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2章 私と萌恵ちゃんは恋仲である
7話 もう登校日?
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楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
いつの間にかゴールデンウィークが終わり、数日ぶりの登校日が訪れていた。
遠出こそしなかったけど、思い出はたくさん増えた。
なにより特筆すべきなのはもちろん、初めてのキス。
何日経っても、あの感動と感触は決して色褪せない。
実はあれ以降、先に起きた方が寝てる相手の頬にキスをするという流れが毎朝の習慣になっている。
ゴールデンウィーク終盤にはお母さんたちが遊びに来て、悩んだ結果二人の関係を打ち明けた。
驚くほどあっさり認められたけど、調子に乗って羽目を外し過ぎないよう気を付けるようにと念を押されてしまう。
こうして、短くも濃密な連休は終わりを告げたわけだ。
「おはよう二人とも! ねぇねぇ、連休中どうだった? 進展した?」
教室に入るや否や、瞳を輝かせたクラスメイトたちに囲まれ野暮な質問をされてしまう。
「一緒に買い物したり、ご飯食べたりしたよ」
嘘は言っていない。
いつも通りではあるものの、連休ならではの体験も含まれている。
キスのことは秘密だ。
萌恵ちゃんも私の意図を察してくれたようで、上手く話しを合わせてくれた。
のろけ話を聞いてほしい気持ちもあるけど、なにからなにまで話す必要はないと思う。
「みんなはどうなの?」
私がそう訊ねると、賑やかだった空気が一瞬にして静まり返った。
どうやら、地雷を踏んでしまったらしい。
「はは、友達と映画見たぐらいかなー」
「うんうん、あとカラオケ行ったりねー」
「そうそう、友達とねー」
みんな声に覇気がない。
萌恵ちゃんとひたすらイチャイチャしていた私がなにを言っても逆効果だろう。
気の利いたフォローも思い浮かばず、苦笑いで場を濁すことしかできなかった。
***
連休明けでいきなり数学の小テストが実施されクラス全体がどよめいたりもしたけど、無事に放課後を迎える。
いつものように居残って萌恵ちゃんとテストの出来などを話していると、美咲ちゃんと芽衣ちゃんが現れた。
数日ぶりの再会であいさつを交わし、雑談に花を咲かせる。
二組では連休中にクラス内でカップルが何組か誕生していたらしく、休み時間はその話でひたすら盛り上がっていたようだ。
百合趣味な生徒が多い学校だという印象は、この先も色濃く残るに違いない。
「二人ともなにか進展あった?」
クラスメイトからされた質問を、今度は私が口にした。
「はい、裸のお付き合いをさせていただきました」
美咲ちゃんからとんでもない発言が飛び出した。
裸の付き合いって、つまり……?
「え、えっち、しちゃったの?」
辺りに人がいないとはいえ、細心の注意を払って小声で訊ねる。
「違う違う! 二人でお風呂に入っただけよ! なんならキスだってまだしてないわ!」
間髪入れずに芽衣ちゃんが訂正し、補足も加えてくれた。
「あたしたちも二人で入ったよ~っ」
萌恵ちゃんが嬉しそうに言う。
私たちにとっては日常的なことだけど、確かに恋人と一緒にお風呂というのはなかなか踏み込んだ行為だ。
「あとはカラオケに行ったわね。連休中で混んでたから長時間はいられなかったけど」
「芽衣さんの歌声、とっても素敵でしたっ」
「芽衣ちゃんって歌上手いんだ。今度聴いてみたいな――あっ、でも、萌恵ちゃんには敵わないからね。萌恵ちゃんこそ史上最高の歌姫なんだから。しかも料理上手!」
萌恵ちゃんの歌には世界を救う力がある。
かわいさと美しさを兼ね備えた甘美な声音、ジャンルに左右されない類稀なる歌唱力、そして楽しそうに歌う萌恵ちゃんの麗しき姿。
中学生の頃に萌恵ちゃんとカラオケに行ったとき、私は感動と興奮のあまり骨抜きにされてしばらく立てなかった。
もしラブソングなんて歌われたら、どうなってしまうか分からない。
***
一時間ほど話したところで、美咲ちゃんと芽衣ちゃんは寄るところがあると言って先に教室を出た。
ずっと同じ姿勢で腰が痛くなってきたところなので、私たちもそう間を空けず帰路に着く。
「なんかゴールデンウィーク、あっという間に終わったな~」
「遠出はできなかったけど、毎日すごく楽しかったよね」
「うんうん、真菜といままで以上に深い関係になれた気がする!」
「あ、萌恵ちゃんがえっちなこと言った」
「言ってないよ!?」
「あはは、ごめんごめん。冗談だから、気にしないで」
萌恵ちゃんをからかいつつ、キスより先の行為を妄想してしまう私。
そう言えば唇と唇のキスは最初の一度きりだから、もっとたくさんしたいな。
「真菜、こっち向いて」
下駄箱で靴を履き替えている最中に声をかけられ、なんだろうと顔を萌恵ちゃんに向ける。
「ちゅっ」
「っ!?」
ほんの一瞬だったけど、軽く前屈みになった萌恵ちゃんに唇を奪われた。
「んふふっ、さっきからかわれたお返し!」
「も、萌恵ちゃんのえっち……」
私は照れと喜びで顔を真っ赤にしながら、せめてもの反抗とばかりにポツリと漏らす。
身長差が逆だったら、私も同じことができたのに。
自分の背の低さを恨めしく思いながらも、萌恵ちゃんの方からキスをしてもらえたのは身長のおかげでもあるのかと考えると、まんざらでもないかもしれない。
