなどでかなり質問があったみたいで僕達は屋敷に帰るとへとへとである。

 そして広場。

「あ、いい感じだね」
「お、ウルカ様か。赤と白の縦ストライプってこんな感じで良かったのか?」
「問題なしだよありがとう!」
「まあ、確かになんか気持ちがこうめでたい! って気になるな」
「踊りが盛り上がるよ」

 ステージはこんな感じでオッケーかな。広場に屋台も並び始め、お祭りらしくなってきた。

「これ、面白いアイデアですな」
「でしょ?」

 ガラス職人さんに魔法で光る球をたくさん用意してもらい、それを木と木の間で吊ったり、アクセサリーを作るお店に提灯を頼んだりとこの短期間で結構用意できたと思う。

「いえーい!」
「あ、フォルドだ」

 例のジェットコースターもどきに荷物を載せて近所の子供たちに囲まれているフォルドの姿を見つけて頬が緩む。意外とお兄ちゃんしていてアニーが懐いていたのもなんとなく分かるな。

【へへ、楽しくなってきたな】
「うん!」
【衣装作りとかでまた魔力が上がってるぞ。あたしにはまだ及ばないけど】
「目指すところはそこじゃないし、少しずつでいいんじゃない? あ、その看板はこっちですー」

 空中であぐらをかくゼオラが笑いながらそんなことを言う。クリエイトを連続で使っても疲れなくなったのはそのせいみたいだ。

 汗をかきながら怒涛の準備を進めていき、いよいよお祭り当日へ突入。
 日程は三日を予定し、近くの村や町からも人が来れるよう郵便配達の人にチラシを渡していたという父さんは侮れない。
 
 余談だけど魔物が出るので郵便屋さんには専用の護衛がついているそうだ。中には屈強な人もいて自分で片付ける郵便屋さんもいるとか。仕事に情熱があるのはとておいいことだと思った。

「それじゃ、僕達は巡回と困った人が居ないかの確認だね」
「おう! 学校の連中も遊びに出ているはずだから会うかもな」
「父さんと母さんはステージで見守っていてくれ」
「ううーん、息子たちの活躍を見たいのにっ!」

 朝から母さんが悔しそうに言うけど、貴族として、主催として構えてもらわないとね。

 さて、それじゃステラとアニーにプレゼントをしてから見回りますか!
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