私がガチなのは内緒である

ありきた

文字の大きさ
5 / 121
1章 私がガチなのは内緒である

5話 シャワーの件について

しおりを挟む
 同居生活を始めて数日が経つ。
 萌恵ちゃんとは寝食を共にして、四六時中一緒だ。
 私だけが舞い上がっているなんてことはなく、萌恵ちゃんも同様にいまの生活を楽しんでくれている。
 幸せすぎて怖いぐらいに、なにもかもが順風満帆な日々。
 そんな中、問題が一つ。
 率直に言うなら、お風呂だ。
 私たちは節約のため、入浴も一緒にしている。湯船に浸かる日はもちろん、シャワーだけで済ませる日も同じように。
 ルームシェアすることで家賃は一人分になっているとはいえ、節約して困ることはない。
 やや手狭になるけど二人の方が楽しいし、萌恵ちゃんの素肌を間近でじっくりと――コホン。
 そう、問題というのはこれだ。

「真菜、どうかした? さっきからボーっとしてるけど」

 頬を紅潮させた全裸の萌恵ちゃんが、心配そうに小首を傾げる。
 タオルで髪をまとめたことにより露わになったうなじが色っぽく、鎖骨を伝う汗の筋やしっとりと濡れそぼった肢体が実に扇情的だ。
 私たちはいま、体育座りで向かい合って湯船に浸かっている。
 二人分の体積で水面が上がっているものの、少なめに給湯しているのでほとんど半身浴に近い。

「だ、大丈夫。ごめんね、なんともないよ。萌恵ちゃん、また胸おっきくなった?」

「ん~、ちょっとね。太ったかなぁ?」

「太ってないよ。大きいのは胸とお尻だけだもん」

 腰のくびれなんて最高級の陶芸品みたいに見事な曲線を描いていて、古い言い回しになるけど、ボンキュッボンってこういう体のことを指しているんだと感心させられる。

「真菜はスレンダーだからいいよね。キュッと引き締まってて、なんか抱きしめたくなる感じ」

「あはは、私も萌恵ちゃんの胸が羨ましいよ。一割でいいから分けてほしい……」

 自分の胸を見下ろし、軽く絶望してしまう。
 私だって、平らというわけではない。少しはある。まぁ深くは気にしてないけど。本当に。
 だけどやっぱり、同い年でこうも違うものかと、決定的な胸囲の格差社会に敗北感を覚えずにはいられない。
 萌恵ちゃんの胸は大玉スイカのようなサイズでありながら、垂れるという概念が無縁であるかのように美しい形を保っている。重力が仕事していない。

「好きなだけ持って行っていいよ~」

「ぐぬぬ」

 萌恵ちゃんは頭の後ろで腕を組み、見せ付けるように胸を張った。
 衣服という枷から解き放たれている二つの球体は、ぷるんっという擬音が聞こえそうなほど派手に弾む。
 偉大な先人たちには無礼を承知で断言させてほしい。
 どんな素晴らしい絵画よりも、いま私が目にしている光景の方が遥かに美しい。
 神聖とすら感じさせる、極上の美。

「えいっ」

 せっかく差し出されているので、遠慮なく触らせてもらうことにした。
 萌恵ちゃん、触れた拍子に「あんっ」とか艶めかしい吐息を漏らさないで。私が正気じゃいられなくなる。
 しっとり、すべすべ、もっちり。
 あぁ、もう死んでもいい。
 ただでさえ乏しい語彙が、あまりの快楽にますます減っていく。
 指を包む抜群の柔らかさを備えながら、力を込めると確かに押し返す絶妙な弾力も秘めている。
 ダメだ、これ以上続けたら我慢できない。
 萌恵ちゃんの貞操を守るため、私は後ろ髪を引かれる思いで手を離した。

「あ、ありがとうございました」

「んふふっ、次はあたしの番だね」

「え?」

 え?
 動揺のあまり、心の声がそのまま口から出た。
 次は萌恵ちゃんの番って、もしかして、私の胸を……?

「なんちゃって。話してたら長湯しちゃった。お湯もぬるくなってきたし、そろそろ出ようよ」

「そ、そうだね、そうしよう」

 しっかり温まったし、これ以上は逆に体を冷やしかねない。
 ホッとしたような、少し残念なような。
 改めて、これは由々しき問題だ。
 一緒にお風呂というのは非常に魅力的なんだけど、私の自制心がいつまで働いてくれるか分からない。
 だからと言って、この至福のひとときを失いたくもない。
 悶々としながら出した結論――
 この件は、ひとまず保留!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

付き合う前から好感度が限界突破な幼馴染が、疎遠になっていた中学時代を取り戻す為に高校ではイチャイチャするだけの話

頼瑠 ユウ
青春
高校一年生の上条悠斗は、同級生にして幼馴染の一ノ瀬綾乃が別のクラスのイケメンに告白された事を知り、自身も彼女に想いを伝える為に告白をする。 綾乃とは家が隣同士で、彼女の家庭の事情もあり家族ぐるみで幼い頃から仲が良かった。 だが、悠斗は小学校卒業を前に友人達に綾乃との仲を揶揄われ、「もっと女の子らしい子が好きだ」と言ってしまい、それが切っ掛けで彼女とは疎遠になってしまっていた。 中学の三年間は拒絶されるのが怖くて、悠斗は綾乃から逃げ続けた。 とうとう高校生となり、綾乃は誰にでも分け隔てなく優しく、身体つきも女性らしくなり『学年一の美少女』と謳われる程となっている。 高嶺の花。 そんな彼女に悠斗は不釣り合いだと振られる事を覚悟していた。 だがその結果は思わぬ方向へ。実は彼女もずっと悠斗が好きで、両想いだった。 しかも、綾乃は悠斗の気を惹く為に、品行方正で才色兼備である事に努め、胸の大きさも複数のパッドで盛りに盛っていた事が発覚する。 それでも構わず、恋人となった二人は今まで出来なかった事を少しずつ取り戻していく。 他愛の無い会話や一緒にお弁当を食べたり、宿題をしたり、ゲームで遊び、デートをして互いが好きだという事を改めて自覚していく。 存分にイチャイチャし、時には異性と意識して葛藤する事もあった。 両家の家族にも交際を認められ、幸せな日々を過ごしていた。 拙いながらも愛を育んでいく中で、いつしか学校では綾乃の良からぬ噂が広まっていく。 そして綾乃に振られたイケメンは彼女の弱みを握り、自分と付き合う様に脅してきた。 それでも悠斗と綾乃は屈せずに、将来を誓う。 イケメンの企てに、友人達や家族の助けを得て立ち向かう。 付き合う前から好感度が限界突破な二人には、いかなる障害も些細な事だった。

高校生なのに娘ができちゃった!?

まったりさん
キャラ文芸
不思議な桜が咲く島に住む主人公のもとに、主人公の娘と名乗る妙な女が現われた。その女のせいで主人公の生活はめちゃくちゃ、最初は最悪だったが、段々と主人公の気持ちが変わっていって…!? そうして、紅葉が桜に変わる頃、物語の幕は閉じる。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...