83 / 85
最終章:いつもどおり!
その82 安定し……ない日常の中で光るヒサトラ
しおりを挟む
「構わんよ」
「即答!?」
王都へ戻ったのはもう日が暮れた後だったが、ドラゴン二頭は無視できるものではなかったらしく、騎士達が総出で門の外まで出て来ていた。
『やっぱりヒサトラさんか』という腑に落ちない発言はスルーし、ソリッド様に匿ってもらえるよう頼んだところ先ほどの回答を得られたわけだが……
「頼んどいてなんですけど、ドラゴン三頭ですよ?」
「まあ、今更だろう。シルバードラゴンは先日来ていて人気もある。ただ、まあ三頭が落ちつける場所が王都にはないから街の外に新しく建設する形になるだろう。その間は卵をヒサトラ君の倉庫に入れておいてもらえるかな?」
「もちろん。それでいいよな?」
<申し訳ないのだけどお願いしますね>
嫁ドラゴンが深々と頭を下げ、概ね指針が決まる。
すぐに行動が開始され、卵は丁重に倉庫へ運ばれ庭はプロフィアとポンチョによる警戒態勢になり、母親は居た方がいいだろうとダイトが庭から出て嫁ドラゴンがインする形を取った。
<いいのかしら……>
「子供が産まれたらすぐに母親の顔を見てもらわないと困るからね。刷り込みって怖いし」
「産まれそうになったらお前達も離れるんだぞ?」
<あ”ー>
<!!>
という感じだ。
運送の仕事中は母ちゃん・プロフィア達スライム・ポンチョが家に残り防衛に努めることとし、アロンとダイトは前と同じようにトラックに乗って俺とサリアの手伝いだ。
そして前回のシルバードラゴン訪問の時と同じく、町の外にドラゴン達が休める場所が建設されていく。
ちなみに俺の家があるのは壁の傍だが、今回はその壁を越えたすぐのところに作っている。
後は――
「ドラゴンに効く薬ってあるのか?」
「どうだろうな……ヒサトラさんの母親を治した薬は病気に効くがケガは違うらしいしな」
「そこ、喋ってないで動けー」
「「へーい」」
――息子ドラゴンのケガの問題が残っている。いつ治るかは分からないが死ぬことはないというので一安心か。
こっちはシルバードラゴンが常駐するし、待機している兵士たちがローテーションで見張りをしてくれるらしいのでこっそり討伐されたりはないだろう。
久しぶりに俺とサリア、それとアロンだけで遠巻きに建設風景を眺めていると不意に俺の手を握りながらサリアがポツリと呟く。
「……後は無事に赤ちゃんドラゴンが産まれてくるのを待つだけね」
「だな、どんどんおかしなことになっていくけど……」
「でもいいんじゃない? ヒサトラさんが優しい人だから集まってくるんだと思うし」
「どうだろうなあ。俺はそんなつもりはないんだけどな? まあ、母ちゃんもこっちに来たし、後は仕事を頑張ろうぜ。それで……」
「それで?」
ここで言うべきか悩むところだが、誰も……特に茶化す人間も居ない今がチャンスだと思いサリアを正面に向かせてから俺は言う。
「……色々と俺の事情は片付いた。だから、俺と結婚してくれないか? お前と家族になりたいと思っている」
俺は真顔でそう言い、顔が熱くなっているのがわかる。付き合っていると公言したとはいえ結婚はまた別だ。
こういうのはきちんと口にしないと『相手が分かっている』なんて自惚れは全てを終わらせてしまう。
返事は……どうだ?
