異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆

八神 凪

文字の大きさ
82 / 85
最終章:いつもどおり!

その81 まあ勝てるわけない

しおりを挟む
 「よし、卵オッケー!」
 「ヒサトラさんコンテナを閉めるわね!」
 「おう! ……って邪魔すんなこらぁ!」
 「ぐあ!?」

 突っかかってくる冒険者をぶっ飛ばしてコンテナに向かって駆け出す俺。
 サリアと母ちゃんを捕まえようと襲い掛かっていたのが見えたからだ。ダイトとシルバードラゴンは体がでかいので一撃は大きいが小回りが利かない。確実に数は減らせているものの、向こうもベテランなのでフォーメーションを立て直していた。

 <ふむ、卵を確保したならこいつらに用はないか……しかし>
 <お、俺のことはいい。卵と嫁を……>
 「そうはいかないわ。見殺しにしたら明日からお肉が食べられないじゃない!」
 
 母ちゃんが冒険者達を牽制しながらそんなことを言い、サリアも戦隊モノの剣を持ち出してうんうんと頷いていた。コンテナ上のプロフィア達の砲撃を回避しながら冒険者が仕掛けてきた。

 「お前達が人質になれば全部俺達のもんだ!! へへ、美人だし可愛がってやるぜ」
 「残念、旦那以外に興味はないのよね……!!」
 「速い……!」

 掴みかかられるより早く、母ちゃんの拳が鎧で守られていない場所へ突き刺さっていた。
 くの字に折れ曲がった男を背負い投げでぶん投げ、他の冒険者をベルトアクションゲームのように巻き込む。

 「オラオラ! あたしが女だからって舐めてると痛い目を見るわよ!!」
 「こいつ!! ぐえ!?」
 「囲め囲め!!」
 「判断が遅いっての! 鉄パイプが欲しいわね」

 5人相手に大立ち回りをする母ちゃんは特に剣にびびることなくぶん殴っていく。
 鉄パイプでなにをするつもりかはよく分かるが残念ながらここにはない。
 代わりにダウンにしたやつのハンマーを拾ってボッコボコにし始める。

 「母ちゃんが元ヤンってのはなんとなく納得できたけど強いな!? サリア、無理するなよ!」
 「大丈夫ー!!」
 「なんだこの美少女!?」
 「ちょ、あぶね……!? なんだあの光の剣!?」

 うん、サリアも大丈夫そうだ。ベヒーモスとの契約で現状ここに居る人間で勝てるやつは居なさそうだ。
 ならば……!

 「てめぇが頭か?」
 「チッ、なんなんだ貴様らはよ……? 魔物は狩りの対象だ、ガタガタ言われる筋合いはねえな!!」
 「魔物でも友人にゃなれんだ、だから止めさせてもらうぜ!」
 「ぐあ!?」

 俺はリーダー格の男へ向かい、剣を回避してカウンター気味に顔面をぶん殴った。
 キレイに入り、男は大きくぶっ飛んだあと……1、2、3……5回ほど地面に体を叩きつけながらバウンドし、やがて動かなくなった。

 「あ、あれ?」
 
 その瞬間、暴れていた冒険者達の動きが止まり、ぎょっとした顔で俺を注視していた。
 
 「お、おい、あいつ『緋剣のバイス』さんを倒したぞ……!?」
 「一撃……一撃だと……」
 「ゆ、油断していたんじゃねえか?」
 「あの人が油断するとは……思えないけど……」

 ……どうやらこいつは結構強いヤツだったらしい。

 実力者と指揮系統を失った冒険者達は頷いてから白旗を上げた。

 「さすがにバイスさんを倒されちゃこっちが不利だ。死人が出る前に降参するぜ……いてっ!?」
 <あ”あ”あ”あ”!>
 「ポンチョやめろ、終わったみたいだ」
 
 隙を見せたらすぐ叩くなこいつ。
 俺の言葉にポンチョがこっちまで戻って来て俺の足にしがみつく。

 <あ”? ……あ”あ”ー>
 <わんわん♪>
 <♪>

 アロンとスライム達も俺にじゃれついてくる。あのバズーカは封印推奨かもしれん。
 
 「オラァ! 根性が足りないんじゃないの!」
 「ひいい!?」
 「母ちゃんもそこまでにしよう」
 「あはは……」

 母ちゃんを窘めていると、バイスと呼ばれていた冒険者が起き上がり俺を睨みつけながら口を開く。

 「ぐっ……てめぇ……やりやがったな……」
 「まだやるか? 卵を諦めるまで戦う準備はあるぞ」
 <ヒサトラの言う通りだ>
 
 ダイトがそういって俺の近くへとやってきた。
 シルバードラゴンに蒼と桃色のドラゴン、そしてベヒーモスに無駄に強い俺達と死屍累々となっている冒険者達を見比べた後、バイスは剣を放り投げて地面を殴りつけた。

 「分かったよ、くそっ! もう卵にゃ手を出さねえ。あの箱も簡単には開きそうにないしな」
 
 何度かトラックが魔法を受けている場面もあったが、ビクともしなかったのでそれも込みで降参というところか。
 しかしこの冒険者達も仕事でここまで来ていたんだろうし、悪いことをしたとは思う。ファルケンさんとかの知り合いがいるからこそだと俺はトラックの上部寝台へ行ってからとある袋を取り出してバイスへ渡す。

 「……? なんだこりゃ?」
 「死人はいないと思うけど怪我はしているだろ? 足りないかもしれないけど、治療費として分けてくれ」
 「マジか? ……うおっ!? 足りないどころか納品した時と同じくらいの金貨があんぞ!? な、何者なんだよホントに!?」

 これは貯金の一部で、移動先でいいものがあったら買うためのお金である。
 実はまだ家に稼いだ金はたくさんあるからこれくらいは痛手にもならなかったりする。

 「とっといてくれ、治療したら減るだろうしさ。そんじゃ俺達は行くぜ? なあシルバードラゴン達、またこういうことがあったら困るだろ、まとめてウチに来いよ。ソリッド様に言えば産まれるまで匿ってくれると思うぞ」
 <いたた……。い、いいのでしょうか……?>
 <ヒサトラが言えば問題なかろう、この男がやることは概ね人間にとって有用だ。もし、ヒサトラが国を出たら大きな損失になるのが分かっているからなあの王は>

 そうなのか? そこまで考えているというか欲まみれな気もするが……。
 とりあえずシルバードラゴンと嫁さんドラゴンに手伝ってもらい、息子ドラゴンを上部に載せてコンテナにくくりつけてやり、魔物とサリア、それと母ちゃんで卵が割れないようにしてもらうためコンテナに乗り込んでもらった。

 ダイトは地上、ドラゴンは空から王都まで飛んでくることを決めたのでトラックのエンジンをかけ、窓から顔を出して呆然としている冒険者達へ挨拶をする。

 「んじゃ、悪いけど俺達は帰るぜ。送ってってやりたいけど、後ろは卵が乗ってるからな。んじゃ気を付けてなー」
 「あ、ああ……」
 <いい運動になったぞ。ではな>

 トラックをゆっくり進ませダイトが追従してくる。
 なんだったんだと言わんばかりの顔をした冒険者達を置いて俺達は王都へと戻って行くのだった。


 ◆ ◇ ◆


 「いっちまった……。バイスさん良かったんですかい?」
 「……仕方ねえだろ、あの兄ちゃん一人にぶっ飛ばされたんだぞ、この俺が。お前等、俺とタイマンでやれる自信あるか?」
 「まさか。そう考えると、バケモンだなあの兄ちゃん。ドラゴンとかベヒーモスを友達と呼べるわけだぜ」
 「とりあえず帰ったら山分けだ。十分すぎるが、マジで良かったのか? ……くく、おもしれえ野郎だった、また会いたいもんだ。チヤホヤされて俺に驕りがあったか、修行しなおしだな――」

しおりを挟む
感想 167

あなたにおすすめの小説

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜

もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。 ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を! 目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。 スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。 何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。 やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。 「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ! ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。 ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。   2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

処理中です...