「次は真菜からしてね~」
「の、望むところだよっ」
軽やかな足取りで昇降口を出る萌恵ちゃんに、私は声を大にして返答した。
いつの間にかゴールデンウィークが終わり、数日ぶりの登校日が訪れていた。
遠出こそしなかったけど、思い出はたくさん増えた。
なにより特筆すべきなのはもちろん、初めてのキス。
何日経っても、あの感動と感触は決して色褪せない。
実はあれ以降、先に起きた方が寝てる相手の頬にキスをするという流れが毎朝の習慣になっている。
ゴールデンウィーク終盤にはお母さんたちが遊びに来て、悩んだ結果二人の関係を打ち明けた。
驚くほどあっさり認められたけど、調子に乗って羽目を外し過ぎないよう気を付けるようにと念を押されてしまう。
こうして、短くも濃密な連休は終わりを告げたわけだ。
「おはよう二人とも! ねぇねぇ、連休中どうだった? 進展した?」
教室に入るや否や、瞳を輝かせたクラスメイトたちに囲まれ野暮な質問をされてしまう。
「一緒に買い物したり、ご飯食べたりしたよ」
嘘は言っていない。
いつも通りではあるものの、連休ならではの体験も含まれている。
キスのことは秘密だ。
萌恵ちゃんも私の意図を察してくれたようで、上手く話しを合わせてくれた。
のろけ話を聞いてほしい気持ちもあるけど、なにからなにまで話す必要はないと思う。
「みんなはどうなの?」
私がそう訊ねると、賑やかだった空気が一瞬にして静まり返った。
どうやら、地雷を踏んでしまったらしい。
「はは、友達と映画見たぐらいかなー」
「うんうん、あとカラオケ行ったりねー」
「そうそう、友達とねー」
みんな声に覇気がない。
萌恵ちゃんとひたすらイチャイチャしていた私がなにを言っても逆効果だろう。
気の利いたフォローも思い浮かばず、苦笑いで場を濁すことしかできなかった。
***
連休明けでいきなり数学の小テストが実施されクラス全体がどよめいたりもしたけど、無事に放課後を迎える。
いつものように居残って萌恵ちゃんとテストの出来などを話していると、美咲ちゃんと芽衣ちゃんが現れた。
数日ぶりの再会であいさつを交わし、雑談に花を咲かせる。
二組では連休中にクラス内でカップルが何組か誕生していたらしく、休み時間はその話でひたすら盛り上がっていたようだ。
百合趣味な生徒が多い学校だという印象は、この先も色濃く残るに違いない。
「二人ともなにか進展あった?」
クラスメイトからされた質問を、今度は私が口にした。
「はい、裸のお付き合いをさせていただきました」
美咲ちゃんからとんでもない発言が飛び出した。
裸の付き合いって、つまり……?
「え、えっち、しちゃったの?」
辺りに人がいないとはいえ、細心の注意を払って小声で訊ねる。
「違う違う! 二人でお風呂に入っただけよ! なんならキスだってまだしてないわ!」
間髪入れずに芽衣ちゃんが訂正し、補足も加えてくれた。
「あたしたちも二人で入ったよ~っ」
萌恵ちゃんが嬉しそうに言う。
私たちにとっては日常的なことだけど、確かに恋人と一緒にお風呂というのはなかなか踏み込んだ行為だ。
「あとはカラオケに行ったわね。連休中で混んでたから長時間はいられなかったけど」
「芽衣さんの歌声、とっても素敵でしたっ」
「芽衣ちゃんって歌上手いんだ。今度聴いてみたいな――あっ、でも、萌恵ちゃんには敵わないからね。萌恵ちゃんこそ史上最高の歌姫なんだから。しかも料理上手!」
萌恵ちゃんの歌には世界を救う力がある。
かわいさと美しさを兼ね備えた甘美な声音、ジャンルに左右されない類稀なる歌唱力、そして楽しそうに歌う萌恵ちゃんの麗しき姿。
中学生の頃に萌恵ちゃんとカラオケに行ったとき、私は感動と興奮のあまり骨抜きにされてしばらく立てなかった。
もしラブソングなんて歌われたら、どうなってしまうか分からない。
***
一時間ほど話したところで、美咲ちゃんと芽衣ちゃんは寄るところがあると言って先に教室を出た。
ずっと同じ姿勢で腰が痛くなってきたところなので、私たちもそう間を空けず帰路に着く。
「なんかゴールデンウィーク、あっという間に終わったな~」
「遠出はできなかったけど、毎日すごく楽しかったよね」
「うんうん、真菜といままで以上に深い関係になれた気がする!」
「あ、萌恵ちゃんがえっちなこと言った」
「言ってないよ!?」
「あはは、ごめんごめん。冗談だから、気にしないで」
萌恵ちゃんをからかいつつ、キスより先の行為を妄想してしまう私。
そう言えば唇と唇のキスは最初の一度きりだから、もっとたくさんしたいな。
「真菜、こっち向いて」
下駄箱で靴を履き替えている最中に声をかけられ、なんだろうと顔を萌恵ちゃんに向ける。
「ちゅっ」
「っ!?」
ほんの一瞬だったけど、軽く前屈みになった萌恵ちゃんに唇を奪われた。
「んふふっ、さっきからかわれたお返し!」
「も、萌恵ちゃんのえっち……」
私は照れと喜びで顔を真っ赤にしながら、せめてもの反抗とばかりにポツリと漏らす。
身長差が逆だったら、私も同じことができたのに。
自分の背の低さを恨めしく思いながらも、萌恵ちゃんの方からキスをしてもらえたのは身長のおかげでもあるのかと考えると、まんざらでもないかもしれない。
「次は真菜からしてね~」
「の、望むところだよっ」
軽やかな足取りで昇降口を出る萌恵ちゃんに、私は声を大にして返答した。
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