私がガチなのは内緒である

ありきた

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3章 一線を越えても止まらない

27話 梅雨明けと手巻き寿司

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 梅雨明けが発表されたものの、私たちが住む地域では威勢よく雨が降っている。
 夕飯は手巻き寿司ということで、萌恵ちゃんは学校から帰ってすぐに準備を始めた。
 まずはお買い得価格で陳列されていたサク売りのマグロを、とても同い年の女の子とは思えない流麗な包丁さばきで切り分けていく。
 少し離れて見学する私は、思わず感嘆の声を漏らしてしまう。
 それと同時に、ただ傍観していることに罪悪感を覚える。
 いくら炊事が萌恵ちゃんの担当とはいえ、今回はお鍋のとき以上に手間が多い。
 酢飯を用意したり、イカと納豆を混ぜたり、シーチキンマヨネーズを作ったり、他にもいろいろ。

「萌恵ちゃん、私もなにか手伝うよ」

「えぇっ!? べ、べつにいいよ~」

 異様なまでに驚かれてしまった。
 普通に話しかけたつもりだったんだけど、よっぽど集中していたのかな?

「お願い! 今日はさすがに黙って眺めてるだけなんて申し訳ないよ。足手まといかもしれないけど、少しでいいから手伝わせて」

「真菜は足手まといなんかじゃないよ! でも、う~ん……じゃあ、かにかまをほぐしてお皿に盛り付けてくれる?」

「うん、任せて。酢飯も作ろうか? お酢でご飯を炊けばいいんだよね?」

「……今度手取り足取り教えるから、今日はかにかまに全力を注いでほしいな~」

 て、手取り足取り!? どど、どうしよう。酢飯の作り方を教わるだけなのに、とんでもなくえっちに聞こえてしまう。
 とにかく、いまは萌恵ちゃんに託された仕事を完璧にこなすとしよう。
 邪魔になってはいけないので、かにかまとお皿を持ってリビングに移動する。
 改めて念入りに手を洗ってから、丁寧にかにかまをほぐしていく。
 チラッとキッチンに目をやると、萌恵ちゃんが冷蔵庫から納豆を取り出すところだった。
 イカ納豆って居酒屋で人気のメニューらしいけど、子どもが食べてもすごくおいしい物だよね。体にもいいし、クセのある臭いを除けばいいこと尽くめだ。
 さてと。ほぐす作業が終わったので、盛り付けに移ろう。
 せっかくだから気合いを入れて、かにかまの色合いを活かして花をモチーフにしてみようかな。

「なにそれかわいい! 真菜すごいよ!」

 お皿や小鉢をリビングに運ぶ際に、萌恵ちゃんが瞳を輝かせて絶賛する。
 どうせ食べてしまうのだからそこまで凝る必要はないんだけど、頑張ってよかった。

「えへへ、ありがとう。萌恵ちゃんに褒められるなんて、人間国宝に選ばれるより嬉しい」

「それは喜びすぎだよ~」

 と、苦笑する萌恵ちゃん。当然ながら、私にとっては紛れもない本心である。
 私がかにかまと戯れている間に萌恵ちゃんは他の工程をすべて終わらせ、陽が沈む前に食事の準備が整う。
 気付けば雨もすっかり上がっていて、きれいな夕焼けが町を包んでいる。

「萌恵ちゃん、あーん」

「あ~んっ」

 せっかくの機会ということで、私たちはお互いに相手のために具材を巻く。たまにワサビを忍ばせたりもしつつ、食事を楽しんだ。
 食べきれるか心配な量だったけど、数十分後には米粒一つ残さず二人のお腹に収まっていた。
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