私がガチなのは内緒である

ありきた

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3章 一線を越えても止まらない

28話 夏が来た

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 家を一歩出れば、燦々と降り注ぐ灼熱の陽光が容赦なく肌を焼く。
 アスファルトの表面近くは熱気で景色が歪んでおり、いかに気温が高いか一目で分かる。
 つい最近まで傘を差す日々が続いていたのが嘘のようだ。
 私も萌恵ちゃんも強い日差しに弱いから、日焼け止めはしっかり塗っているけど……。

「うぅ、暑い」

 文句を言ったところでなにも変わらないのに、言葉が勝手に漏れる。
 半袖のブラウスは薄地で通気性がいいとはいえ、梅雨が明けていきなりこの暑さは体がついていかない。

「体が溶けちゃいそうだね~」

 萌恵ちゃんが腕で日光から目を守りつつ、雲一つない快晴の空を見上げる。
 夏服だと少し腕を上げただけで袖口から腋を覗けるから、つい視線をそちらに向けてしまう。
 つるつるすべすべの肌は思わず見惚れてしまうほど魅惑的で、ある意味太陽よりも眩しい。
 女子校ゆえに多少無防備でも大丈夫だと思ってインナーを着けていないから、汗をかけば制服が透けて下着も――ダメだ、あまりえっちなことを考えると頭が熱でやられてしまう。

「萌恵ちゃん、暑苦しくてごめんね」

 先に一言謝ってから、信号待ちのタイミングで腕に抱き着く。
 この気温の中で密着すると、当然ながら涼しさとは真逆の効果をもたらす。
 だけど、スキンシップが減るのは絶対に嫌だ。半袖だからより強く萌恵ちゃんの温もりを感じられるし、拒絶されない限りは接触を止めたくない。

「ううん、全然平気! というより、あたしの方から抱き着こうと思ってたのにな~。先越されちゃった」

「今朝は萌恵ちゃんのキスで起きたから、そのお返し」

 目が合うと同時に舌がにゅるっと入ってきて、お互い寝起きにもかかわらず熱烈な口付けを交わした。まだ感触が残っている気がする。間違いなく最高の目覚めだ。
 デザートは別腹だとよく言われるけど、萌恵ちゃんとの触れ合いもまた同様。たとえ暑さで汗だくになっている状態だとしても、萌恵ちゃんとイチャイチャするのは止められない。

「んふふっ、夏の暑さに負けないぐらいイチャイチャしようね!」

「うんっ」

 奇しくも、同じタイミングで同じようなことを考えていたらしい。
 嬉しくて声が弾み、さっきまで暑くてうなだれていたのが嘘のように元気が出てくる。
 高校最初の夏であり、同棲を始めて最初の夏であり、恋人になって初めての夏でもある。
 私はあまり感情を表に出す方ではないんだけど、大きな期待で胸が膨らみ、表情も緩んでしまう。
 遠出とかはさすがに難しくても、この夏を最大限に楽しみたい。
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