「はい! 喜んで!」
「おっと……!」
<うぉふ♪>
少し涙ぐんでいたサリアが俺に抱き着いてきてキスをし、足元でお座りをしていたアロンが祝うように足元で吠えた。さて、母ちゃんに報告しないといけねえな。
◆ ◇ ◆
「……よし! よく言ったわ玖虎」
「なるほど、母上はそれで近づくなとおっしゃっていたのか」
「そうですよソリッド様。なんだかんだと周りに人が多いと言いだしにくいですからね。夜ひっそりと……というのも考えられましたが、ドラゴン夫婦と卵という連想させるシチュエーションなら、となるべく二人きりにさせたかったというわけですね」
「な、なるほど……」
「今日はお祝いかしらね? あの子の好きなハンバーグステーキでも作ってあげようかしら」
ウチの息子は高校時代に荒れていたけど、あれはよくある流行り病のようなものだ。人様に迷惑をかけていたことに関してはビンタくらいはしていたけど、自分もそういう時期があったからわからなくはない。
多分、父親が居ればそうはならなかったと思っているのであたしの親としての力不足だ。
まあ、元ヤンだったしね。
それでも、自分の親が嫌いでそうはならないよう努力してきた。で、あたしを助けるために奮闘してくれた玖虎は立派に育ってくれたと胸を張って言えるわ。
「ハンバーグとはなんでしょうか……?」
「うわ、びっくりした!? ……誰?」
「通りすがりの魔道具技師大臣です。ちょうど陛下を探しに来ていたら、知らないのになにやら心躍るワードが聞こえてきたもので」
「ああ、あたし達の世界にあるポピュラーな食べ物よ。材料があればすぐ作れるけど」
「是非」
「バスレイ、私に用があったのではないのか……?」
眼鏡の女の子はバスレイというらしい。なんでハンバーグに拘るかわかんないけど、食べたいというなら作ってあげてもいいかしらね?
「即答!?」
王都へ戻ったのはもう日が暮れた後だったが、ドラゴン二頭は無視できるものではなかったらしく、騎士達が総出で門の外まで出て来ていた。
『やっぱりヒサトラさんか』という腑に落ちない発言はスルーし、ソリッド様に匿ってもらえるよう頼んだところ先ほどの回答を得られたわけだが……
「頼んどいてなんですけど、ドラゴン三頭ですよ?」
「まあ、今更だろう。シルバードラゴンは先日来ていて人気もある。ただ、まあ三頭が落ちつける場所が王都にはないから街の外に新しく建設する形になるだろう。その間は卵をヒサトラ君の倉庫に入れておいてもらえるかな?」
「もちろん。それでいいよな?」
<申し訳ないのだけどお願いしますね>
嫁ドラゴンが深々と頭を下げ、概ね指針が決まる。
すぐに行動が開始され、卵は丁重に倉庫へ運ばれ庭はプロフィアとポンチョによる警戒態勢になり、母親は居た方がいいだろうとダイトが庭から出て嫁ドラゴンがインする形を取った。
<いいのかしら……>
「子供が産まれたらすぐに母親の顔を見てもらわないと困るからね。刷り込みって怖いし」
「産まれそうになったらお前達も離れるんだぞ?」
<あ”ー>
<!!>
という感じだ。
運送の仕事中は母ちゃん・プロフィア達スライム・ポンチョが家に残り防衛に努めることとし、アロンとダイトは前と同じようにトラックに乗って俺とサリアの手伝いだ。
そして前回のシルバードラゴン訪問の時と同じく、町の外にドラゴン達が休める場所が建設されていく。
ちなみに俺の家があるのは壁の傍だが、今回はその壁を越えたすぐのところに作っている。
後は――
「ドラゴンに効く薬ってあるのか?」
「どうだろうな……ヒサトラさんの母親を治した薬は病気に効くがケガは違うらしいしな」
「そこ、喋ってないで動けー」
「「へーい」」
――息子ドラゴンのケガの問題が残っている。いつ治るかは分からないが死ぬことはないというので一安心か。
こっちはシルバードラゴンが常駐するし、待機している兵士たちがローテーションで見張りをしてくれるらしいのでこっそり討伐されたりはないだろう。
久しぶりに俺とサリア、それとアロンだけで遠巻きに建設風景を眺めていると不意に俺の手を握りながらサリアがポツリと呟く。
「……後は無事に赤ちゃんドラゴンが産まれてくるのを待つだけね」
「だな、どんどんおかしなことになっていくけど……」
「でもいいんじゃない? ヒサトラさんが優しい人だから集まってくるんだと思うし」
「どうだろうなあ。俺はそんなつもりはないんだけどな? まあ、母ちゃんもこっちに来たし、後は仕事を頑張ろうぜ。それで……」
「それで?」
ここで言うべきか悩むところだが、誰も……特に茶化す人間も居ない今がチャンスだと思いサリアを正面に向かせてから俺は言う。
「……色々と俺の事情は片付いた。だから、俺と結婚してくれないか? お前と家族になりたいと思っている」
俺は真顔でそう言い、顔が熱くなっているのがわかる。付き合っていると公言したとはいえ結婚はまた別だ。
こういうのはきちんと口にしないと『相手が分かっている』なんて自惚れは全てを終わらせてしまう。
返事は……どうだ?
