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第41話 その6「新しい部活動を設立しよう!」 at 1995/4/24
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「おーい、古ノ森ー! 古ノ森、いるかー!」
「あ、はい!」
今日の授業も終わり、LHRも終わって帰りの挨拶をしたところで、教壇の方から荻島センセイの呼ぶ声が届いてきた。僕はそそくさと帰りの支度を済ませると、急いで走り寄った。
「すみません。先生も忙しいのにお時間をいただいて――」
「なあに、問題ないさ。さあて、早速校長室に行くとしよう」
「そうですね。……って、はぁ!?」
それからゆうに三〇分。
僕は最後の気力を振り絞って校長先生に深々と一礼すると、ドアが閉じるまで下げていた頭を勢い良くあげて、今度は付き添ってくれた荻島センセイの姿が廊下の向こうに消えるまで、何度も何度もおじぎを繰り返して見送ったのだった。すると、背後の階段の方から声がかかる。
「……で、どうなったの、モリケン?」
「お前……待っててくれたのか、シブチン。いや、さすがにいきなりで驚いたし疲れたよ……」
もうへとへとで座り込みたい気分だったが、ずっと心配して待っててくれた渋田に恩義を感じて、奴の家の前にある小さな公園で話すことにした。今は二人ともブランコを漕いでいる。
「やったじゃない、モリケン! 新しい部活を作った生徒なんて、僕、はじめて見たよ!」
「まあ、そうなんだけどね――」
要約すると。
僕が渋田たちに言ったとおり、これからの時代はコンピューターに関する知識や技術が必須の世の中になっていく、という一言が、自分の担当分野である理科――科学と共通していると勝手にいたく感銘を受けてしまった荻島センセイは、やや勇み足ながらも校長にひとりで直談判をして説得していたらしい。なので、僕と一緒に校長室に行った時にはもうすでに話は九割がた決まっていて、あとは名前をどうするか、くらいの状態だったのであった。
「んで、部の名前はどうなったの?」
「『電算論理研究部』にした。最初から決めてたんだ」
今でこそ誰しもが当たり前のように用いる『パソコン』という用語だが、当時は『パーコン』『マイコン』という表記揺れが残っていて、入り乱れていた時代だった。それもあって、『パソコン部』と名付けるのは時期尚早だろうと考えた僕が無理矢理ひねくりだした名称である。
「なんかカッコイイね! で……僕、入っていいの?」
「もちろん大歓迎に決まってるじゃん! って、今の部、抜けて大丈夫なのか?」
「大丈夫。この学校水泳部ないし、水泳ならクラブでできるや、って選んだのが読書部だもん」
ややポチャ気味の渋田だが、こと水泳になると文字どおり水を得た魚のようにイキイキする。僕もあまり人のことは言えないか。人生で一番太っていたのがこの頃で、実に八三キロあった。
「そっかそっか。じゃあ、シブチンにも俺たちのミッションを伝えておかねばなるまい……」
「ミッション!? それ、先に言って欲しいんだけど!?」
「まあまあ。落ち着くのです、勇者ユキノリよ」
入部早々逃げられるわけにもいかないので、僕はアルカイックスマイルを浮かべながら渋田の手をブランコの鉄鎖ごとがっちり握り締め、すっかり動きを封じてから静かに語りかけた。
「夏休みまでに、あと三人の部員を集めなければなりません。良いですね?」
「良くないよ! あっという間じゃん!?」
「そうなんだよなあ。もうすぐ四月も終わるし……。大変な任務だが、しっかりやるんだぞ?」
「もー無理だよぉ! ……って、モリケンもやってよ! なんでひとりでやる流れなのさ!?」
「ちっ、バレたか。しっかし……なにかうまい手を考えないとダメだなあ、こりゃ」
途方に暮れる。
それでも、新しく何かを始めるワクワク感で、自然と顔はにやける僕たちなのであった。
「あ、はい!」
今日の授業も終わり、LHRも終わって帰りの挨拶をしたところで、教壇の方から荻島センセイの呼ぶ声が届いてきた。僕はそそくさと帰りの支度を済ませると、急いで走り寄った。
「すみません。先生も忙しいのにお時間をいただいて――」
「なあに、問題ないさ。さあて、早速校長室に行くとしよう」
「そうですね。……って、はぁ!?」
それからゆうに三〇分。
僕は最後の気力を振り絞って校長先生に深々と一礼すると、ドアが閉じるまで下げていた頭を勢い良くあげて、今度は付き添ってくれた荻島センセイの姿が廊下の向こうに消えるまで、何度も何度もおじぎを繰り返して見送ったのだった。すると、背後の階段の方から声がかかる。
「……で、どうなったの、モリケン?」
「お前……待っててくれたのか、シブチン。いや、さすがにいきなりで驚いたし疲れたよ……」
もうへとへとで座り込みたい気分だったが、ずっと心配して待っててくれた渋田に恩義を感じて、奴の家の前にある小さな公園で話すことにした。今は二人ともブランコを漕いでいる。
「やったじゃない、モリケン! 新しい部活を作った生徒なんて、僕、はじめて見たよ!」
「まあ、そうなんだけどね――」
要約すると。
僕が渋田たちに言ったとおり、これからの時代はコンピューターに関する知識や技術が必須の世の中になっていく、という一言が、自分の担当分野である理科――科学と共通していると勝手にいたく感銘を受けてしまった荻島センセイは、やや勇み足ながらも校長にひとりで直談判をして説得していたらしい。なので、僕と一緒に校長室に行った時にはもうすでに話は九割がた決まっていて、あとは名前をどうするか、くらいの状態だったのであった。
「んで、部の名前はどうなったの?」
「『電算論理研究部』にした。最初から決めてたんだ」
今でこそ誰しもが当たり前のように用いる『パソコン』という用語だが、当時は『パーコン』『マイコン』という表記揺れが残っていて、入り乱れていた時代だった。それもあって、『パソコン部』と名付けるのは時期尚早だろうと考えた僕が無理矢理ひねくりだした名称である。
「なんかカッコイイね! で……僕、入っていいの?」
「もちろん大歓迎に決まってるじゃん! って、今の部、抜けて大丈夫なのか?」
「大丈夫。この学校水泳部ないし、水泳ならクラブでできるや、って選んだのが読書部だもん」
ややポチャ気味の渋田だが、こと水泳になると文字どおり水を得た魚のようにイキイキする。僕もあまり人のことは言えないか。人生で一番太っていたのがこの頃で、実に八三キロあった。
「そっかそっか。じゃあ、シブチンにも俺たちのミッションを伝えておかねばなるまい……」
「ミッション!? それ、先に言って欲しいんだけど!?」
「まあまあ。落ち着くのです、勇者ユキノリよ」
入部早々逃げられるわけにもいかないので、僕はアルカイックスマイルを浮かべながら渋田の手をブランコの鉄鎖ごとがっちり握り締め、すっかり動きを封じてから静かに語りかけた。
「夏休みまでに、あと三人の部員を集めなければなりません。良いですね?」
「良くないよ! あっという間じゃん!?」
「そうなんだよなあ。もうすぐ四月も終わるし……。大変な任務だが、しっかりやるんだぞ?」
「もー無理だよぉ! ……って、モリケンもやってよ! なんでひとりでやる流れなのさ!?」
「ちっ、バレたか。しっかし……なにかうまい手を考えないとダメだなあ、こりゃ」
途方に暮れる。
それでも、新しく何かを始めるワクワク感で、自然と顔はにやける僕たちなのであった。
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