Rich&Lich ~不死の王になれなかった僕は『英霊使役』と『金運』でスローライフを満喫する~

八神 凪

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第七十八話 珍しい戦いになるというもの

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「バスレさん、伝言を頼むよ! フォルド、いいんだな?」
「あ、ああ! 行くぜ!」
「アニーも!」
「私も行くわ。パパに知らせておいて」

 僕達の言葉に頷き、バスレさんは駆け足で父さんの店へ向かう。
 御者はギル兄ちゃんと交代してこのまま町の外へと出るルートへ方向を変えた。

 と、急に忙しくなったんだけど、慌てていた兄ちゃんズが言うには近くの村に魔物が襲撃にきたらしいのだ。
 それがまああの踊り子ちゃんの居る村だそうで、フォルドが行くんだと聞かなかったので連れて行くことに。
 ステラとアニーも箱型なので荷台に乗っていればそこまで危険はない……はずだとのこと。

「私が守るわ!」
【おお、頼もしいでござるな】
「え? ……ス、スケルトン……しゃべ……うーん」
「あ!? マリーナさん!? ロイド兄ちゃん、マリーナさんが気絶した!」
「なに!? ……ああ、オオグレさんか……そりゃ無理だな」
「おねえちゃんもうおやすみ?」
「そっとしておいてあげよう」

 ステラが冷静だ。
 こっちにはオオグレさんも居るし防衛に回ってもらえば大丈夫だと思う。木剣しかないから不安ではあるけど。
 それはともかく襲撃してくる魔物についてはこれまた衝撃的で、よく物語にも出てくるゴブリンとのこと。
 スライムかゴブリンかくらいの勢いで弱いとされる魔物だけどこの世界のは結構強いらしい。

「ゴブリンのやつらは武器を使えるし、場合によっては魔法を使う個体も居る」

 という感じで言葉も通じず村を襲って家畜や野菜を奪おうとしてくるのが今、行われようとしているとのこと。
 相手が強いため警護団と冒険者が出動しているらしい。

【ゴブリンか、まあ中級クラスの冒険者が群れと会ったらやべえ程度には強いな】
「そんなに強いんだ。だ、大丈夫、兄ちゃん達?」
「まあ後方支援になるだろうな。だけどウルカの作ってくれた剣と」
「ロッドがあるから引けは取らんはずだ」
【せ、拙者にもなにか得物が欲しいでござる……】
「オオグレさんは荷台から出たら一緒に狩られるしダメだぜ?」

 確かにとその場に居た全員が頷いて納得する。
 僕もそれなりに強力な魔法があるし冒険者さん達が居れば大丈夫かな。そんなことを考えていると周囲に他の馬車が追いついたり、一人で馬に乗った冒険者が追い抜いたりして目的地へ向かうのが見えた。

 やがて正面に村が目に入り、まだ襲撃はされていないことに安堵する。
 すぐに村の中へと移動し、兄ちゃんズが状況を確認しに馬車から降りた。だいたい馬車で五分強か、遠くもなく近くも無い。田舎のコンビニ感覚とか感じてしまう。

「ありがとうハリヤー」
 
 『どういたしまして』と鳴くハリヤーに微笑みつつ、僕は御者台から村の様子を伺う。3メートルくらいの柵が村を覆っているね。町よりも侵入者を防ぐことに適している、と。
 柵の先端が尖っていて乗り越えるのも大変……だけど所詮は丸太でできているため燃やされたら面倒だと思った。

「ど、どうだ?」
「まだ襲撃は無さそうだ。とりあえず女の子のところへ行ってみたらどうだい?」
「ええー!? い、いや、なんかいきなりは、ほら……」
「いつもの勢いはどうしたんだよ!? 僕が行くと嫌なんだし一人で行ってくるといいよ」
「複雑だ……。けど、行ってくる!」

 うんうん、そうこなくっちゃと馬車から飛び降りるフォルドに手を振って見送り再び村に視線を向ける。

「わん……」
「こけ」
「なーご……」
「シルヴァはともかくお前達もステラ達と一緒にいるんだよ? 僕は外で何かあった時に対処するから」

 何故かドヤ顔で御者台に出てきた動物達を窘め、ハリヤーの隣に立っていたシルヴァの背に飛び移って兄ちゃんズの居る場所へ。

「アニーも行くー」
「ステラは?」
「私は動物達と一緒にいる。マリーナさんが倒れているし」
「ごめんね、ちょっと行ってくるよ」

 シルヴァに飛び移ってきたアニーと共に移動。近くまで来たところで話し合いの声が聞こえてくる。

「それで数は?」
「ざっと三十ってところだ。ちょうど狩りをしていた冒険者が見つけてな、こっちに向かっているのは間違いない」
「三十ならなんとかなりそうだな。こっちもまだ集まってくる。今のうちに村の外で展開をしておくか?」
「そうだな……その方が近づいてこない可能性が高いか」
「いや、引き付けて倒した方が――」

 繁殖力は強いからなるべくなら倒したいがな、とは久しぶりに見たギリアムさんの言葉だ。
 弓なんかも操るから遠距離を仕掛けて来られると面倒くさいとぼやく冒険者もいるね。

「とりあえず村の中で待機。監視台からの報告でいつでも出られるようにしておくぞ。ギリギリまで引き付けて一気に叩く」
「承知しました」

 善は急げと各々が装備の確認をしながら散っていく。最後に指示を出した人は初めて見た。

「おう、ウルカ。荷台で待ってろって」
「あ、ロイド兄ちゃん。うん、平和そうだったからシルヴァに連れて来てもらったんだ。勝てそう?」
「向こうの出方次第だな。ま、ギリアムさんとかも居るし大丈夫だって」
「リンダさんは居ないの?」

 僕はハッとしてこういう時には関わっていそうなリンダさんについて尋ねてみる。あわよくば一度挨拶をしておきたいと思ったからだ。

 しかし――

「あー、ちょっと遠方に出てて今日はいねえんだ。居たら多分ここまでの戦力は必要ないんだよな」
「あ、そう」
「みんなかっこいいねー」

 なら母さんを連れてくれば解決しそう……でもないか。そしたら冒険者の立場が無いしお金も貰えない。適材適所と言う感じなんだろうなあ。
 なんにせよ迎撃準備が始まるなら僕達も大人しくするべきだとアニーを連れて来た道を引き返す。
 フォルドはちゃんと女の子に会えたかな?
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