「はい! 喜んで!」
「おっと……!」
<うぉふ♪>
少し涙ぐんでいたサリアが俺に抱き着いてきてキスをし、足元でお座りをしていたアロンが祝うように足元で吠えた。さて、母ちゃんに報告しないといけねえな。
◆ ◇ ◆
「……よし! よく言ったわ玖虎」
「なるほど、母上はそれで近づくなとおっしゃっていたのか」
「そうですよソリッド様。なんだかんだと周りに人が多いと言いだしにくいですからね。夜ひっそりと……というのも考えられましたが、ドラゴン夫婦と卵という連想させるシチュエーションなら、となるべく二人きりにさせたかったというわけですね」
「な、なるほど……」
「今日はお祝いかしらね? あの子の好きなハンバーグステーキでも作ってあげようかしら」
ウチの息子は高校時代に荒れていたけど、あれはよくある流行り病のようなものだ。人様に迷惑をかけていたことに関してはビンタくらいはしていたけど、自分もそういう時期があったからわからなくはない。
多分、父親が居ればそうはならなかったと思っているのであたしの親としての力不足だ。
まあ、元ヤンだったしね。
それでも、自分の親が嫌いでそうはならないよう努力してきた。で、あたしを助けるために奮闘してくれた玖虎は立派に育ってくれたと胸を張って言えるわ。
「ハンバーグとはなんでしょうか……?」
「うわ、びっくりした!? ……誰?」
「通りすがりの魔道具技師大臣です。ちょうど陛下を探しに来ていたら、知らないのになにやら心躍るワードが聞こえてきたもので」
「ああ、あたし達の世界にあるポピュラーな食べ物よ。材料があればすぐ作れるけど」
「是非」
「バスレイ、私に用があったのではないのか……?」
眼鏡の女の子はバスレイというらしい。なんでハンバーグに拘るかわかんないけど、食べたいというなら作ってあげてもいいかしらね?
1
あなたにおすすめの小説
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
スマホアプリで衣食住確保の異世界スローライフ 〜面倒なことは避けたいのに怖いものなしのスライムと弱気なドラゴンと一緒だとそうもいかず〜
もーりんもも
ファンタジー
命より大事なスマホを拾おうとして命を落とした俺、武田義経。
ああ死んだと思った瞬間、俺はスマホの神様に祈った。スマホのために命を落としたんだから、お慈悲を!
目を開けると、俺は異世界に救世主として召喚されていた。それなのに俺のステータスは平均よりやや上といった程度。
スキル欄には見覚えのある虫眼鏡アイコンが。だが異世界人にはただの丸印に見えたらしい。
何やら漂う失望感。結局、救世主ではなく、ただの用無しと認定され、宮殿の使用人という身分に。
やれやれ。スキル欄の虫眼鏡をタップすると検索バーが出た。
「ご飯」と検索すると、見慣れたアプリがずらずらと! アプリがダウンロードできるんだ!
ヤバくない? 不便な異世界だけど、楽してダラダラ生きていこう――そう思っていた矢先、命を狙われ国を出ることに。
ひょんなことから知り合った老婆のお陰でなんとか逃げ出したけど、気がつけば、いつの間にかスライムやらドラゴンやらに囲まれて、どんどん不本意な方向へ……。
2025/04/04-06 HOTランキング1位をいただきました! 応援ありがとうございます!
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる